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建国伝説の時代からキリスト教を国教とみとめるころの時代まで、古代ローマ人が保持し、実践していた超自然的な事象に関するさまざまな信仰や儀式をあらわす神話。初期ローマ人固有の宗教は、のちの時代にさまざまな信仰が混入したり、ギリシャ神話と同化することによってかなり変形してしまったため、正確に再現することはできない。こうした変化は、文学の伝統がはじまる以前にすでに生じていたので、初期ローマ人の信仰の実際については、前1世紀の教養人ウァロを始めとする初期ローマ研究者にはほとんど知られていなかった。いっぽう、ウァロと同時代に、神話・伝説をひきながら祭日や祭礼を説明した「祭暦」の著者ウェルギリウスは、ローマ時代におけるギリシャ文化の一大中心地アレクサンドリアでの思想・宗教に大きな影響をうけていた。ウェルギリウスをはじめ、ローマの伝統の隙間をうめるためにギリシャ風の考えをあてはめる著述家は多かったのである。
古代ローマの儀式では、神々を2つの階級に明確に区別している。ひとつはローマ国家の固有の神々で、その名称と性質には、最初期の神官の称号や暦の上で定着した祭りがあらわされている。こうした30の神々は特別の祭祀(さいし)であがめられていた。もうひとつは、歴史時代に崇拝されるようになった、外来の神々である。
初期の神々の中には、収穫などのさまざまな活動をおこなうときに名前をとなえられる、特殊で専門的な神の一団がいた。耕作や種まきなどの行為をともなう古い儀式の断片からわかることは、各作業のすべての段階においてそれぞれ別々の神の名がとなえられ、各神の名称は、その作業をあらわす動詞から適宜つけられたことである。こうした神は、付随的または補助的な神という一般的名称のもとに分類でき、偉大な神の名といっしょにとなえられていた。
神々の特徴と祭祀をみると、初期ローマ人は農業社会の一員だっただけではなく、戦いずきで多くの戦争をした民であったことがわかる。神々は、日常生活に必要な物や行為をあらわし、適切な儀式と供物が丁重にささげられていた。 たとえば、ヤヌスは扉を、ウェスタは炉を、ラレスは四つ角や道路や海路や家を、サトゥルヌスは種まきを、ケレスは穀物の生長を、ポモナは果実とその栽培を、コンサスとオプスは収穫をつかさどった。神々の支配者として威厳のあるユピテルでさえ、その雨の力で農園とブドウ畑に恵みをもたらすということで敬意をはらわれた。またユピテルは雷を武器にするため、広範囲にわたる支配力によって、ローマ国外での軍事活動におけるローマ人の保護者とされていた。 このほか初期の時代で傑出していたのはマルスとクイリヌスだった。マルスはローマ人が農耕民族から好戦的民族に変化するにつれ、農耕神から戦争神へとかわっていった。クイリヌスは、元来は前753年に都市国家ローマが建国されたといわれる以前の前10世紀ころからクイリナリス丘に居住していたサビニ人の豊穣神だったが、サビニ人がローマ人と和解してローマ市民となったときに、主神にくわえられ戦争神となったとされる。
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