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海洋

海洋 かいよう Ocean
百科事典項目
項目構成
IV

堆積物の年代測定

海洋表層には、顕微鏡でないとみえないような微小なプランクトンが、たくさん生息している。その中でも浮遊性の有孔虫や珪藻などは、殻をもっているため、死ぬと水中を落下して海底へとふりつもっていく。こういった微小プランクトンは、生物自身の進化的な変化や生息環境の変化により、地質時代を通じて新しいが出現したり、元の種類が絶滅してしまったりすることが知られている。したがって、堆積物中に保存されたそれらの生物の殻の中から、時代に特有の種類をみつけだすことで、堆積物の年代をきめる手掛かりがえられる。また、これら微小プランクトンの中には、寒暖などの環境の違いによって、殻の化学成分に変化がおこるものがある。石灰質(炭酸カルシウムCaCO3)の殻をもつ有孔虫がそのひとつで、殻の中に固定される酸素の2つの同位体(16O(酸素16)と18O(酸素18))の比率は、有孔虫が生息していたときの海水中の同位体の比率と同じになる。

海水中の酸素の同位体の比率は水温や大陸氷河(氷河)の発達量などに応じて、世界じゅうで同時に変化することが知られている。したがって、堆積物中に保存された、有孔虫の殻の酸素の同位体比を、時代をおって分析して、変動パターンをえがくことにより、世界じゅうの堆積物をたがいに対比することができる。

もうひとつの方法として、堆積物の磁性を測定する方法がある。堆積物中には微小な磁性鉱物がふくまれていて、その磁性鉱物は堆積した当時の地球磁場の向きにならんでいる。地球の磁場は、地質時代に、何度も逆転をくりかえしていたことが知られている(→地球の「地磁気の逆転」)。地球磁場の変化は地球上のどこでも同時に記録されるので、磁性の測定によっても堆積物をひろい地域にわたって対比することができる。しかし、プランクトンの分析や堆積物の磁性の測定だけでは、堆積物の年代値(絶対年代)をもとめることはできない。

絶対年代の測定には放射性元素や放射性同位体が利用される。放射性元素によりもとめられた年代は放射年代とよばれる。たとえば、230Th(トリウム230)は30万年より新しい堆積物、炭素14法は4万年より新しい堆積物に、それぞれ適用できる(年代測定法)。また、プランクトンの種類や殻の成分の変化や地球磁場の逆転について放射年代をあらかじめ測定しておけば、プランクトンの殻の分析や堆積物の磁性の測定によっても、絶対年代を推定することが可能になる。これらの方法を総合して調査がすすめられた結果、海洋底の年代は2億年よりもわかいことが明らかにされた。

V

海水の組成

海水は、大陸の岩石の風化と浸食によりもたらされたいくつもの塩類がとけこんだうすい溶液である。海水の塩分は溶存塩類の千分率(海水1000g中のグラム数:‰、パーミル)で表現される。海水の塩分は、河川のながれこむ沿岸では低く、蒸発の盛んなところ、たとえば紅海では41‰と高い。

一般の海洋では、塩分は平均で35‰であり、34~36‰の間で変化する。海水中の主要な陽イオンの含有量は、ナトリウムが約10.5‰、マグネシウムが約1.3‰、カルシウムが約0.4‰、カリウムが約0.4‰となっている。主要な陰イオンは、塩化物が約19‰、硫化物が約2.6‰である。溶存塩類にはそのほか、臭化物イオン、炭酸水素ナトリウム(重炭酸)、二酸化ケイ素(シリカ)、さまざまな微量元素、および無機栄養塩(無機養分)と有機栄養塩がある。主要なイオンを合計した濃度は、場所により変化しても、主要イオン間の比率は全海洋を通じてほとんどかわりがない。

主要栄養塩は主要イオンにくらべて量は少ないものの、海洋の生物生産にとってひじょうに重要である。微量元素もある種の生物にとっては、重要なはたらきをもつ。炭素窒素リンおよび酸素はほとんどの海洋生物にとって不可欠な元素であり、海水中では、炭素はおもに炭酸水素ナトリウム、窒素は硝酸、リンはリン酸として存在している。

VI

水温

海洋の表層水の水温は、熱帯における30°Cから極地域における-2°Cまでの幅がある。-1.4°Cは海水の氷結温度である。表層水温は、高緯度になるにつれて低下する。また、季節による変化は、陸上の気温にくらべてずっと小さい。水温は、深さによっても違いがある。すなわち、一般に、水深100mまではほぼ一定であるが、100mより深くなると急激に低下し、およそ1000mでは5°Cになる。1000mより深いところでは、水温は徐々に低下して、最深部では、氷結温度よりわずかに高い程度の1°C前後になる。水温が急激に変化するところは、水温躍層とよばれる。

VII

海流

海の表層には流れがあり、海流という。海流は大きな渦をえがくように海をぐるぐるとめぐっている。これを海流や海水の循環ともいう。海流の動きは風によりひきおこされるが、流れの向きは地球の回転によって変化する(コリオリの力)。北大西洋のメキシコ湾流と北太平洋の黒潮はその代表であり、どちらも海洋の東側の沿岸の気候をやわらげている。陸地から沖へむかう風が卓越するところでは、表層水も沖へむかってながれていく(→風の「卓越風」)。すると、ながれさった分をうめあわせるために、300mほどの深さから、冷たい水が表層へとわきあがってくる。海洋大循環

これを湧昇流(ゆうしょうりゅう)という。湧昇してきた海水は栄養塩を豊富にふくんでいるため、その海域は生物生産性が高くなって、よい漁場となる。深いところの海水が、栄養塩に富んでいるのは、有機物(有機化合物)の分解がすすむからである。植物プランクトンなどの光合成をする生物は、光のとどく深さでしか生育できないため、生物生産は、おもに海洋の表層でおこなわれる。それらの生物が死ぬと水中でしずみはじめ、深いところで分解されてふたたび栄養塩となって海水へとける。生産性の高い海域の多くは、海水の鉛直方向の混合が盛んな海域である。たとえば、大陸の西岸と南極の周辺海域は、ひじょうに生産性が高い。南極周辺海域では表層水が冷やされて沈降し、そこへ深層の水が湧昇してくる。

表層水の循環は、風と地球の回転の働きでおこるが、海洋の深層水の循環は、海水の密度の違いによっておこり、これをサーモハライン対流(熱塩循環)という。海水の密度は、塩分と水温によってきまる。海洋の表面で蒸発がおこると、塩分が増大して密度が高くなり、海水は重くなる。そして、まわりの海水より重くなると、沈降するようになる。

冷却も海水の密度を高める働きがある。氷ができるときには、塩類がはきだされてしまうため、海水が氷結しはじめると周辺の海水の塩分がふえ、そのため、ひじょうに重い海水が多量に形成される。南極大陸に近いウェッデル海ではこのようなことがおこっていて、そこから重い海水が沈降して、海洋の深層水がつくられている。これは南極底層水とよばれ、大西洋にながれだしたあと東へむかい、インド洋や太平洋に流入する。北大西洋でも高塩分で低温の海水の沈降がおこっていて、中くらいの深さまでしずみこんで、北大西洋深層水が形成されている。北大西洋深層水はゆっくりと南下するが、南極底層水ほど重くないため、やや浅いところをながれていく。表層の海流の動きははやく、メキシコ湾流では最大毎秒250cmに達する。いっぽう、深層水の流れは毎秒約2~10cm程度である。

海水はいったん沈降してしまうと、大気との接触がなくなるため、大気との間で気体の交換ができなくなる。海水にとけている酸素は、有機物の酸化につかわれるため、沈降した海水にふくまれる酸素は徐々に減少していく。そのため酸素の含有量を測定すれば、海水の沈降がはじまってから何年たったかをもとめることができる。炭素の放射性同位体である14C(炭素14)は大気中でつくられて、二酸化炭素CO2として海水中にはいりこむ。二酸化炭素は、海水中の炭酸水素イオン(重炭酸イオン:HCO3-)と平衡をたもった状態になる。14Cは約5700年の半減期で時間とともに放射性崩壊していくので、その放射能を測定することによっても、沈降してからの海水が何年たったかをもとめることができる。このような測定の結果、北大西洋と南極付近で深層水が形成され、それらがいっしょになってインド洋と太平洋に向けてながれていること、もっとも古い海水は、北太平洋の深層にあって、その年齢は1500年であることが明らかになっている。

VIII

資源

海洋は、将来の食物の供給源として、有望視されている。生産性は海域によってことなり、高いところも低いところもある。光合成生物は、無機的な炭素や栄養塩と太陽光をもとに、有機物をつくりだすが、海に生息する光合成生物によりつくられる単位時間当たりの有機物の量を、その海域の生物生産という。海洋ではこのような生産は、植物プランクトンがになっている。植物プランクトンは動物プランクトンや魚類により捕食され、動物プランクトンや魚類のうちのあるものは別の捕食者(捕食)によりたべられてしまう(食物連鎖)。こういった生物たちの体をつくっている有機物は分解されて炭素や栄養塩になり、はじめの光合成の材料へともどっていく。海からえられる食物は、とくにタンパク質の供給源として重要である。

海洋における鉱物資源が注目されはじめたのは、つい最近になってからである。海水中にはさまざまの有用金属が多量にふくまれているが、海水の量は膨大であり、その中から金属を抽出することは容易ではない。たとえば、海水中には全部で100億tものがふくまれていると推定されているが、濃度が低すぎて回収は無理である。今日海水から採取されている鉱物の代表は、マグネシウム、臭素、塩(塩化ナトリウム)である。海底の砂利や貝殻は建設材としてもちいられることがあり、海底の砂利には少量ではあるがダイヤモンドがみつかることがある。リン灰石も海底でみつかり、リンをふくんだ鉱物であることから農業用のリン酸肥料として利用できる可能性がある。最近注目をあつめている海底鉱物資源にマンガン団塊がある。これは球形のかたまりであって、その中にマンガンを約20%、を10%、ニッケルコバルトをそれぞれ約0.3%ずつふくんでいる。これらはすべて有用鉱物であるが、商業的になりたつほどの採掘はまだおこなわれていない(採鉱)。

海底下にある油田やガス田(天然ガス)は世界の産油量の約27%を産出している。そのほとんどは浅い大陸棚にあるが、深海掘削技術をもちいて、もっと沖合いの油田を開発することも期待されている。海底下の石油の貯留層は、商業的に利用できるほどの硫黄をふくむこともある。硫黄は、深海の熱水噴出孔からでる熱水中にも豊富にふくまれている。

海洋は、重要な代替エネルギー源のひとつであり、海水が太陽光を吸収してえた熱エネルギーや、海流からえた熱エネルギーを電気に変換する方法がある。この方法は海洋熱エネルギー変換法(OTEC)として知られている。

温度差発電濃度差発電海流発電波力発電エネルギー資源

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