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生物が、昼夜の繰り返し、あるいは季節の巡りといった、自然のリズムと調和して生きていくことができるようにする生理機構。体内時計ともいう。こうした生物の「タイマー」は、動植物界をとおして、ほとんどあらゆる種類の周期性に対して存在している。 この知識の大部分は、概日(がいじつ)リズム、つまりほぼ1日の周期で変化する生命現象の研究からえられたものである。概日リズムは、さだまった1日周期の活動様式を生みだしている。日の出などといった外部からの手掛かりがなくても1日周期の活動はおこり、1日の活動に周期性があらわれるのは、すべて体内のタイマーが基本になっていることをしめしている。
しかし、完全な時計というものはありえない。自然界がもたらすいっさいの手掛かりを排除してしまうと、体内時計は正確な24時間周期からはずれて、特有の「自由継続」周期をしめす。その結果、自由継続中の動物の周期は、自然界の周期から徐々にはずれていく。人間を長期にわたって隔離した実験では、周期的な食事や睡眠は、24時間周期からずれたものになっていった。 こうしたずれは、正常な環境のもとではおこらない。外部の手掛かりによって、時計が毎日あわせなおされるからである。光がもっとも重要な手掛かりとなるが、多くの動物は、気温の周期変動をつかったり、そのほかの感覚器官から入力される情報によって、体内のタイマーを調節する。しかし、体内時計の狂いが大きくなると、完全にあわせなおすのに数日かかることもある。この現象は、長い距離を旅行する人の時差ぼけとして知られている。 外部の手掛かりをつかうための生理学的な仕組みは、じつに簡単なものである。たとえば、光を一閃(いっせん)させれば、それが夜明けを意味する引き金となる。1980年代の研究によれば、こうした単純な光による引き金も、人間の行動にまで適用できることが示唆されている。 また、少なくともいくつかの生物では、ある1つの遺伝子が生物時計の仕組みを生みだしているという研究もある。たとえば、ミバエでは、生物リズムをたもってゆくためには、パー(per: 一周期periodには短すぎるの意)とよばれる遺伝子が必要となる。この遺伝子には、タンパク質に多糖類が結合した長い鎖をもつプロテオグリカン分子の遺伝暗号がくみこまれている。プロテオグリカンは哺乳類でもみつかっている。
生物時計はすべての細胞に、また1つの細胞内の別々の場所にさえ存在できるようである。したがって、組織片をとりだしたもの、たとえばナマコの目から組織の一部をとりだしたものは、組織片自身のリズムをたもちつづける。しかし、この組織片が元の所に移植されると、すぐにその個体のリズムにあってしまう。ほとんどの動物の脳内には親時計があって、体のほかの部分に化学的な手段で同期信号をおくりだしているらしい。 たとえば、ガの蛹から脳をとりだして、人工的につくりだしたある地域の時間帯の日の出にさらす。これとちがった時間帯のリズムをもっていて、やはり頭をとりさったガの蛹の腹部に移植すると、移植された蛹は、腹部にうめこまれた別のガの脳にあわせた時間に羽化するようになる。脳内の時計が引き金となって、蛹の羽化をひきおこすホルモンを分泌するのである。ハムスターでは、親時計は視床下部にあることが、実験によってわかっている。こうした脳細胞の集合体は、視交差上核とよばれている。 また、松果体から分泌されるメラトニンというホルモンが、長周期の生物リズムにかかわっていることも明らかになっている。生物時計をじゅうぶんに理解することは、科学的に興味深いだけでなく、ほかの多くの点でも重要な意味をもっている。たとえば、将来有望な老化(→ エージング)の一理論は、全身にわかれている子時計が、老齢になると、何かの理由で脳の親時計とぴったりあわなくなるらしいという観察にもとづいている。このように、同調できなくなるという事実は、老化についての多くの疑問点を解明するのに役だつ可能性がある。
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