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ヒゲクジラ(→ クジラ)の仲間ではおそらくもっとも有名で、全海域に生息する。夏には氷縁域へ、冬には繁殖のために熱帯の沿岸域へ回遊する(→ 動物の移動)。南北半球では、はっきり形がことなる。体の前面から3分の2くらいのところに背鰭(せびれ:→ 鰭)があり、もぐるときに背が特徴あるアーチ形をえがく。英名humpbackは、これにちなんでいる。うすく長い胸鰭(むなびれ)と大きな尾鰭をもち、尾鰭の下側の白黒のまだらは個体によって濃淡がことなる。深くもぐる前には、ふつう、尾鰭を水面の上にはねあげるため、研究者はこれを観察して、尾鰭の配色や先細になった尾鰭の形で数千もの個体を識別している。
ザトウクジラは、無脊椎動物や魚を餌(えさ)とする。獲物の群れに口をあけてつっこむと、喉(のど)が大きくひろがる。これは、喉の部分にあるうねがアコーディオンのようにへそのところまでひらくためである。水と獲物を大量に口にふくんでとじてから、上顎(うわあご)からたれさがった300本ものひげ板をとおして水をおしだし、食べ物をこしとる。最大22頭までの群れをつくって、いっせいに獲物に突進する。ときに単独あるいは小さな群れで、尾鰭や長い胸鰭で獲物をかこいこんだり、獲物の群れのまわりに息をはきだして泡の壁をつくったりする。この方法を、バブル・ネット・フィーディングとよぶ。
ザトウクジラは、またアクロバットのような動きをよくする。胸鰭や尾鰭で水面をたたいて水面にとびあがり、全身水の上にでてから、泡が滝のようにながれおちる中におちていく。こうしたジャンプは1年中おこなうが、とくに冬の繁殖地で頻繁にみられる。おとなだけでなく、子どももこのようなジャンプをおこなう。
繁殖期になると、オスどうしがメスをめぐってさまざまな方法であらそう。成熟したわかいオスは、たがいの距離をたもちながら、長く複雑な歌をうたって発情期のメスをきそいあう。オスはメスと、そのメスに子がいればその子にも、数時間から数日間つきそって、メスに近よろうとするオスを遠ざけたり、たたかうこともある。水面でさわぐオスの群れはたがいにあらそい、群れの1頭または複数のメスをめぐって、ぶつかったりおいかけたりして頭から出血することもある。交尾から11~12カ月後に1子が生まれる。授乳期間は1年たらずである。 1900年代初期に捕鯨が盛んにおこなわれた時期には、全世界での個体数はもとの10%以下まで減少した。44年にザトウクジラの保護がはじまってから、いくらか数は回復した。絶滅危惧種に指定されている。 分類:哺乳綱クジラ目ヒゲクジラ亜目ナガスクジラ科。ザトウクジラの学名はMegaptera novaeangliae。
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