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火星には生命が存在できる、あるいは存在するという考えは昔からあった。1877年、イタリアの天文学者ジョバンニ・スキャパレリは惑星全体に水路がはりめぐらされていると主張した。アメリカの天文学者パーシバル・ローエルはこれらのかすかな線状の模様が運河であるといい、知的生命が乾燥した惑星を灌漑しようとしている証拠だとのべた。 のちの探査機による観測で、火星には運河のないことがわかり、火星に生命が存在するというのも間違いであることが明らかになった。 運河がないだけでなく、かつてオアシスがあるとされていた暗い領域は緑地ではなく、スペクトルにも有機物の存在をしめすものがふくまれていなかった。これらの領域の外見が季節ごとに変化するのは植物の茂りや枯れによるものではなく、季節ごとにふく火星の風が砂や塵をふきあげるためである。 水は、表面上あるいは表面下の氷や、大気中のわずかな水蒸気や氷の結晶としてのみみいだされるのだろう。生命の存在が否定されるのは、大気の薄さや致命的な量の紫外線の放射だけでなく、過酸化水素のように光化学によってつくられる極度に酸化した物質にもさらされているからである。 バイキング着陸船によってえられた重要な情報は、土壌に有機物がふくまれていないとわかったことである。炭素質の隕石がおちるたびに、火星表面にはわずかずつ有機分子が供給されるが、蓄積することなく破壊されてしまう。バイキング着陸船がおこなった土壌分析の結果からは、生命の存在をしめす有機物はなにもみつかっていない。 もっとむずかしい問題は、火星に生命が存在したことがあったかどうかである。1996年8月にNASA(アメリカ航空宇宙局)が、84年に南極大陸で発見された火星の隕石に約36億年前の火星に微生物が存在したという証拠を発見したと発表し、大きな話題ともなった。また火星には気候変動があったことと、かつての大気は今より暖かく厚かったということから、完全には否定できない。この問いにこたえるためには、火星の地表下のサンプルを注意深く採取し、詳細な分析をするため地球にもってかえらなければならないだろう。NASAは2030年ごろに火星への有人飛行を計画している。現在、その基礎段階ともいえる無人探査計画がNASAや日本の宇宙航空研究開発機構などによってすすめられている(→宇宙探査の「火星」)。
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