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仮名
I. プロローグ

日本語の音節をあらわすための文字。平仮名と片仮名の2種類があるが、かつてそれらの成立以前に、漢字の意味を考えずに音だけを利用して日本語の音節をあらわしていた万葉仮名という文字もあった。日本で最初につかわれた文字は、中国からはいってきた漢字で、これをほんとうの文字という意味で「真名(まな)」とよんだのに対して、日本でつくられた文字のほうを仮りの文字という意味で「仮名」とよぶようになった。

II. 万葉仮名

万葉仮名は、漢字であらわすことのできない日本の地名や人名などの固有名詞を表記するために、音節文字としてのみ使用された漢字をいう。「許」を「こ」、「呂」を「ろ」とよむような、音読みの漢字をもちいた場合と、「戸」を「べ」、「手」を「て」とよむような、訓読みの漢字をもちいた場合の両方がある。万葉仮名の使用例は、5世紀ごろからの記録があるが、8世紀の「万葉集」でもちいられたことからこの名でよばれるようになった。

III. 平仮名

9世紀前後に、万葉仮名の草書体をさらに簡単にしてできあがったのが平仮名である。たとえば、「あ」は「安」、「い」は「以」、「う」は「宇」の草書体をもとにしてできている。平仮名は、物語や日記など、主として女性によって書かれた文章に使用されることが多かったため、「女手(おんなで)」ともよばれた。

成立当時の平仮名は、現代と同じように、1つの音節に1つの文字が対応するのが原則で、現在もちいられていない「ゐ」と「ゑ」をふくめて47種類であった。成立当時の文字の形も現代のものとほぼ同じだったが、書道が発達して文字の形の美しさがもとめられるようになるにつれて、それまでとはちがう漢字をもとにした平仮名も使用されるようになり、平仮名の種類がふえた。

基本の形とはことなった字形をもつ仮名を、変体仮名という。明治期になってから、変体仮名を整理して、現代のように統一された平仮名の字体があらためてもちいられるようになった。

IV. 片仮名

片仮名は、漢字の偏やつくりなど、一部だけをとってつくられた音節文字である。片仮名の「片」には、漢字よりも不完全な文字という意味があるものと考えられている。9世紀ごろから、漢文を訓読するための覚え書きとして、漢文の行間に万葉仮名で漢字の読み方などをしるすようになり、この万葉仮名の字画を省略してつくられたのが片仮名である。たとえば、「イ」は「伊」の偏を、「エ」は「江」のつくりを、「ナ」は「奈」の上の部分をとってつくられている。

平仮名とちがって、片仮名の字体は成立当初には統一がなかった。しかし、片仮名が一般にもちいられるようになるにつれて、字体がしだいに統一されるようになり、室町時代には現在とほぼ同じ形になった。

平仮名が文学性をもとめる文章にもちいられる文字だったのに対し、片仮名は漢文訓読などの実用性を中心においた文字であった。このため、平仮名における変体仮名のような多様な字体が発達せず、書道でうつくしい字体をもとめるということも、片仮名に関してはおこなわれなかった。文学作品でも、片仮名をつかって書かれているのは、「今昔物語」のような素朴な文体で書かれたものにかぎられる。

V. 濁音

万葉仮名では、[ki] [ta]のような清音と[gi] [da]のような濁音をことなった文字によってあらわしていたが、仮名の成立当時には、語句のわかち書きがおこなわれるようになっていたため、清音と濁音の区別を文字によってあらわさなくても語句の区別をすることが容易であった。このため、仮名にはもともとは清音と濁音の区別がなかった。

しかし、11世紀ごろから、語句の読み方を正確にあらわすために、濁音の片仮名に点をつけるようになった。これにならって、平仮名にも点をつけて清濁の区別をおこなうようになった。ただし、現代の「が」「だ」のような濁点の形と用法がきまったのは、明治になってからである。

いろは歌:五十音図:書:日本語