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あらゆる時代を通じて、ワインは世界じゅうの温帯地方で生産されてきた。ワインには、やせた、かたい土壌で栽培されたブドウがとりわけ適している。ワイン用のブドウは伝統的に川沿いのブドウ園で栽培され、古くはヨーロッパのライン川、ローヌ川、ロワール川の流域など、輸送に都合のよい地域でつくられた。
ワインはテーブル・ワイン、発泡性ワイン、デザート・ワインの3つに大別される。テーブル・ワインはスティル・ワイン(非発泡性ワイン)あるいはナチュラル・ワインともよばれ、おもに食事中にのまれる。発泡性ワインは、シャンパンのように栓をぬくと発泡するのが特徴で、祝い事の席でのまれる。デザート・ワインは、強化ワインやシェリー、ベルモットのように一般に食前あるいは食後にのまれ、料理につかわれることも多い。強化ワインにはアルコールや糖分がくわえられており、よりアルコール分の高い酒、多くはグレープ・ブランデーを添加することで発酵をおさえる。この結果、アルコール含有量が15~20%となる。これに対して、ほとんどのテーブル・ワインは9~14%である。 テーブル・ワインはさらに赤、白、ロゼと色によってわけられる。赤ワインは黒みがかったブドウからつくられ、風味と色のつけ方によってもちがうが、2日から3週間、果皮を発酵液にいれたままにしておく。白ワインは黄色や緑色のブドウ、あるいは黒みがかったブドウを原料とする。ただし後者の場合、発酵液にブドウの果皮はいれない。ロゼ・ワインは黒みがかったブドウから醸造され、うすいピンクに色づくまで発酵液に果皮をいれておく。 またテーブル・ワインは、味によってもスィート(甘口)とドライ(辛口)にわけられる。スィートはかなり甘美な風味があり、ドライは甘みがないことが特徴である。 ワインの多くは、さらに生産地によっても分類される。たとえばワイン大国のフランスには、ワインの名産地が6カ所ある。ボルドー、ブルゴーニュ、コート・デ・ローヌ、ロワール川流域、シャンパーニュ、アルザスである。この中でボルドーはとくに重要で、ボルドー地方はさらに36地区に分割される。なかでも有名なのがメドック、グラーブ、サンテミリヨンである。これらの地区はさらに村(コミューン)にわけられ(たとえばメドック地区のマルゴーというように)、シャトー・ラフィット・ロトシルドのように世界じゅうに名を知られた個人所有のブドウ園がある。 ボルドー地方のワインの格付けは、1855年仲買人組合によってさだめられたものに由来する。この格付けではシャトーで瓶詰めされたワインが、さまざまな客観的、主観的な基準をもとに5段階の規格で評価された。この評価システム「クリュ・クラッセ」は、疑問視するむきもあるが、基本的には信頼にたるものとされている。 フランス(アルザスをのぞく)ほど細かく等級をわけている国はないが、ヨーロッパのほとんどのワイン生産国で、同じようなワインの類別がおこなわれている。キャンティもリオハも、それぞれイタリアとスペインのワイン生産地域にちなんだものであり、バルポリチェラ(イタリア)、ベルンカステル(ドイツ)、ピースポーター(ドイツ)といった銘柄もワインを産する町村の名前からとられている。 ヨーロッパ以外ではワインは包括的に分類されることが多く、類似していると思われるヨーロッパの有名なワイン生産地区や銘柄にちなんで命名される。たとえばニューヨーク・ステート・シャンパンやチリ・ソーテルヌなどである。また、シャルドネあるいはカベルネ・ソービニヨンなどといった名前はワインの原料となったブドウの品種名に由来しており、多くの国でこのような分類法がとられている。
ワインをつくり、のみ、たのしむことは、少なくとも人類の歴史のごくはやい段階からおこなわれてきた。最初期のブドウ園は、前6000~4000年のカフカス(コーカサス)地方にさかのぼると思われる。その頃、メソポタミアでもワインが知られるようになり、アルコール飲料としてビール同様、製造されるようになった。エジプトでは前3000年以前に祭祀(さいし)で使用されていたが、以後2000年にわたり一般の人々の消費を目的として生産されてはいなかった。 ワインが食事とともに飲用されるようになったことをしめす最古の記録は、前5世紀、ギリシャの歴史家ヘロドトスの記述にみられる。ヘロドトスはエジプトの神官の日常の飲食物についてふれ、「神聖な穀物から焼いたパン、ガチョウとウシの肉をたくさん、そのほかにワイン」としるしている。古代ギリシャ人はブドウ栽培あるいはブドウ畑の開墾を営利目的ですすめ、ワインの輸出もしていた。それらのワインは濃厚で、粘りがあり、のむ前に水でかなりうすめなければならなかった。 ギリシャのワインは古代世界でかなりの需要があり、松やにをぬった大きな桶で発酵させた。この樹脂には、現代の有名なギリシャ・ワイン、レツィーナにもちいるテレビン油と同様の特性があったと考えられる。発酵のあと、国内消費向けには動物の皮袋に、また輸出用には陶製のアンフォラ(貯蔵用の壺)につめて出荷された。いずれも気密性がなく、したがってワインの貯蔵には不適当だった。 ワインの劣化をおさえようと各地でいろいろな製法が開発された。ハーブとスパイスと濃縮した海水の混合物を熟成してワインにくわえるという方法も考えられた。古代ギリシャのワインは現代人の味覚にはあいそうにないが、古代ギリシャ人たちはこれを愛飲し、ワインの神ディオニュソス(ローマ神話のバッコス)を崇拝した。当時の芸術や文学に目をむければ、生活や儀式の中でワインがいかに重要な役割をはたしていたかがわかる。 古代ローマ人もワインを愛した。ローマ帝国が拡大するにつれ、スペイン、ガリア、シチリア、エトルリア、イリュリア、北アフリカなど、土壌や気候が栽培に適した土地でブドウがつくられるようになった。間もなく、ガリア地域のワイン生産量はイタリアをはるかにうわまわり、ローマの元老院は植民地でのワイン生産を制限する法律を可決した。しかし、こうした法律はほとんど効果がなかったようである。1世紀後半、ブドウ園がひろく耕作されるようになって穀物生産が減少し、ついにドミティアヌス帝は領土のブドウ園の半分をほかの作物に転換するよう命令をださざるをえなくなった。 中世初期、ヨーロッパではワインの生産量と品質がしだいに低下していった。わずかに生産されていたものも地元では人気がなく、キリスト教の秘跡に必要なものであったため、ほとんどが教会の組織で消費された。おもなワイン生産地区がふたたび活力をとりもどすのは、12世紀以降のことである。 北アメリカでワインが知られるようになったのは、比較的あとになってからである。現在では、ヨーロッパ人が習慣として地元産のワインを愛飲するのにくらべて、アメリカ人はあまり銘柄にこだわらない。ブドウ栽培の歴史もアメリカ大陸では比較的新しい。カリフォルニアの各地でフランシスコ会の修道院が大規模なブドウ園を運営するようになったのは、ほんの200年前のことである。そして禁酒法が廃止されたあと、アメリカのワイン生産はほとんど一からやりなおさなければならなかった。それでも今日では、カリフォルニア・ワインが良質のヨーロッパ産ワインと肩をならべるまでになっている。 19世紀、カリフォルニアのブドウ園からもたらされた有害な副産物によりヨーロッパ・ワインが全滅の危機にさらされた。ブドウネアブラムシがカリフォルニアの台木に付着したままヨーロッパにはこばれ、これが伝染病をひきおこし、フランスだけで100万haのブドウ園が壊滅寸前になった。ブドウネアブラムシに耐性をもつアメリカ東部原産の台木にヨーロッパのワイン用ブドウの木、バイタス・バインフェラを接ぎ木し、完全にうえかえることで状況は改善された。
何世紀もの経験から、ワイン用ブドウの栽培には温帯地方が最適であることが明らかになっている。休眠中のブドウの木でさえ、寒帯のきびしい寒さにはたえられず、また熱帯の暑さはブドウの理想的な生育過程のさまたげとなる。ある特定のブドウの品種が生育するにはどの地方が適しているかも古くからわかっていた。 ある年(醸造年)のワインの品質をきめるには重要な要素がいくつかある。まず、生育期と生育期の間におこなうブドウの剪定をどの程度にするかである。生産量が少なければ味のよいブドウとなるので、木をかりこむことで収穫量はかぎられるが良質なブドウがとれる。次に、土壌にじゅうぶんな栄養があり、ブドウ栽培に適した耕作地であること。生育期にはかなりの日照と雨量が必要である。豪雨の場合を考慮し水はけのよい土壌であること。収穫の時期も重要になる。ワインの醸造の仕方。さらに熟成していないワインの貯蔵法などがワインの品質を左右する。 一般的にワインの醸造は完熟したブドウの果汁を発酵させておこなわれる。(例外はたとえばフランスのソーテルヌなどで、ブドウの収穫を故意におくらせ、白カビ、ボトリティス・シネラが発生したあと、つまり貴腐(きふ)とよばれる状態になってから収穫した、糖分の含有量が多い甘口の白ワイン)。最近まで、発酵はもっぱら木の大桶でおこなわれていたが、現代の醸造方法ではガラスを内側にはったタンクかステンレス製タンクが使用されるようになってきている。衛生状態がよいことと、より精密な管理ができることがその理由である。 一般的な醸造の工程は以下のとおりである。まず、醸造場で収穫したブドウから果梗(かこう:ひとつひとつの実についている茎)をとり、軽く圧力をかけて果汁をしぼり、それを発酵用の大桶あるいはタンクにうつし、数日から数週間そのまま放置しておく。かつては、発酵はブドウの皮にふくまれている酵母菌の作用にたよっていたが、現在は専用に培養した酵母菌株を天然の酵母菌の代わりに使用することが多い。果汁(糖と水分の混合液)は、発酵によってアルコールと水に分解され、副生成物として炭酸ガスが発生する。赤ワインの場合、ブドウの皮からタンニンと色素がひきだされる。前にのべた甘口ワインは例外だが、果汁にふくまれる糖分がすべてアルコールに変化するまで発酵がつづく。 赤ワインにはかなりのタンニンがふくまれる。これは色づく過程で、皮からタンニンもいっしょに浸出してくるためである。口当たりのよい渋みは、赤ワインと白ワインのおもな風味の違いになっている。発酵期間がきわめて短い場合など例外をのぞき、熟成していない赤ワインはタンニンの量が多すぎるが、瓶の中で熟成させることによって、タンニンの大部分は化学的に中和され、いくつかの着色物質と結合して無害の沈殿物になる。この沈殿物はワインを別の容器に静かにそそげば、とりのぞくことができる。赤ワインの辛口の度合いはタンニンの含有量できまる。タンニンが多ければ、より辛口になる。 ブドウの成育のよくない年、つまり完熟していないときは、発酵の段階で果汁に糖分をくわえることも多い。熟していないブドウからはじゅうぶんな濃度のアルコールが発酵せず、品質が不安定になるからである。瓶詰めの前のいくつかの段階で、すべてのワインを「精製」、つまり濾過(ろか)して不純物をとりのぞく処理をする。 多くのワインは瓶詰めの直前にさらに処理がほどこされ、のこった不純物がとりのぞかれる。低価格の製品の場合は、短時間加熱する方法(瞬間低温殺菌)がとられる。これによってワインが瓶詰めされたあとで熟成がすすまないようにする。より高級なワインでは、きわめて精緻な濾過がおこなわれ、瓶につめられてからもワインは熟成をつづける。大桶ですすむ自然発酵にくわえて、細菌による発酵が必要なワインもある。この発酵は瓶の中でおこり、リンゴ酸が乳酸と炭酸ガスに変化し、それによってワインの酸味がへり、微妙な発泡性がくわわる。
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