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バイオリン

バイオリン Violin
百科事典項目
項目構成
I

プロローグ

弓で弦をこすって音を出す弦楽器。バイオリン属の弓奏弦楽器の中で、もっとも高い音域をもつ。バイオリン属にはほかに、ビオラチェロコントラバスがある。わずかに内側(馬毛のはってあるほう)にカーブしたペルナンブコ材(ブラジルボクの心材)の弓は全長約75cmで、馬の毛がはってある。弦は4本で、奏者がかまえた場合の左から5度おきにト-1点ニ-1点イ-2点ホ音に調律される。

初期のバイオリンの弦は、はだかのガットであったが、今日では、ガット弦にも、アルミニウム、銀、スチールなどがまかれている。

II

構造と奏法

バイオリンには、よく乾燥させたスプルース材(エゾマツの類)の表板、よく乾燥させた楓(かえで)材の裏板、横板、ネック、指板、ペグ・ボックス、ペグ、ブリッジ、テールピース、f字孔(図を参照)などの部分がある。表板、裏板、横板をはりあわせて、中空の共鳴胴がつくられる。共鳴胴の内部には、ブリッジの右の根元に魂柱(うすい木片)がはめられ、表板と裏板をささえている。表板の裏にはブリッジの左側に細長いバス・バーがはられている。魂柱とバス・バーは音の伝達にとって重要であると同時に、楽器の強度をます役目がある。弦はテールピースに固定され、ブリッジにのせられてから指板の上にはりわたされてペグ・ボックスにいたる。ペグ・ボックスで弦は、音高調整のためのペグにまきつけられる。奏者は左手の指で弦を指板におしつけて、ことなる音高を出す。ただしい角度に弓をかまえ、ブリッジの近くで弦をこすると、弦が振動して音が出る。

バイオリンのすぐれた特徴は、うたうような音色をもち、抒情的なメロディから速くかがやかしい音型まで、幅広い音楽を演奏できる点にある。また、次のような奏法によって、特別な効果を生みだすこともできる。

バイオリン奏法には、弦を指ではじくピッチカート、弓をすばやく前後させるトレモロ、ブリッジのすぐ近くで奏してか細くすきとおった音を出すスル・ポンティチェッロ、弓の木の部分(馬毛の反対側)で奏するコル・レーニョ、フルートのような音をえるため弦の特定箇所に左の手の指を軽くおくフラジョレット(ハーモニクス)、弦にそって左手を上または下にすべらせるグリッサンドなどがある。

III

歴史

バイオリンは1500年代初頭にイタリアに出現した。中世の2種類の弓奏弦楽器、すなわちフィドル(ビエール、フィーデル)とレベック、そしてさらにルネサンスのリラ・ダ・ブラッチョ(バイオリンのような楽器で、指板に接触しないドローン弦をもつ)から発達したと考えられている。バイオリンより先にヨーロッパに出現し、バイオリンと200年ほど共存した6弦でフレットつきのビオラ・ダ・ガンバは、バイオリンと関係をもつものの、直接の先祖ではない。

最初期の重要なバイオリン製作者は、ガスパーロ・ダ・サロ(1540~1609)、ブレシアのマッジーニ(1579~1630ごろ)、クレモナのアンドレア・アマーティら北イタリアの人である。バイオリン製作の技術が頂点に到達したのは17~18世紀初頭であった。イタリアのクレモナにおけるアントニオ・ストラディバリとジュゼッペ・グアルネリの工房、オーストリアのヤーコプ・シュタイナーが最高峰に位置づけられる。

初期のバイオリンでは、ネックが現代のものとくらべて太く短く、本体に対する反りは小さい。また指板は短く、ブリッジの角度はゆるやかである。弦はガットだけでつくられた。弓のデザインも現代のものとはいくぶんちがう。張りのある、かがやかしく大きな音が出せるように、弓の細部は18~19世紀にすっかり改変された。20世紀の奏者の中には、18世紀の音楽にふさわしいという信念から、当時の仕様の楽器をつかう人も多い。

当初、バイオリンは社会的に低層の人々の楽器と考えられ、ダンスの伴奏や声楽のパートを重複するためにつかわれた。しかし1600年代初めに、イタリアの作曲家モンテベルディの「オルフェオ」(1607)などのオペラや、フランス国王ルイ13世の「王の24人の弦楽隊(1626結成)」のおかげで、高く評価されるようになった。

バロックの時代(1600~1750ごろ)に、イタリアのコレリビバルディ、タルティーニ、ドイツのビーバー、テレマンヨハン・セバスティアン・バッハをはじめとする高名な作曲家・演奏家が輩出して、評価はますます高まった。独奏コンチェルト、コンチェルト・グロッソ、ソナタ、トリオ・ソナタ、組曲など、当時流行した器楽曲ではバイオリンが中心的な存在となっており、またオペラでも使用された。

18世紀中ごろには、ヨーロッパ音楽のもっとも人気のある独奏楽器にかぞえられるまでになった。バロックおよび古典派時代(1750~1820ごろ)のもっとも重要な合奏形態はオーケストラであったが、ここでもバイオリンは中心的存在となった。オーケストラは今日でも西洋音楽の重要な合奏形態であり、その奏者の半数以上はバイオリン属の楽器を担当している。室内楽でもバイオリンはしばしば重要な役目をはたしており、もっとも一般的な弦楽四重奏の場合は、バイオリン2、ビオラ、チェロで編成される。

19世紀には伝説的なバイオリンの巨匠が誕生し、ヨーロッパじゅうで演奏活動をおこなった。イタリアのビオッティ、パガニーニ、ドイツのシュポーア、ヨアヒム、スペインのサラサーテ、ベルギーのビュータン、イザイエらである。

20世紀にはアメリカのアイザック・スターンメニューイン、オーストリア生まれでアメリカの市民権をとったクライスラー、ロシア生まれでアメリカの市民権をとったハイフェッツ、ミシャ・エルマン、ネーサン・ミルスタイン、ハンガリーのシゲティ、ソビエトのオイストラフらの手で、芸術的・技術的な高みに到達した。

バイオリンのための独奏曲・協奏曲・室内楽曲をのこした作曲家として、バロック・古典派時代のバッハ、モーツァルトベートーベンロマン派時代にはオーストリアのシューベルト、ドイツのブラームスメンデルスゾーンシューマン、ロシアのチャイコフスキー、そして20世紀にはフランスのドビュッシー、オーストリアのシェーンベルク、ハンガリーのバルトーク、ロシア生まれのストラビンスキーらがあげられる。

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