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| IV. | イデア界の否定 |
けれどもアリストテレスによれば、このイデア説は、本来切りはなすことができない形相と質料を切りはなして考えた結果でてきたものである。つまり形相が質料とむすびつかなくても存在できるとするところに、プラトンの間違いがある。
アリストテレスによれば、椅子の形相とはあくまでも個々の椅子の中にあって、その椅子を椅子たらしめているものである。つまり個物としてのこの椅子は、椅子であるという本性を(イデア界にではなく)自分自身の中にもっているのである。
こうしてアリストテレスは、プラトンのイデア説の趣旨を生かしながら、同時に、現実の世界の外にあるイデア界のようなものを否定しようとした。
けれどもここにやっかいな問題がでてくる。たとえばこの椅子ができあがるまでの間、「椅子」という形相はどこにあったのか。さしあたりは大工の頭の中にあったのだが、彼がはじめてそんなアイデアを考えついたわけではない。すると大工が考える前は「椅子」はどこにあったのか。純粋な姿でイデア界にあったといったのでは、またプラトンに逆戻りする。