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大気圏
I. プロローグ

地球をとりまく大気が広がっている範囲のことを大気圏という。大気は上空になるほど希薄(きはく)であり、やがて大気の存在しない宇宙空間となる。しかしながら、大気圏の上限は明確ではないため、およそ高度800~1000kmまでの領域を大気圏とすることが多い。大気圏は、4つの厚い層の重なりから構成され、それぞれの層では気体の分子量や電離度といった化学的特性などに違いがある。とりわけ、太陽からうける熱放射エネルギーの量がことなるため、層ごとに大気の気温には差がある。そこで、おもに気温の差により、大気圏は下から対流圏、成層圏、中間圏、熱圏に細分され、その外側を外気圏(外圏)とよんでいる。なお、この区分は1962年に世界気象機関によって提唱された。

II. 対流圏

最下層の対流圏は、人間をはじめ多くの生物がすむ地表の上に広がる。その高度は赤道地方の上空で17km、北極と南極の極地方上空では10kmにおよんでいるが、同一の緯度でも、対流圏の厚みは夏には厚く、冬にはうすくなる。対流圏の気温は、地表から高度をますにつれて低くなる。その割合は気温減率とよばれ、100m上昇するごとに気温は約0.6°Cの割合で低下する。対流圏には、大気中の全気体質量の75%がふくまれており、大気の圧力は、最大となる。それは大気が重力によって地球にひきつけられ、その重みで最下層である対流圏が圧迫されるためである。

また、塵(ちり)や水蒸気も多く、しばしば雲が発生し、雨や雪などの降水がみられる。地表が太陽熱で暖められると、軽くなった空気が上昇し、上部では放射により冷却される。そのため、対流現象がおき、さまざまな気体をふくむ大気がつねに撹拌(かくはん)されることになり、いわゆる気象現象(天気)が生じる。

III. 成層圏

対流圏の上には成層圏が広がり、その境界を圏界面(けんかいめん)という。成層圏の範囲はこの圏界面から高度約50kmまでの領域である。対流圏では高度をますにつれて気温が低下したが、圏界面を境に、成層圏では気温が上昇しはじめる。それは、成層圏にあるオゾン層のためである。圏界面より上にある成層圏の大気は暖まっているので、海から蒸発した水蒸気は成層圏に達することがない。なぜなら、水蒸気をはこんできた対流圏の大気は冷たく、密度が高いからである。成層圏は、水蒸気をほとんどふくまず、また紫外線を吸収するオゾンのおかげで気温も高く、きわめて穏やかな安定した状態をたもっている。そのため、長距離を航行する飛行機は成層圏まで上昇して飛行する。雲はなく、せいぜいひじょうにうすい夜光雲や真珠母雲がみられる程度である。成層圏には、大気中の全気体質量の19%がふくまれる。

IV. 中間圏

成層圏の上層にあたる中間圏は、高度が50~90kmの領域。高度が50km付近は太陽からの大量の紫外線によって酸素と窒素の気体分子が暖められるので気温は高いが(約0°C)、高度が高くなるにつれて大気の密度が低くなるため、気温はしだいに低下し、高度90km付近では-80°Cほどになる。中間圏の大気はひじょうにうすいが、隕石が突入するときには抵抗が生じるほどの密度はあるために、隕石は中間圏に突入すると燃焼し、夜空に赤々とかがやく尾をえがくことになる。

V. 熱圏

熱圏は中間圏の上層で、地上からの高度90~900km付近までの領域。熱圏の大気は中間圏よりもさらにうすいが、太陽からの熱をたっぷりとうけるため、気温は高さとともに上昇しつづける。中間圏との境界付近である高さ90km付近では-80°Cであった気温は、300km付近では800~900°C、600km付近では1000~2000°Cにまで上昇する。しかし、大気の質量がきわめて少ないので、実際に感じられる熱はほとんどない。

窒素や酸素などの気体分子の一部は、太陽放射中の紫外線やX線によって電子と陽イオンに分離している。このため、熱圏のなかにイオンの密度が高い部分が層状にいくつか存在しており、これを電離層という。また、そのため熱圏は電離圏ともよばれている。極地方で観察されるオーロラも、高度100km付近の熱圏下層部で発生する。

VI. 外気圏(外圏)

熱圏の外側は、なおも数万キロの高さまでごく希薄な大気がとりまいており、この範囲を外気圏(外圏)といい、地表の上空900kmあたりからはじまる。ここでは、大気は電離したガスからなり、宇宙空間にただよいでてしまう。この領域では、電離したガスに対して地球磁場が大きな影響力をもつことから磁気圏ともよばれている。また強力な放射線帯であるバンアレン帯もこの外気圏に存在する。→地球物理学の「大気現象」