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ワーグナーはヨーロッパ・ロマン主義音楽の究極の表現をなしとげた作品で評価されるとともに、オペラ創作の理論と実践に革命をおこしたことでも評価されている。 初期のオペラでは伝統的な手法にしたがったが、「ニーベルングの指環」に着手するころには、まったく新しい音楽劇形式の構想をいだいていた。彼の楽劇を演劇的観点からながめると、ワーグナーが台本のモデルとした古代ギリシャ演劇からシェークスピアをへてドイツ詩人シラーにいたる発展の延長線上にあることがわかる。音楽面では、バッハからベートーベンを経由する構成力にとんだ曲づくりの流れにある。 和声法においては、非和声音を使用する半音階和音(「トリスタンとイゾルデ」の前奏曲にもちいた不安定な「トリスタン和音」がとくに有名)を多用するなど、伝統的な調の体系を極限まで拡大し、ついには調と和音進行に特定の性質をあたえていた和声秩序の崩壊をまねいた。その結果、20世紀の無調主義をみちびくことになった。 ワーグナー以前のほとんどのオペラは、アリア、レチタティーボ、二重唱、間奏曲、フィナーレを決まりきった形でならべたものであった。いっぽう楽劇は、音楽をはじめとする諸芸術が物語の劇的な要求にしたがうことを基本原則としており、「ライトモティーフ(示導動機)」の導入によってアリアやレチタティーボの区切りなく音楽がとぎれずに進行する。 登場人物やその考えを象徴するライトモティーフを複雑に発展させたり、からみあわせたりすることによって、ドラマの情緒的な意味がいっそう明確になった。ワーグナー以後のオペラが劇的統一性を飛躍的に高めたのも、あらゆる形態の音楽にあたえた彼の強大な影響のひとつにほかならない。
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