| 検索ビュー | 核融合 | 項目ビュー |
| I. | プロローグ |
質量数の小さい(軽い)2つの原子核を衝突・融合させて、より質量の大きい(重い)原子核をつくりだすこと。原子核どうしを衝突させて、原子核を融合すると、理論的には、1回の核融合につき、100万電子ボルト(MeV:電子ボルト)のエネルギーが放出される。これは通常の化学反応における原子1個当たりが放出するエネルギーの約100万倍にあたる。核融合はよく「地上の太陽」とよばれている。太陽などの星でおきている核融合を地上でおこして、その際に放出されるエネルギーを発電に利用しようというのが、核融合発電である。
| II. | 核融合反応 |
核融合反応としては、質量の小さい水素の同位体である重水素(ジュウテリウム、²HまたはD)と三重水素(トリチウム、³HまたはT)を融合させて4He(ヘリウム4:→ ヘリウム)と中性子(n)をつくるDT反応が、低い温度(最大7億°C)で反応するため比較的容易で、とりだせるエネルギーも大きいとして、もっとも有力視されている。
D + T → 4He + n + 17.8 MeV
ほかに、重水素どうしから ³He(ヘリウム3)と中性子、あるいはトリチウムと陽子(p)をつくるDD反応や、重水素と ³Heから 4Heと陽子をつくるD-³He反応があるが、これらの場合、トリチウムという放射性物質の取り扱いがむずかしく、中性子の発生がさけられない(D-³He反応でも、DD反応が同時におこるため、中性子が発生する)。
D + D → ³He + n + 3.27 MeV
D + D → T + p + 4.03 MeV
この2つの反応は、ほぼ同じ確率でおこる。そして、生成された³HeとTとが反応する。
D + ³He → 4He + p + 18.4 MeV
D + T → 4He + n + 17.8 MeV
中性子が発生せずに放射性物質の関与しない核融合としては、陽子と11B(→ ホウ素)から 4Heを3つつくるP-B反応などがあるものの、反応率が最大となる温度が25億°Cと高く、実現性は低い。
p + 11B → 3 (4He) + 8.68 MeV
| III. | 臨界プラズマ条件と自己点火条件 |
核融合を実現するには、プラズマとよばれる状態を1秒間以上にわたり保持することが必要となる。プラズマとは、原子核とその周りをまわっている電子がばらばらになってとびまわる状態をいう。原子核はプラスの電気をもっているので、原子核どうしがたがいに反発しあって融合してくれない。そこで、原子核がはげしくうごき、反発する力をふりきって衝突するように、数千度以上の超高温でプラズマ状態をつくりだすのである。
核融合で生じたエネルギーの一部は、プラズマ粒子の拡散やアルファ線、ベータ線などの放射線(→ 放射能)として外部ににげだすために損失分となる。したがって、プラズマ状態を持続させるためには、この損失分とつりあうエネルギーを外部から注入しなくてはならない。こうした外部からのエネルギー注入により核融合反応を維持できる条件のことを臨界プラズマ条件(ローソン条件とも)という。さらに、外部からの注入エネルギーがなくても核融合反応を持続することができるようになる条件のことを自己点火条件とよんでいる。→核エネルギーの「原子核融合」
| IV. | 核融合実験の現状 |
核融合発電は、まだ実験炉以前の段階で、実験装置のいくつかで臨界プラズマ条件を達成したにすぎない。現在、核融合を実現するのに使用されている実験装置は、磁場閉じ込め方式と慣性閉じ込め方式の2種類に分類される。
磁場閉じ込め方式は、さらにドーナツ型の磁場(→ 磁界)をつくるトーラス磁場方式(トカマク型、ヘリカル型、逆磁場ピンチ型)と直線型の磁場をつくるミラー磁場方式とに分類される。そして、数千度以上のプラズマを閉じ込めることができる容器は存在しないので、磁場閉じ込め方式では強い磁場を利用して真空の中に閉じ込めている。一方の慣性閉じ込め方式では、強力なレーザーを照射して燃料を瞬間的に加熱し、表面に発生するプラズマの膨張の反作用により中心部を圧縮する。
トカマク型は1950年代に旧ソ連のクルチャトフ研究所で開発され、以後の実験装置の主流となっている。イギリスにはEU(ヨーロッパ連合)9カ国が共同開発をすすめるJET(Joint European Torus)があり、83年から実験を開始している。日本では茨城県那珂町(現、那珂市)にある日本原子力研究所(現、日本原子力研究開発機構)のJT-60が85年(昭和60)に完成し、89~91年(平成元~3)には性能を大幅に向上させる改造(JT-60U)がおこなわれた。98年6月に、プラズマ温度1.9億°C、閉じ込め時間1.1秒という臨界プラズマ条件を達成している(重水素だけの実験で、半分をトリチウムと想定しての解析値)。ほかにも九州大学のTRIAM-1Mなどがある。
ヘリカル型は1950年代初頭にアメリカのプリンストン大学で研究がはじめられ、日本では岐阜県土岐市にある大学共同利用機関法人・自然科学研究機構(NINS:National Institutes of Natural Sciences)の核融合科学研究所(NIFS:National Institute for Fusion Science)に大型ヘリカル装置LHD(Large Helical Device)などがある。ミラー磁場方式は、70年代末に開発された改良型のタンデムミラー(複合ミラー)方式が主流となっていて、日本では筑波大学プラズマ研究センターのGAMMA10などがある。慣性閉じ込め方式(レーザー核融合)は、日本には大阪大学レーザーエネルギー学研究センターの激光XII号や独立行政法人・産業技術総合研究所のSuper-ASHURAがある。
| V. | ITER(国際熱核融合実験炉) |
実験炉としては、アメリカ・ロシア・EU(ヨーロッパ連合)・日本・中国・韓国の共同開発による国際熱核融合実験炉ITER(イーターと読む)が、2005年6月にEUがおすフランス南部のカダラッシュに建設することが決定した。ITERは、核融合炉を実際に発電に利用することが可能かを検討するための実験炉である。15年までに施設を完成させたのち、約20年間の実験・研究を予定している。総事業費は1兆3000億円、実験炉本体の運営費をふくむ建設費は約5700億円がみこまれ、EUが50%、ほかの5カ国が各10%負担することになっている。
日本政府は2002年(平成14)6月、青森県六ヶ所村への誘致を表明して、カダラッシュとあらそっていたが、EUにゆずるかたちで決着した。そして、日本はその見返りとして、関連施設を国内に建設する権利や、研究チームのトップをえらべる権利などをえた。
一方で、このITER建設には多額の投資が必要となるため、文部科学省では2003年1月、各大学や研究所などが独自におこなってきた核融合研究の拠点をJT-60U、LHD、激光XII号に集約し、ほかの施設は数年後をめどに廃止することをきめている。
| VI. | 核融合はクリーンか |
核融合は原子力発電とくらべて「クリーン」だといわれることがある。大きな事故(原子力事故)のときに出てくる放射能で比較すれば、原子力発電より少ないことは確かである。ただし、日常的な放射能漏れは、原子力発電をうわまわることが懸念されている。
原子力発電では、放射能の多くは、いちおうは燃料棒の中に閉じこめられている。ところが、核融合炉では、半減期が12年の放射性物質である燃料のトリチウムが「裸」の状態で炉心に注入され、装置内のいたるところを気体や液体のかたちでうごきまわっている。そのため、放射能により汚染された機器などの放射性廃棄物も、原子力発電よりさらに多量に発生することになるのである。