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波動が障害物のあるところを通過するときに、陰になっている部分にまわりこみ、ひろがったり曲がったりする現象。障害物の大きさが入射波の波長と同等か、それより小さいときに回折は顕著にあらわれる。回折は、すべての波動にともなう性質である。たとえば、ある部屋でラジオにスイッチがかかっているとき、ラジオの音は廊下をまわってくるので、隣の部屋でもきこえる。水の波が、表面にういた桟橋や船などの物体を通過するとき、物体の端をまわった波は、物体の背後にまわりこみ、直接的には物体でさえぎられていたにもかかわらず、つたわっていく。
障害物があって、光が直接光源からとどかない場合でも、まわりこむことは、1665年にイタリアのF.M.グリマルディによって発表された。彼は、光線の中に1本の棒をたてて、その陰になる部分に色のついた縞(しま)ができることを観察した。ニュートンは、この現象を数量的にくわしく解明しようとしたが、光が粒子である、という説に固執していたため、正確な理論にはできなかった。1800~04にかけて、ヤングは、光を波動として説明をこころみて、ニュートン・リングや薄膜の色の研究をおこなった。この当時、光が波動であるという説は異色で、はげしく批判された。17年に、パリ科学アカデミーは、回折現象を理論的に説明する懸賞論文を募集した。これに応じて翌18年A.J.フレネルは、オランダの物理学者クリスチャン・ホイヘンスの波動の原理を適用して、光の直進性と回折現象を矛盾なく説明することに成功した。その後、光の波動説は、さまざまな現象をうまく説明できたため、しだいに承認されるようになっていった。
回折現象を説明するために、オランダの物理学者ホイヘンスは、平面波の波面の各点は、小さな2次的な球面波の波源としてふるまう、という考えを提案した。障害物にとどくまでは、小さな2次波は、元の波面につみかさなってすすむ。波面が開口部や障害物に近づくと、さえぎるもののない部分の波面のみが新しい波源として進行する。 開口部や障害物の大きさが、入射波の波長よりも大きいと、2次波の合成された波はほぼ平面となる。結果として波面は、最初の波とほとんどかわらず、波の方向はほとんど曲がらない。しかし、障害物の開口部の大きさが入射波の波長と同等かそれより小さいときは、一見わずかの波しか通過することができない。それらの通過した波が2次波源となって、次々と波面をひろげていく。こうして新しく形成された波面の形は曲がっている。 この曲げられた、つまり回折した波はいろいろな道すじをとってすすむので、やがてたがいに干渉しあい、干渉図形を形成する。干渉図形の形は波長と開口部や障害物の大きさによってきまる。回折は、多くの波源の干渉であると考えることができる。したがって、回折と干渉とは本質的に同じ現象である。
波の回折は、結晶学や固体物理学で重要である。結晶状態の固体、たとえば塩化ナトリウム(食卓の塩)において、原子の規則的な配列、つまり結晶格子は、光を回折する小さな障害物の幾何学的な配列のようにふるまう。X線は、結晶中の原子間隔と同程度の波長の電磁波であるX線が結晶中を通過するとき、回折して干渉縞を形成する。干渉縞を解析すれば、結晶の幾何学的構造や性質に関する情報がえられる。結晶の構造に関する多くの知識は、X線回折の応用によるものである。X線回折は、DNAの二重らせん構造の発見をもたらし、ホログラフィーにも応用されている。
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