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素朴な意味では、図形の性質や量的関係をしらべる分野だが、現代数学では一般化と抽象化がすすみ、さまざまな数学的手段をつかって、空間内の点の集合の性質や、点どうしの位置関係をしらべたり、空間の基本軸(基底)を別な基本軸に変換したときに、それら点の集合の性質の中で変化しないものをしらべたりする分野へと発展した。もっとも基本の幾何学は、平面図形や立体図形の一般的な性質や、長さや面積、体積などの量的関係をしらべたりする。幾何学に属する分野としてほかに、解析幾何学、位相幾何学、微分幾何学、代数幾何学、フラクタル幾何学(→ フラクタル)、非ユークリッド幾何学、画法幾何学などがある(→ ユークリッド幾何学)。
geometryという言葉は、古代のメソポタミアやエジプトで、土地を測量したり、建物の角に正確な直角をつくるなどの作業をした人たちの仕事をいいあらわす言葉からきている。参考までにこの言葉は、「土地、地球」という意味のギリシャ語の「geo」と「はかる」という意味のmetreinからつくられた合成語である。日本語の「幾何」は、中国語からきたもので、その言葉の由来については、geoというヨーロッパの言葉の音訳という説や、またユークリッドの「原論」がはじめて中国語に翻訳されたとき、その数論の部分を強調し、これを度数の学という意味で幾何とした、という説がある。 エジプト、シュメール、バビロニアでさかえた経験にもとづく幾何学は、ギリシャ人によって精密なものにされ、体系づけられた。前6世紀のギリシャの数学者ピタゴラスは、これら経験的幾何学でつくられたばらばらの結果が、いくつかの公理あるいは公準から論理的に結論されることをしめして、論理的に体系化された幾何学をうちたてる基礎をきずいた。ピタゴラスや、その流れをくむユークリッドなどの数学者たちは、うたがう余地のない事実という意味の公準もしくは前提を出発点としてそうした体系をきずきあげた。しかしその後、そうした公準の自明さに疑いをさしはさみ、公準に反するような公準を出発点としても、別の幾何学がくみたてられることをしめす人たちが登場して、幾何学は豊かさをましていった。そのため今日の数学では、幾何学、あるいはひろく数学における公準とは、便宜的に仮定されたものにすぎない、という考え方が定着している。 ギリシャの数学者によってつくられ採用された代表的な公準に、「直線は2点の間の最短の距離である」というものがある。この種のいくつかの公理、公準から出発して論理をすすめ、点、直線、角、曲線、平面などに関するいろいろな定理がえられた。「三角形の3つの内角の和は2直角である」「直角三角形の斜辺の長さの2乗は、他の2辺の長さの2乗の和に等しい(ピタゴラスの定理)」などはその代表的なものである。古代ギリシャの人たちがはじめたこうした幾何学は、おもに多角形や円など2次元の図形に関するものだったが、ギリシャの数学者ユークリッドの著作である「原論(ストイケイア)」で、きちんとした一大体系にまとめられた。この「原論」は、今日まで、幾何学の基礎文献としてつかわれている。 ギリシャ人たちはまた、作図題を考えた。これは、一定の条件をみたす図形を、定規とコンパスだけでつくりだそう、というものである。あたえられた線分の2倍の長さの線分の作図、あたえられた角の2等分線の作図などがその簡単な例である。古代ギリシャからつたわる3つの有名な作図題は、その後長く数学者をなやませた。その3つとは、あたえられた立方体の2倍の体積の立方体をつくれという「立方体倍積問題」、あたえられた円と面積の等しい正方形をつくれという「円積問題」、あたえられた角を3等分せよという「角の3等分問題」である。これらはどれも、本来定規とコンパスだけではできない問題だが、そのことがわかったのは、立方体倍積問題と角の3等分問題が1837年、円積問題が82年のことである。 ギリシャ人たち、なかでもペルゲのアポロニオスは、円錐を平面によっていろいろな角度で切ったときにあらわれる切り口の形、つまり円錐曲線を研究し、それらについての基礎的な性質をみいだした。円錐曲線は、物理学のいろいろな場面に登場する。たとえば、平行光線を完全に焦点にあつめるには、パラボラ、つまり放物面鏡が必要だが、この曲面を、中心をとおって正確に2分する平面で切った断面は円錐曲線になっているし、太陽の周りをまわる惑星の軌道は、理論上は円錐曲線で近似することができる。 古代ギリシャの第1級の科学者、アルキメデスは、幾何学でも重要な働きをしている。つまり、いくつかのとじた曲線(閉曲線)の面積や、放物面体や円柱などの表面積や体積をもとめる方法を考案したのである。アルキメデスはまた、円周率pの近似値を計算して、それが3と3の間にあることをのべている。→ 円周率 幾何学は、ほかの科学と同様、ギリシャ時代から中世にかけて、イスラム世界の数学者にうけつがれた。 フランスの数学者で哲学者でもあるデカルトが、幾何学の大きな発展をうながした。彼の有名な著書である「方法序説」は1637年に出版された。その付録でデカルトは、解析幾何学についてのべている。つまり、幾何学と代数学の間に橋をきずいたのである。これは、現代の幾何学をささえるものである。
17世紀には、もうひとつ重要な発展があった。それは、1つの平面上の図形を他の平面上に投影したときに、変化しない性質の研究である。投影のことを数学では射影とよぶ。そこで、上のような幾何学を射影幾何学という。射影幾何学の1つの定理の簡単な例を図1にあげてある。A, B, C, a, b, cという6つの点が、円あるいはもっとひろくは円錐曲線上の任意の位置にあるとき、Aとb, c、Bとc, a、Cとa, bをむすぶ線分の3つの交点は、1直線上にある。同様に、図2にあるように、円錐曲線に6本の接線をひいて、それらの交点のうち、それぞれ反対側になる3つめごとの交点をむすぶと、この3直線は1つの点でまじわる。この定理が射影的であるというのは、このことがどの円錐曲線についてもなりたち、そして円錐曲線どうしは、図3にあるように、他の平面への適当な射影によって、たがいに他方にうつされるからである。図では、円と楕円の場合をしめしてある。
解析幾何学で、直線、曲線、その他の幾何学図形は、座標軸とその座標軸できまる座標とをつかって、代数式によって表示される(→ 代数学)。
平面上の点は、直交座標軸と、それらへのこの点からの距離を座標として、2つの数の組で位置がしめされる。図4では、点aの座標は(1, 4)で、それはまたx = 1, y = 4というかたちでも書く。3次元空間の点の位置も、x軸、y軸、z軸という3つの座標軸をつかって、同じように3つの数の組で表示される(→ ベクトル)。
解析幾何学が、解析学の概念、つまり数的な関係と、幾何学の概念、つまり図形的な関係とを統合したことは、数学の発展にとって大きな価値があった。非ユークリッド幾何学や、次元が4以上の空間の幾何学は、解析的なアプローチなしには展開できなかったと思われる。また、解析幾何学の手法は、数や代数的な表現の意味を幾何学の言葉でのべることによって、微積分や関数論、そのほかの高等数学の問題の展開に新しい光をなげかけた。
3次元の図形を2次元平面の上に精密にえがき、それら3次元図形に関する空間的な位置や大きさについてさまざまな問題を図形的に解決する分野を、画法幾何学という。画法幾何学は、機械や建築でつかわれる製図の基礎である。 点、平面、立体を表現するふつうの方法は、直角投影である。この投影では、たがいに直角にまじわる画面を想定する。そして、空間の点は、これらの画面に対して垂直でその点をとおる光の到達点として表示される。また空間の直線は、直線上の2点の像をむすぶ画面内の直線として表示される(→ 遠近法)。 画法幾何学の起こりは古く、18世紀に数学者のモンジュが体系化したものだが、最近、コンピューターグラフィックスが盛んになるにつれ、ふたたび注目されている。
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