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食料の需要と供給のことで、具体的には食料の消費量(需要量)に対する生産量(供給量)といった相対的な量を意味することが多い。
600万年といわれる人類の長い歴史のほとんどは、食料の多くを狩猟や採集によって獲得し、周囲の自然環境に依存していた時代である。わたしたちの祖先は、さまざまな食材をもちいることで必要な栄養素を摂取していたが、その収穫量には年ごとの差がかなりあったために、1つの地方で食料供給量にみあった定住できる人間の数はかぎられていた。 しかし、この1万年ほどの間に食料生産(農耕)や家畜飼育をはじめ、大きな変化がおこった。人類は農耕のために定住をはじめ、家族を組織して、小さな社会集団に帰属させることの利点を認識し、個人どうしで共同作業をすることになり、これが統治組織、あるいは社会組織への萌芽(ほうが)となっていった。 手に入る食材の量がふえ、みずから生産した食料への依存度を深めながら、人類は、自然の制約による飢餓や病気を克服し、同時に人間の能力開発を促進することとなった。こうして人口は急速にふえ、文明を開花させたのである。 文化的発展がもたらした影響の中で次にあげるべきことは、数百年前にはじまった科学と産業の飛躍的な発展である。人間の食料の需要と供給の面からみた場合、この発展がおよぼした効果は絶大である。科学的知識を食料生産に応用した結果、土地の単位面積当たりの生産量の増加はひじょうに大きなものとなった(→ 農業革命)。また、基礎医学の発展によって、世界のさまざまな地域の人々の健康状態は改善され、平均寿命は長くなり、結果として食料の需要はのびた。 石油や石炭などの新しいエネルギー資源が開発され、それらは産業発展の基礎となって、さらに大量の食物を生産、収穫し、生産物を世界じゅうに輸送することが可能になった。比較的短い期間に世界の食料資源は大きく増加し、かつてない速さで世界人口も拡大することになった。その一方で人口をこのまま増加するままにしておくと、食料生産がいつかはおいつけなくなるという認識は、少しずつではあるが認識されるようになった。1798年に経済学者マルサスは、著作「人口論」においてそのような見地を概括している。「…人口はそのままにしておくと幾何級数的に増加していくが、食料は等差級数的にしか増加しない」
世界の食料需給問題は、世界の人口に対する食料総生産量の問題である。ほかにも飢餓と栄養不良を左右する要因として、食料流通、食料の入手のしやすさ、食料の損失と浪費などの問題がある。食料の入手のしやすさは、家畜のために生産される穀物や豆類の生産に影響をうけることもある。 人々の健康状態が改善され、ほとんどの国の死亡率はいちじるしく低下したが、ほとんどの発展途上国の出生率はわずかにしかひきさがらなかった。これらの2つの率の違いによって、世界の人口は爆発的に増加した。 科学者たちによって、人間が1日に摂取すべき必要不可欠な栄養素というものが算出されている。これは年齢別、性別、職業別、体格別、地域別によってことなっている。先進国では平均的個人は余分に栄養素をとり、発展途上国では逆にカロリーがやや不足していて、タンパク質やミネラル、ビタミンの決定的な不足になやまされている。 食料の総供給量は、単位面積当たりの収穫量と土地面積(とくに耕地)の積になる。食料を生産する土地をふやすことが可能であっても、そのように耕地を拡張することで経済的なメリットをえられるとはかぎらないし、環境保護などと対立する場合もある。一方、発展途上国と先進国の両方で単位面積当たりの収穫量をふやす可能性は大いにあり、実際に20世紀後半には、生産高の増加に貢献した。 食料の需給は過剰と逼迫(ひっぱく)をくりかえしてきたが、1980年代以降国際的には過剰基調に転じた。これは人口増加をうわまわる穀物生産と畜産物生産の伸びによってもたらされた。その結果、世界全体でみれば、全人類をやしなえるだけの食料が確保されたことになるが、先進国での飽食と発展途上国での飢餓の並存という問題は依然解決されていない。 また、20世紀末にいたり、地球規模の環境問題の深刻化もあり、耕地面積の大幅な拡大は困難となった。くわえて、大規模な表土流出、肥料の過剰投入や家畜の過度の放牧などによる地下水汚染(→ 水汚染)や大気汚染、塩類集積などの問題が顕在化し、地域的な環境面からの制約によっても従来のような単位面積当たり収穫量の伸びは期待できなくなった。さらに地球温暖化(→ 温室効果)による異常気象の増加も予測され、食料供給量の不安定要因となっている。 一方、世界の人口は発展途上国を中心に今後も増加がみこまれ、しかもそれらの国々では経済成長にともなう所得水準の上昇により、畜産物消費の増大とそれによる飼料穀物需要の増大が予想される。したがって、このような供給と需要の傾向から、今世紀には世界の食料需給は不安定になる、もしくは逼迫することが懸念されるようになった。
このような状況の下、食料の需給バランスの安定をはかる試みや、他方で不公平をやわらげ、飢餓をなくし、すべての人々に適切な量の食料を確実にいきわたるようにしようとする試みがおこなわれている。現在では世界じゅうでじゅうぶんな量の食料生産がおこなわれ、すべての人々が必要としているじゅうぶんなカロリー量が供給されているにもかかわらず、食料の地域的配分は不平等で公平とはいいがたい。もし食料の地域的配分の不公平が解決されるのであれば、人口増加にみあった水準で食料を増産することがその解決策になるはずである。同時に、とくに発展途上国で、出生率を段階的にひきさげていくことが重要な課題である。しかし、これらはひじょうに困難なことではある。なぜならこれらの問題には、社会、倫理、健康、政治、経済といったいろいろな面を考慮にいれなければならないからである。 作物や動物からえられる食料の増産に根本的に必要なことは、人間が周囲の環境への態度をかえることである。開発することよりも、地球のかぎられた収容能力を認識し、その態度をあらためることが、地球の収容能力の維持と向上につながることを認識することが重要である。一般に食物連鎖では栄養段階ごとに利用可能なエネルギーのうち、わずかな部分のみが使用可能なかたちとして次の栄養段階にうけつがれるのみである。ゆえに、人間にとっては、牛や豚などの草食動物を消費するよりも人間が直接に穀物を消費するほうが、エネルギー効率がはるかに高い。 世界じゅうの多くの人々は食事で植物からつくられたものを重視している。しかし、欧米などでは1人当たりの畜産品の消費量が多すぎる食事がおこなわれ、その畜産品の多くは、家畜に集約的に飼料穀物をあたえることによってえられたものである。もしさらに多くの人々が菜食主義者として食物連鎖に参入するとしたら、穀物消費の実質的な減少によってエネルギー変換の効率が急激に増加する可能性はある。 しかし動物は食料供給のうちで戦略的な役割をになっており、長期的な食料供給を合理的に実現するためには不可欠なものである。世界の土地のうちの相当の部分は、牧草地(→ 牧草)と耕作に適さない土地からなっている。効率的な耕地利用をするためには、土壌保全と土づくりを必要とし、穀物の輪作の際には飼草をもちいる必要がある。このような牧草と耕地との交代的栽培による飼草は、穀物やそのほかの資源からの残滓物(ざんしぶつ)とともに、畜産動物によって人間の重要な食料へと変換される。その結果、食肉や卵、乳およびそれらの加工物が生産され、穀物食料では摂取されにくいアミノ酸や特定のビタミンを提供してくれる。→ 畜産:酪農 食料の生産効率の飛躍的上昇は、科学や技術の進歩によってもたらされたものであり、栄養学や動植物の遺伝学、病気および害虫防除、環境改善の分野の進歩によるものが大きい。先進国では食料生産における経済効果は大きく進展し、発展途上国のいくつかの国々では食料供給が飛躍的に増加した。
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