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重力のもとで物体が流体中に静止しているとき、または流体表面にうかんでいるとき、その物体には物体がおしのけた部分の流体の重さに等しい浮力が上向きにはたらき、その分だけ軽くなるという、流体静力学の基本原理である。浮力は、周囲の流体が物体の表面にくわえる圧力の合力なのだが、流体の圧力は深さがますほど大きくなり、物体の表面にかかる圧力も大きくなる。同じ深さにある面では、表面の圧力は相殺されるが、深さのちがう面では圧力がことなる。したがって、物体の表面には全体として上向きの力がはたらくのである。
浮力の大きさは物体がおしのけた部分の流体の重さに等しいということは、次のように考えると実感できるだろう。流体中からその物体をとりのぞき、周りと同じ流体と瞬間的におきかえたとする。おきかえた流体と周りの流体は同じ流体なのだから、当然周りの流体は、おきかえる前と同じ状態を維持しているだろう。いいかえれば、おきかえた流体の下向きの重力と周りの流体からうける浮力とが逆方向の同じ大きさでつりあっているのである。
「アルキメデスの原理」が発見されるきっかけとなったといわれてきた有名なエピソードがある。シラクーザの王ヒエロン2世が職人に純金の塊をあたえて王冠をつくらせたところ、その王冠には銀がまぜてあるのではないかという疑いが生じた。この問題の解決を命じられたアルキメデスは、入浴時に湯があふれ、自分の体が軽く感じられることからこの原理を発見し、王冠に銀がまじっているのをみぬいたという。このエピソードは、ローマ時代の建築家、技術者ウィトルウィウスの「建築十書」にしるされているが、その真偽は不明である。
この原理はアルキメデスの著作「浮体論」の命題7にみられる、液体の連続性、圧力の小さな部分は大きな部分におしのけられること、どの部分も垂直上方にある液体の圧力をうけるということなどから導出されている。「浮体論」は、ヨーロッパでは、1269年にメールベクのギヨームによってラテン語訳されたが広く読まれた形跡はなく、1543年にイタリアの数学者ニッコロ・タルターリアによってラテン語訳が出版された。その後、「アルキメデスの原理」はイタリアの数学者ジョバンニ・ベネデッティや、ガリレオ・ガリレイによる落体運動論の形成に寄与したことが、今日明らかになっている。ガリレイは、アルキメデスの「浮体論」を手がかりとして、物体の落下や上昇をもたらす重さや軽さを、アリストテレスのように、物体の絶対的な属性としてではなく、媒体との相対的な関係によってさだまるものとした。そして落体の速さは、その物体の重さから媒体による浮力を減じた、その差としての相対的重さに比例するとして、ガリレイはアリストテレスの運動論の革新にのりだしたのである。
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