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太陽の周りをまわる小天体で、長くて明るい尾をもつ。太陽系に属する天体だが、一般には太陽の近くをとおるときにしか観測することができない。天文学的には、太陽熱によってなんらかの蒸発現象がみられる天体を彗星とよび、蒸発がない場合は小惑星としている。ただし、近年では、小惑星として発見された後に蒸発が確認され、彗星としても登録されるという、いわば二重戸籍をもつ天体もふえている。 英語「コメット」は、「毛の生えた星」とか「長い髪をなびかせた星」を意味するラテン語のステラ・コメータからきている。日本では天球に突然出現することや、長い尾をひくことから俗に「箒星(ほうきぼし)」とよび、彗星の出現によって改元したことがあるなど、一般には凶兆として忌みきらっていた。その一方で、尾の形によっては「穂垂れ星」などとよばれて、豊作を暗示する瑞兆(ずいちょう:めでたい前兆)とされたこともある。 なお、彗星は2006年8月に開催された国際天文学連合(IAU)の総会で、小惑星などとともに、Small Solar System Bodiesに分類されることになり、07年(平成19年)4月に日本学術会議は、太陽系小天体という和名を推奨しているが、彗星という名称をつかわなくなるわけではない。
大彗星の出現は、1577年にデンマークの天文学者ティコ・ブラーエが天体であることを証明するまでは、大気現象だと考えられていた。17世紀にイギリスの科学者ニュートンが、彗星の運動は、太陽の周りをまわる惑星と同じ法則にもとづくことを立証した。イギリスの天文学者ハリーは、過去に出現した彗星の軌道を比較することにより、1682年の彗星が、1531年と1607年に出現したものと同一のものであることをしめし、1758年にふたたびもどってくることをただしく予言した。ハレー彗星(ハリー彗星とも)の出現の記録は中国では「史記」始皇本紀(しこうほんぎ)の中に前240年(もしくは前239年)という大昔からあることが確認されており、前466年に観測された明るい彗星も、ハレー彗星だった可能性が高いと思われる。 近年では1986年の初めに太陽のそばを通過した。このとき、太陽系から遠ざかろうとするハレー彗星に、同年3月、ソ連(現、ロシア連邦)の探査機ベガ1号(6日、1万kmまで接近。以下同)と2号(9日、8000km)、ヨーロッパ宇宙機関(ESA)の探査機ジオット(14日、500km)が接近した。このときジオットは、ジャガイモのような形をした彗星の核の割れ目から塵(ちり)やガスをふきだしているようすを撮影することに成功した。また同じ3月には、日本の宇宙科学研究所(現、宇宙航空研究開発機構)の探査機「すいせい」(8日、15万km)と「さきがけ」(11日、700万km)の2機も彗星のコマやプラズマ、磁場などの観測をおこなった。 その後、NASA(アメリカ航空宇宙局)は彗星にむけて多くの探査機をうちあげている。2001年9月には探査機ディープ・スペース1号がボレリー彗星のフライバイ(最接近)に成功し、詳細な観測をおこなった。04年1月には探査機スターダスト(1999年2月打ち上げ)が地球から約3億9000万kmはなれたビルト第2彗星に接近、彗星のコマを形成するガスや塵などの物質を採取することに成功した。06年1月、スターダストはサンプルを地球にもちかえり、サンプルが無事に回収された。現在、成分の解析がすすめられていて、地上観測でその存在が示唆されていた結晶質のケイ酸塩が直接確認されるなどの成果があがっており、今後もその結果に大きな関心があつまっている。また、05年7月には探査機ディープ・インパクトがテンペル第1彗星の核に子機インパクターをうちこみ、成分の分析をおこなった。 また、2004年3月にうちあげられたヨーロッパ宇宙機関の探査機ロゼッタは、チュリモフ・ゲラシメンコ彗星をめざして飛行している。14年に到着の予定で、観測機シャンポリオンを彗星核に着陸させ、調査をおこなう予定となっている。
彗星はふつう、コマ(髪の意)とよばれる星雲状の円盤と、その中にある小さな核とで構成されている。1949年、アメリカの天文学者フレッド・L.ホイップルは、彗星の本体をなす核は氷と塵からなる「よごれた雪玉」である、と提唱した。 雪玉理論の根拠はさまざまなデータの中にある。そのひとつは、彗星のコマや尾をつくっているガスや微粒子の観測から、ガスの大部分が宇宙でもっとも一般的な元素である水素、炭素、窒素、酸素の分子の断片、つまり遊離基(フリーラジカル)だということがわかったことである。たとえば、メチル基–CH3、アミノ基–NH2、ヒドロキシル基(水酸基)–OHといった遊離基は、安定した分子CH4(メタン)、NH3(アンモニア)、H2O(水)がばらばらになったものだと考えられる。これらの分子は、氷あるいはもっと複雑で冷たい化合物として、核の中に存在していると思われる。 雪玉理論をささえるもうひとつの事実は、観測された彗星の軌道が、ニュートンの運動力学(→ 力学)からかなりずれていることである。これは、放出されるガスがジェット作用(→ ジェット推進)となって、彗星の核をすすむべき軌道からわずかにずらしてしまうことによる。それにくわえて、何回ももどってきて観測された周期彗星は、時とともにしだいに輝きをうしなう傾向がある。こうしたことは、ホイップルが提案した雪玉構造であれば納得のいくことである。さらに流星群の存在は、彗星の核がまさに固体であることをしめしている。 しかし、最近の探査機をつかった観測結果から、彗星の核は岩の塊のような外観で、表面はきわめて黒い物質でおおわれていることがわかった。その内部も小さな塊がよりあつまった構造をしていて、太陽などに接近すると、その引力で細かくくだけるほどもろい構造をしているらしいこともわかってきた。また彗星表面のアルベド(反射能。光の入射に対する反射の割合)はきわめて低く、探査機ジオットの観測ではハレー彗星で約4%、探査機ディープ・スペース1号の観測したボレリー彗星では3%弱しかなかった。その意味では、一部の彗星の核はよごれた雪玉というよりもむしろ固体成分の多い、こおった泥玉のようなものではないかと考えられている。 ぼやっとしたコマをふくむ彗星の頭が、地上からの観測で木星よりも大きくみえることがある。しかし彗星の核の大きさは、ほとんどが直径わずか数キロメートル以下である。だが、ハレー彗星の核はジャガイモのような長楕円形(→ 楕円)で、長径約22km、短径約14kmである。この彗星の核には46億年前の太陽系誕生時の物質が閉じこめられていると考えられている。
彗星が太陽に近づくにつれ、太陽の熱が核の氷を蒸発させるので、彗星はひじょうに明るくなる。彗星はときとして何百万キロメートルにも広がる素晴らしい尾をつくりだす。尾は、彗星が太陽から遠ざかりはじめても、太陽の反対側につくられるのがふつうである。彗星の大きな尾(電離ガスの尾、イオンの尾)は、二酸化炭素と一酸化炭素をふくむイオン化された分子で構成されているが、これらの分子は太陽からふきつける熱いガスの流れである太陽風の作用で彗星からふきとばされたものである。また、太陽光の放射圧のため、コマからふきとばされた細かい塵で、まがった尾(ダストの尾)がつくりだされることもある。こちらのダストの尾は太陽光をそのまま反射するので白っぽくみえるが、前者のイオンの尾はおもに一酸化炭素分子がイオンとなるため、青くかがやいてみえることが多い。 彗星が太陽から遠ざかるにつれて、ガスと塵の放出量は少なくなり、尾はきえてしまう。軌道が小さい一部の短周期彗星の場合は、核にふくまれている揮発成分が少なくなっているために、尾が発達せず、小さなコマのみのことが多い。逆に、はじめて太陽に接近するような彗星の場合、揮発成分が多いために長大な尾が発達することがある。1996年に日本のアマチュア天文家である百武裕司(ひゃくたけゆうじ)が発見した百武彗星の尾が観測史上ではもっとも長く、最大5億7000万km(3.8天文単位:AU)にもなった。 このように尾の長さの変化と、どれだけ太陽と地球に近づいたかということで、彗星の見え方はいろいろちがってくる。記録にのこされた1400個あまりの彗星のうち、肉眼で尾がみえたのは半分以下であり、尾がくっきりと大きくみえたのは10%以下である。
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