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総理大臣

総理大臣 そうりだいじん
百科事典項目
項目構成
I

プロローグ

議院内閣制の国において、内閣の首長の地位にある大臣をいう。首相、総理、宰相などいろいろな名前でよばれることがある。

II

イギリスの場合

内閣総理大臣(以下、首相という)というのは、もともと近代内閣制の母国イギリスでは、国王の諮問機関である枢密院から分化・発展してきた内閣における「同輩中の首席」(Primus inter pares)という意味で、他の閣僚と質的にことなった地位と権限をもっていたわけではなかった。その後も首相の呼称は定着しなかったけれども、国王の名で行政を調整する仕事をまかされ、業務の適切な指揮・指導については国王に対して責任をおっていた。当時、首相として著名だったのは、1783年から約20年首相の座にあったピット(小)で、彼が首相の地位を定着させたといわれる。首相の肩書が公式文書に登場したのはその約100年後、ディズレーリがベルリン条約の署名に首相(Prime Minister)の名をもちいた1878年であった。

そして、首相の官職が法律上正式に承認されたのは1937年で、大臣法(the Minister of the Crown Act)によって首相に俸給と年金が支給されるようになってからである。ただし、首相の権限と責任についての法律上の規定はなく、首相の仕事は現在も憲法上の慣習にまかされている。首相の地位と権限は慣習上のものであるが、国家の役割の拡大、軍事・外交体制の変化、普通選挙の導入にともなう組織化された大衆政党の発達、選挙運動過程における党首の役割の増大によって、党と国家両組織の頂点にたつ首相の権力はいちじるしく拡大した。首相の座につく政治家の能力と個性によってもことなるが、首相によっては内閣制ではなく、首相統治制とよんだほうがよい場合すらある。

首相の権力の源泉は一般的にいって、閣僚ポストをふくむさまざまなポストへの任命権の行使によるものが大きく、さらに行政府の長としての政策決定過程での影響力行使、議会における政府与党の党首としての役割、選挙過程での役割、国家を代表しての外交交渉、国際会議でのパフォーマンスなどがある。

III

日本の場合

1

戦前の内閣制度と内閣総理大臣

日本の内閣総理大臣の公式名称は、1885年(明治18)の内閣制の発足にはじまるが、当初は同時に発布された「内閣職権」によって、内閣総理大臣に強い国政統制権があたえられていた。しかし89年の「内閣官制」によって行政各部に対する「統督」権がなくなり、首相権限は削減された。

さらにこの年に成立した大日本帝国憲法では、天皇輔弼(ほひつ)については、他の国務大臣と同等の地位におかれ、他の国務大臣に対する指揮命令権はあたえられなかった。ただ、天皇を輔弼する場合の手続きに関して特別な地位権限がみとめられ、内閣の首班たる地位は公認されていた。しかし、内閣総理大臣の他の大臣に対する統制はみずからの政治指導力によるしかなく、それだけでは限界があり、閣内不統一で総辞職する場合が多かった。いわば内閣総理大臣は「同輩者中の首席」でしかなかったのである。

2

日本国憲法下における内閣総理大臣

それに対して、現行の日本国憲法では、内閣総理大臣は内閣という合議体の「首長」としての地位を占めている(66条1項)。

内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決によって指名され(67条)、その指名にもとづき、天皇が国事行為として任命する(6条1項)ことによって、その地位につく。そして、内閣総理大臣は、国務大臣を単独で任命して内閣を組織するが、ときに任意に国務大臣を罷免することもできる(68条2項)。また、在任中の国務大臣の訴追については、内閣総理大臣がその同意権をもっている(75条)。このように、内閣総理大臣は内閣の組織的淵源(えんげん)であるから、内閣総理大臣が欠けたときには、内閣は総辞職することになる(70条)。内閣総理大臣が欠けたときや内閣総理大臣が海外に出張したり病気などになったときには、内閣総理大臣があらかじめ指定する国務大臣が、臨時に内閣総理大臣の職務をおこなう(内閣法9条)。

内閣総理大臣の権能は憲法や内閣法に規定されるだけでなく、そのほか、たとえば自衛隊の指揮監督権のように、個別法によって内閣総理大臣の権限とされているものもある(自衛隊法7条)。

しかし、行政権は、内閣総理大臣にではなく、内閣に属する(日本国憲法65条)。内閣総理大臣が、内閣を代表して議案を国会に提出し、一般国務および外交関係について国会に報告し、ならびに行政各部を指揮監督する権限をもっていても(72条)、73条に規定される行政権限は、内閣で決定しなければならない。

そもそも、内閣は、一体となって行政権を行使し、国会に対して連帯責任をおう(日本国憲法66条3項、内閣法1条2項)が、各大臣は、基本的には主任の大臣として行政事務を、それぞれ分担管理する(内閣法3条1項)。そこで、その調整をするために閣議が必要となる。閣議は内閣総理大臣が主宰する(4条2項)。しかし、内閣総理大臣に発議権があるか否か明文上不明であったため、1999年(平成11)の改正で、同条同項に「内閣総理大臣は、内閣の重要政策に関する基本的な方針その他の案件を発議することができる」という規定が追加された。

その他、内閣総理大臣には、閣内の統一と一体性を確保するため、内閣を代表する権限(5条)、行政各部の指揮監督権(6条)、主任の大臣間における権限疑義の裁定権(7条)、行政各部の処分・命令の中止権(8条)がみとめられている。しかし、これらの権限行使も、最終的には閣議の決定や裁定などに拘束されるものとなる。あくまで、行政の最高意志決定機関は、憲法65条の規定をうけて内閣とされている。

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