製鋼
印刷するには、[ファイル] メニューの [印刷] をクリックします。
製鋼
III. 平炉法

製鋼のむずかしさのひとつに、鋼の融点が約1400°Cと高いため、通常の燃料や炉材を使用できないことがある。この困難を克服するために開発されたのが平炉である。1856年に開発されて普及したが、日本では1960年代に姿をけした。

平炉は炉内の燃焼につかわれる燃料ガスと、空気を予熱する蓄熱法により、一定の高温で運転できる。蓄熱法では、炉から放出される燃焼ガスは、大量の煉瓦(れんが)をつみあげた一連の蓄熱室におくられ、もっている熱をほとんど煉瓦にあたえる。つづいて炉内の燃料気体の流れが逆転し、燃料と空気が蓄熱室をとおり煉瓦によって熱せられる。この方法により平炉を1650°Cの高温にすることも可能である。

1. 平炉の構造

平炉は、たとえば約6×10mの耐火煉瓦でつくられ、長方形で水平の炉床と約2.5mの高さの屋根でできている。炉床の前には一連の出入口があり、そこから炉床の前の燃焼室へ通じている。炉床と燃焼室全体は地上におかれ、炉床の下の空間は蓄熱室になっている。この規模の平炉では、11時間ごとに約100tの鋼を生産する。

2. 平炉の操業

平炉には、融解した状態か冷却した銑鉄、屑鉄(くずてつ)のほかに、酸素を補給するため鉄鉱石を混合して装入する。これに溶剤(フラックス)として石灰石(石灰岩)、鋼滓(こうさい:スラグ)をながれやすくするため蛍石がくわえられる。装入する原料の割合には大きな差があるが、標準的な混合物の例では、屑鉄57t(トン)、冷却銑鉄11t、溶解した銑鉄45t、石灰石11t、鉄鉱石0.9t、蛍石0.2tなどである。炉に原料が入ると、燃料ガスに点火し、蓄熱のために、技師が炎の方向を逆転させ、炎を炉床の上で前後させる。

3. 平炉の作用

平炉の機能は、酸化によって原料の炭素含有量をへらし、石灰石と反応してスラグを生成するケイ素、リン、マンガン、硫黄のような不純物を除去することにある。このような反応は、炉内の金属が融点に達しているときにおこる。融解した金属の炭素含有量が目標値に達するまで、炉内の温度は数時間にわたって1540~1650°Cに維持される。

4. 平炉での成分調整

かつては熟練した平炉技師が、溶鋼の状態を観察して、ほぼ正確に炭素含有量を判断していたが、正確に溶鋼の成分を判定するには、炉から少量の金属をとりだし、冷却して物理的検査や化学分析にかける。

溶鋼の炭素含有量が目標値に達すると、炉の後方に出鋼口をあける。溶鋼は短い導管から、炉の下方にすえられた大きな取鍋(とりべ、または、とりなべ)へとながれる。この取鍋から鋳鉄製の鋳型に注入され、長さが約1.5m、断面が50cm角程度の鋼塊になる。鋼塊は、鉄鋼製品の原料となるが、造塊工程をへずに連続して鋼を製造する連続鋳造法が普及している。

5. 反射炉

反射炉は、平炉の1種で、耐火煉瓦でつくられた溶解と精錬用の炉。初期のものは、浅く広い炉床の上にアーチ型の天井がある。高温の燃焼ガスと空気を炉の端からふきこんで燃焼させ、天井からの輻射熱(ふくしゃねつ)と火炎の熱で材料を溶解する。鋼の生産のほか銅などの精錬にもつかわれる。

幕末期には、おもに大砲製造用に各地に反射炉が建設された。伊豆韮山(伊豆の国市)の代官江川太郎左衛門が建設にあたったもの、大島高任が水戸藩などで製作したものなどは有名である。