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細胞やウイルスにふくまれる鎖状の高分子化合物。核酸という呼び名は、初めに細胞の核から分離されたことに由来する。ただし、細胞核でなく、細胞質にみられるものもある。 核酸には、少なくとも2つの機能がある。すなわち、DNAによる世代間の遺伝形質の伝達と、RNAによる特定のタンパク質の合成をうながすことである。その機能を発揮する方法の解明は、分子生物学の推進力となってきた。 核酸は生命体の基本物質で、地球にはじめて生命の原初形態があらわれた約35億年前に、最初に形成されたと信じられている。核酸がになう遺伝暗号の起源は、生命そのものの起源(→ 進化:遺伝学)と時間的にきわめて接近しているとみとめられている。その配列がタンパク質のアミノ酸配列を指示する仕組みは、1960年代までに大筋が明らかにされた。
核酸には、デオキシリボ核酸(DNA)とリボ核酸(RNA)の2種類がある。DNAとRNAの両分子とも、長い鎖が螺旋(らせん)構造となっている。鎖の主体はベントース(五炭糖)とリン酸のつながりで、これに4種類の小さな塩基とよばれる構築単位が結合している。螺旋上の塩基の配列順序が、遺伝暗号となり、そして細胞はこの遺伝暗号をもちいて、自身の複製や生存に必要なタンパク質の合成をおこなう。
すべての細胞は、遺伝物質としてDNAをもつ。細菌の細胞にはDNAの長い環状の螺旋が1つしかないが、その螺旋には、細胞が同じ娘(じょう)細胞を複製するために必要な情報がふくまれている。哺乳類の細胞では、DNAの螺旋は何本かの染色体としてまとめられている。すなわち、DNA分子あるいはその組み合わせが、子孫の形態や機能を指定している。ウイルスには遺伝物質としてDNAでなくRNAをもつものがある。ただし、一般に、ウイルスそのものは生物とは考えられていない。
DNAの一般的な構造を明らかにしたのは、イギリスの生物物理学者クリックおよびウィルキンズと、アメリカの分子生物学者ワトソンの先駆的研究である。ウィルキンズと後輩の女性研究者ロザリンド・フランクリンが1951年に撮影したDNA分子のX線解析写真をつかって、クリックとワトソンはDNA分子のモデルを作成し、52年末にその完成をみた(論文は53年)。この業績により、3人の科学者は62年のノーベル生理学・医学賞を受賞した。
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