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毒性のある気体元素で、かつては弗素とも書いた。ハロゲンのひとつで、化学反応性が強い。フッ化カルシウムの鉱物である蛍石(フルオライト)は、流動性をあたえる融剤として、古くから冶金や窯業に利用されてきた。1886年にフランスの化学者フェルディナン・F.H.モアッサンが、フッ素化合物の電気分解をおこない、はじめてフッ素を分離した。元素名は「流れ」を意味するラテン語fluoに由来する。
フッ素は黄緑色の気体で、空気よりもわずかに重い。有毒で腐食性があり、不快な刺激臭をもつ。非金属元素の中ではもっとも化学反応性が強く、ほとんどの元素と直接反応する。酸素とは放電や紫外線によって反応し、塩素や窒素とも間接的に反応してフッ化塩素やフッ化窒素を生成する。高温で金、白金とも反応する。希ガス元素のキセノン、クリプトン、ラドンとも化合物をつくる。また、ほとんどすべての化合物はフッ素によって分解し、新たにフッ素化合物を生成する。フッ素化合物はすべての化合物の中で、もっとも安定である。 化学反応性がきわめて強いため、単体としては天然に存在せず、蛍石、氷晶石、燐灰石などの鉱物として産出する。フッ化水素酸など、工業的に利用されるフッ素化合物の多くは、蛍石を原料として生産される。 工業的なフッ素の製造は、フッ化水素、フッ化カリウムの融解混合物の電気分解によっておこなわれる。発生したフッ素を金属管またはゴム管にみちびき、液体窒素で冷却すると、液体フッ素がえられる。
フッ化水素は工業的に重要なフッ素化合物で、蛍石の成分であるフッ化カルシウムCaF2を硫酸中で加熱すると発生する。この蒸気を水にとかすと、フッ化水素の水溶液であるフッ化水素酸がえられる。フッ化水素酸はガラスや陶磁器の加工、めっき、防食などに利用されるほか、フッ素樹脂などの有機フッ素化合物の原料になる。 フッ素化合物には毒性の強いものが多いが、消毒薬や医薬品に利用されるものもある。少量のフッ素をふくむ飲料水には虫歯予防の効果があり、水道水へのフッ素添加が世界的におこなわれている(→ 歯)。ただし、飲料水に過度のフッ素がふくまれると、歯のエナメル質がもろくなり、歯に白い斑点が生じる。また、フッ素の過剰摂取は、骨軟化症の原因となる。
フッ素化合物には数多くの用途がある。なかでも第2次世界大戦の前後に実用化された多くの有機フッ素化合物は、きわめて多方面に利用がひろまった。 代表的なフッ素樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン(四フッ化エチレン)である。これはテフロンの商品名でよく知られ、熱や化学作用に対して耐久性があり、摩擦抵抗が低いためすべりやすく、粘着しない。そうした特性を利用したテフロン加工のフライパン、アイロンなど家庭用品のほか電気絶縁テープや建材などが普及している。 石油をもとに合成される有機フッ素化合物からは、フッ化樹脂のほか、安定性の高い潤滑剤が生産される。またフレオンの商標名をもつフロンは化学的に安定な無臭の気体で、毒性や腐食性がなく、不燃性であるため、スプレーの噴霧剤、冷媒、ウレタンフォームの発泡剤などにひろく利用されてきた。 しかし1974年、環境に放出されたフロンが成層圏に達すると、紫外線によって分解し、地球のオゾン層を破壊するという警告がアメリカの科学者によってなされた。80年代には南極上空で、オゾン濃度の低下で生じたオゾンホールが発見され、地球の温暖化や皮膚癌の発生など、フロンの危険性がみとめられた。フロンの生産は現在では中止にむかい、オゾン層を破壊しないような代替フロンが開発されつつある(→ 環境問題)。 六フッ化ウランUF6は、核分裂をおこすウラン235の濃度を高めるためのガス拡散法にもちいられる。 元素記号F。原子番号9。原子量18.9984032。周期表(→ 周期律)の17族に属する。融点-218.6°C。沸点-188°C。気体の密度1.696g/dm³(25°C)。液体の密度1.513g/cm³(-188°C)。地殻中の存在量は554ppm。
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