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濃硫酸には強力な脱水作用があるが、これは硫酸分子が水分子と強く結合するためである。水をふくまない炭水化物からも、水素原子と酸素原子を2対1の比率でうばい、化学的には水分子に相当する物質をうばう。濃硫酸に木、綿、砂糖、紙をひたすと、黒く炭化するのはこのためである。濃硫酸は空気中の水分を吸収するため、乾燥剤としても利用される。
硫酸の生産方法には硝酸法と接触法があるが、どちらも二酸化硫黄を原料として使用する。二酸化硫黄は、硫化鉄鉱や硫黄を加熱してつくられるが、金属精錬で生じる排ガスや石油精製の脱硫からの原料も利用される。現在、工業生産される硫酸のほとんどは、接触法で生産されている。
硝酸法では鉛室または煉瓦製(れんがせい)の塔が、反応容器として使用される。反応容器におくられた二酸化硫黄は、天井から散布される水に溶解して亜硫酸H2SO3となり、さらに硝酸の分解で生じる三酸化二窒素N2O3や二酸化窒素NO2によって酸化されて硫酸となる。この過程で消費された酸化窒素類は一酸化窒素NOとなるが、排ガス中から回収されたのちに酸化され、ふたたび反応容器におくられる。硝酸法で生産される硫酸の純度は低く、濃度も60~70%程度なので、濃硫酸をえるには濃縮を必要とする。
接触法は、黄鉄鉱FeS2または硫化銅や硫化亜鉛などを焼いてえられた二酸化硫黄SO2を原料にする。二酸化硫黄を触媒反応を利用して酸化し、生じた三酸化硫黄SO3を水にとかして硫酸とする。酸化反応は400~550°Cの温度でおこなわれる。かつては触媒に白金がつかわれたが、安価で性能の高い五酸化バナジウム触媒V2O5が実用化されてからは、使用されなくなった。接触法では、濃度96%以上の濃硫酸を、直接製造することができる。
濃硫酸に、さらに過剰の三酸化硫黄を吸収させたものは、昇華する三酸化硫黄が空気中の水分を吸収し、白煙のようにみえることから、発煙硫酸とよばれる。発煙硫酸からはピロ硫酸(二硫酸)H2S2O7を生成することができるが、これは無色透明の結晶で、吸湿性があり、加熱すると三酸化硫黄を放出して分解する。
硫酸は、化学工業の各方面で幅広い用途をもつため、生産される硫酸の総量は、その国の化学工業の水準をあらわすとまでいわれている。硫酸の用途では、過リン酸石灰(→石膏の「用途」)や硫安(硫酸アンモニウム)など、化学肥料の製造が大きな割合をしめる。化学工業でも硫酸は広く利用され、各種の有機化合物の合成、石油精製(→ 石油)、合成繊維やパルプ(→ 紙)の製造など、需要は多方面に広がっている。
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