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硬く、もろい非金属元素で、硼素とも書く。ホウ砂に代表されるホウ素の化合物は、古くから知られており、古代オリエントやローマなどでは金細工や溶接、ガラスの製造にもちいられていた。単体の元素として分離されたのは近代にはいってからで、1808年にイギリスの化学者ハンフリー・デービーによって発見された。また、ほとんど同時期に、独立してフランスの化学者ゲイ・リュサックとルイ・ジャック・テナールによっても発見されている。元素名boronはデービーが名づけたもので、ホウ砂boraxからえられる元素であることと、炭素carbonと類似したホウ素の性質をしめしている。ホウ素は植物の成長に必要な元素であり、動物の体内にもわずかに存在する。
室温では比較的安定しており、空気中での酸化は表面のみにとどまる。ただし、赤熱状態では空気中の窒素、酸素と直接に反応し、窒化ホウ素BN、酸化ホウ素B2O3を生成する。そのほか高温では多くの元素と反応し、金属とはホウ化マグネシウムMg3B2などのホウ化物をつくる。ホウ素は3価の原子価をもち、周期表上でのホウ素の位置からすればアルミニウムのような性質をしめすはずだが、実際のホウ素の化学的性質は、むしろ炭素やケイ素に近い。 多くのホウ素化合物のなかでもきわめて特異なものはボラン(水素化ホウ素)である。ボランの分子は特殊な構造をもち、1個の水素原子が2個のホウ素原子と結合している。分解や燃焼でこの結合が切断されると、大きな熱エネルギーが放出される。これまでにジボランB2H6、テトラボランB4H10、ヘキサボランB6H10など数種類のボランが合成されているが、多くは毒性があり、独特の臭気をもち、空気にふれると爆発的に酸化され、水とも反応して水素を発生する。燃焼で放出されるエネルギーが炭化水素よりも大きいため、ロケット燃料につかわれる。
かつてはホウ砂とホウ酸が、ホウ素化合物のおもな供給源だったが、現在ではさまざまな鉱物がホウ素資源として利用されている。おもな鉱石は曹灰ホウ鉱(白色の針状結晶)H2NaCaB5O10・7H2O、灰ホウ石(無色~乳白色の結晶)Ca2B6O11・5H2O、カーン石(無色透明の結晶)Na2B4O7・4H2O、方ホウ石(白色~無色の結晶)Mg3B7O13Clである。 ホウ素の単体は、ホウ酸塩の電解や、酸化ホウ素の還元などでつくられるが、高純度のホウ素をえることはひじょうにむずかしい。通常の製法でつくられるホウ素は、非結晶の粉末である。ただし三臭化ホウ素BBr3を水素と混合し、高温のフィラメントの上で還元する方法や、溶融塩にとかしたものを電解する方法をもちいれば、純度の高い結晶性のホウ素をつくることができる。結晶ホウ素は黒色の結晶で、ダイヤモンドにつぐ硬さをもつ。結晶ホウ素は半導体で、非金属でありながら電気的性質は金属あるいは炭素(石墨)に近くなる。
金属線にホウ素を結合させたホウ素繊維の合金は、航空機の一部に構造材として利用されている。ホウ素化合物ではホウ砂Na2B4O7・10H2O、ホウ酸H3BO3、炭化ホウ素B4Cが重要で、工業的にひろい用途をもつ。ホウ砂は洗剤、耐熱ガラスとして利用される。ホウ酸は殺菌剤などの医薬品にもちいられる。炭化ホウ素は研磨剤、合金への添加剤として利用される。窒化ホウ素はダイヤモンドと同じくらいかたく、超硬工具につかわれる。高純度のホウ素は、ケイ素半導体のドーピング剤(→ 半導体)につかわれる。 核エネルギーの分野では、ホウ素にはいくつかの重要な用途がある。ホウ素は中性子線の計測装置に利用されるが、これは中性子との衝突でアルファ粒子を放出し、リチウムに変化するホウ素の性質を利用したものである(→ 中性子:粒子検出器)。ホウ素は中性子の吸収能力が大きく、炭化ホウ素は炉心の制御棒にくみこまれて使用される。また、ホウ素を添加した合金も、炉心から発生する熱中性子の遮蔽(しゃへい)材として利用される。 元素記号B。原子番号5。原子量10.811。硬度9.3。周期表(→ 周期律)13族に属する。地殻中の存在量は10ppm。結晶ホウ素の融点2180°C、沸点3650°C、密度2.37g/cm³。
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