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1940年代、遺伝に関するもっとも基本的なことが発見された。生物の特定の性質を別の生物につたえるのが、デオキシリボ核酸(DNA)という物質であることがわかり、53年には、ワトソンとクリックによってそのメカニズムが理論的に説明された。その後、研究はどんどんすすみ、遺伝子の組み換えまでが可能になり、80年代半ばには、それを利用して病気の治療がおこなわれるようになった。遺伝子工学という新しい分野では、遺伝子を複製して、ホルモンやインターフェロンなどの物質を大量につくりだしている。
20世紀後半にはいると、かつては不可能だと思われていた手術が可能になった。切断された腕をつなぎあわせる手術が成功した。現在では手足の指をつなぎあわせるような細かい手術もおこなわれている。顕微鏡をみながら、神経や血管をつないでいくのである。さらに、人工関節や人工臓器、臓器移植によって、患者の体の働きを回復することもこころみられている。レーザーも、1970年代、糖尿病の患者を失明からすくう手術にはじめて成功したことから、治療への利用がふえている。てんかんの治療は現在、脳の損傷個所をとりのぞく治療がおこなわれている。
ドイツのエールリヒは、日本人の秦佐八郎の助けを得て、梅毒の治療薬、アルスフェナミンを発見し、サルバルサンと名づけた。1932年、ドイツのドーマクが発見したサルファ剤は、ペニシリンが登場するまで、感染症のもっとも有効な治療薬であった。ペニシリンは28年、イギリスのフレミングが発見し、イギリスのフローリーとチェーンが、薬としてつかえるように完成した。結核の治療薬ストレプトマイシンをはじめ、抗生物質が次々に発見され、治療にとりいれられるようになった。しかし20世紀後半には、在郷軍人病のように抗生物質に抵抗する細菌による病気やエイズ(後天性免疫不全症候群)などの新しい病気があらわれ、感染症の治療はますます複雑になった。 抗生物質はウイルスには効果がない。そのため、ウイルス性の病気の治療の中心はワクチンということになる。ワクチンは、1930年代に組織培養の技術が開発されてウイルスをふやすことができるようになってから、大きく進歩した(→ 免疫法) 。小児麻痺、はしか、おたふく風邪、風疹のワクチンがつくられている。80年代前半には、遺伝子工学を利用して、B型肝炎、インフルエンザ、単純型ヘルペスなどのワクチンも開発されている。
人間の体で、最後まで未知の領域としてのこされた中に脳があった。しかし20世紀になると、脳の仕組み、働き、刺激のつたわり方が解明された。電気的・化学的刺激がいっしょになって神経から神経へ情報がつたわること、脳下垂体からホルモンが分泌されて、体の各部の生理機能を調節していることも明らかになった。これによって、感情と化学物質に関連があることがわかり、てんかんやパーキンソン病の治療への応用が可能になった。
20世紀以前は、細菌などに感染したときに血液中にその病原菌に抵抗する物質(抗血清)ができるということしかわかっていなかった。1901年、ラントシュタイナーが血液型を発見、30年代に抗体の働きが明らかにされ、何種類かの抗体が発見された。とくに、免疫グロブリンEの発見は、アレルギーの研究を前進させた。また、50年代には、オーストラリアのF.M.バーネットやイギリスのメダワーによって免疫機構の研究がすすみ、血液型の違いによる輸血事故、臓器移植の問題点などがうかびあがってきた。リンパ球も免疫の働きをもつことが発見され、それまでわからなかった免疫が関係する病気の謎がとけるようになった。また、健康な近親者の骨髄から造血幹細胞をとって移植する治療法が開発されている(→ 骨髄移植)。
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