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項目構成
中期と後期の対話編は、プラトン自身の哲学をあらわしている。この時期の多くの対話編でも依然としてソクラテスが主人公になっているが、多くの専門家は、そこでのべられる考え方がプラトン自身のものだとみている。中期の対話編には、「ファイドン」「饗宴」「国家」「ファイドロス」などがある。後期の対話編には、「テアイテトス」「パルメニデス」「ソフィステス」「フィレボス」「ティマイオス」「法律」などがある。
プラトンの哲学の中心はイデア論である。彼の認識論、倫理学説、魂論、国家観、芸術論は、結局はイデア論によって理解できる。
プラトンのイデア論と認識論はきわめて密接に関係しているので、いっしょに論じなければならない。ソクラテスの影響でプラトンは、正しいい認識(エピステーメー)に到達できると確信していたし、認識には2つの本質的な特徴があることも確信していた。第1に、正しい認識は絶対確実なものでなければならない。第2に正しい認識はただの見かけではなく、ほんとうに存在するものを対象にしなければならない。プラトンにとってほんとうに実在するものは、固定したもの、永続するもの、かわらないものであるから、ほんとうに実在する世界は、生成変化する物質の世界ではなく、理想的な存在の世界だとみなされる。 こうした理論にもとづいて、プラトンは、感覚的な経験から認識が生じるとする経験主義を否定した。見たり聞いたりという感覚からは、せいぜい蓋然(がいぜん)性をもつ命題しか生まれない。だから経験的な命題は確実性をもたない。それどころか感覚の対象は、変転つねならぬ現象である。したがって感覚的経験の対象は、真の認識の本来の対象ではない。プラトンは「国家」のなかの「洞窟の比喩(ひゆ)」において、この認識論をわかりやすく説明している。洞窟の暗い世界は、物質的な現象界である。洞窟の外の日の光にあふれた世界にのがれることが、本物の世界、イデアの世界を正しく認識することだといっている。
イデア論を理解するには、数学の対象を考えてみればよいだろう。たとえば円は「あたえられた点から等距離にある点が構成する平面図」と定義される。しかしだれも、この定義にあう図形をみたものはいない。紙や黒板にえがかれた円(らしきもの)は、多少ともいびつであり、あくまでも「完全な円に近いもの」でしかないからである。幾何学者が定義する円や線や点や三角形は、目にみえるものではないが、なんらかの形で存在する。それは感覚によってはとらえられず、むしろ理性によって考えられたものなのである。円のイデアとはまさしくそうしたものである。円のイデアは、黒板の円が消されても消えることがないのだから、永遠不変不滅である。円形をした個々の具体的な事物は、この円のイデアに似る(イデアを分有する)ことによってはじめて、円とよばれる。 イデアは数学の対象だけではない。正義のイデア、勇気のイデア、美のイデアなどもある。一般に、たくさんの個物がいかにして普遍的性質をもち共通の言葉でよばれるかを、イデア論は説明する。たとえば個々の行為は勇気のイデアを分有し、それに似るときに、勇敢な行為となる。行為が真に勇敢な行為かどうかを知るのは、勇気のイデアをとらえたときなのである。 感覚できないイデアの世界にも階層がある。最高のイデアは善のイデアである。善のイデアは、洞窟の比喩の太陽のように、イデアの世界でほかのイデアをてらしだしている。善のイデアが何を意味するかは議論がわかれるところだが、少なくともプラトンが世界全体のある究極的な説明原理を追究していたことをあらわしている。イデア論は、確かな知に人がいかにして到達するか(認識論)と、事物が現にあるとおりの物であるのはなぜか(存在論)にこたえるものであった。
プラトンの政治に関する主著「国家」は、正義の問題、したがって正しい国家とは何か、正しい個人とはだれかを問題にする。プラトンによると、理想的な国家は3つの階級からなる。国家の経済は職人や商人階級によってささえられ、国家の安全は軍人階級によってたもたれるが、政治の指導者は哲学者でなければならない。さまざまなイデアを把握しもっとも賢明な選択を洞察できる人こそ、国家の指導者にふさわしいからである。プラトンはこの3階級にギリシャの伝統的な徳をむすびつける。節制は職人階級の、勇気は軍人階級の、知恵は支配階級の徳である。これらおのおのの階級が自分の徳を実現し、ほかの階級の活動に干渉しないかぎり、社会全体は、第4の伝統的な徳である正義を実現する。 個人の魂も3つの部分(理性、意志、欲求)にわけられる。理性の部分が知恵をきわめ、その指導にしたがって意志の部分が勇気を、欲求の部分が節制を実現するとき、魂は全体として正義の徳をそなえる。そのような人が、道徳的に正しい人である。ここには理想国家の3階級との類似がある。
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