茶事
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茶事
III. 炉・正午の茶事

先にのべたように、もっとも正式で、茶事の基準となるのは「炉・正午の茶事」である。以下、この茶事の流れを紹介する。

亭主は書状で客に茶事の案内をする。日時、茶会の主旨、また当日の連客などをつたえる。茶会の前日には客の代表が亭主をたずね、あらかじめ茶会の礼をのべ、客の数などをつたえる「前礼(ぜんれい)」もおこなわれる。茶会の当日、亭主は露地・茶室をきよめ、諸道具の用意につとめる。

1. 客の入来

あつまった客は「寄付(よりつき)」とよばれる場所で、亭主の案内をまつ。案内をうけた客は外露地へ出て、庭中で亭主の「迎え付け」をまつ。

1.A. 迎え付け

亭主は露地の中ほど、「中門」の戸をあけ、蹲(つくば)って客に対し言葉なしに一礼する。客は正客(しょうきゃく)を先頭に「中門」の方へすすみ出て、蹲い、亭主の礼をだまってうける。これが「迎え付け」である。亭主は「中門」を少しあけたまま(どうぞ入ってくださいとのしるし)茶席へもどる。客はいったん外腰掛へもどり、しばらくして正客から順次「中門」をとおって茶席へすすむ。

2. 初座(しょざ)

客は茶席近くの蹲踞(つくばい:石の手水鉢)で手と口をきよめ、躙口(にじりぐち)から茶席に入る。床の間にかけられた掛物を拝見し、炉の近くによって釜(かま)や炉縁・炉中を拝見し、正客は床の間に近い座を占め、次客以下も座をさだめる。

2.A. 席入り

客が拝見をおわって着座すると、やがて亭主は茶席に出て、茶事の初めの挨拶(あいさつ)をする。この時はじめて亭主と客は言葉をかわす。

2.B. 炭点前(すみてまえ)

「炉・正午の茶事」ではまず、炉の炭をつぐ。湯がわくように炭をくみ、香を炉に焚(た)く。客が香合の拝見をおわると、亭主は茶の料理、懐石を客にもてなす。

2.C. 懐石

亭主は膳(ぜん)を客にすすめる。膳にははじめ、向付(むこうづけ:前菜)、飯椀(めしわん:飯を少量)、汁椀(味噌汁:みそしる)、スギの箸(はし)がのせられている。亭主は席中へ出て、まず客の盃に酒を少しすすめる。つづいて煮物(汁をはって、中に魚・鳥の料理をいれたもの)、焼き物(魚を焼いたもの)などを出し、いったん亭主はしりぞく。客だけで料理をたのしむこの時間を「亭主の相伴(しょうばん)」とよぶ。当日の料理を亭主も味見する時間といえよう。食事をおわると亭主は吸物(少量のすまし汁)をすすめ、その後主客の間で盃のとりかわしをおこなう「八寸」(海と山の2種の肴(さかな)をもったもの)の時間となる。八寸と酒をもちだした亭主は客に酒をすすめ、客からも亭主に酒をすすめて、主客の対話がつづく。最後に客はすべての食器を懐紙できよめてふき、客一同そろって箸を膳におとすことで音をたて、食事のおわったことを知らせる。亭主は膳をひく。

2.D. 菓子

亭主は菓子器に菓子をいれて、客にすすめる。亭主は客に対し、菓子を食べおわったら、露地の内腰掛にしばらく出ることを乞(こ)う。

2.E. 中立ち

客が庭の腰掛にて(あるいは別の部屋へうつって)やすむ間に、亭主は茶席をはききよめ、濃茶の用意をする。この中休みを、中立ちとよんでいる。客が席入りして中立ちをするまでの茶事の前半を「初座」とよぶ。

3. 後座(ござ)

内腰掛で中立ちしていた客は、亭主のならす銅鑼(どら)の音を合図に再び席入りする。この中立ちから茶事のおわりまでを「後座」という。

3.A. 濃茶点前

後座の濃茶の席では、掛物をとりはずし、床正面の壁に花入をかけて花を生ける。窓の簾をはずしたり、突上窓(つきあげまど)を高く開けて、茶席の中を明るくして、亭主は濃茶の点前をすすめる。

3.B. 濃茶

客は濃茶をいただく。一碗(いちわん)をのみまわすこの濃茶が茶事の第一の目的である。亭主は濃茶をおいしくさしあげるために炭点前や懐石をもてなす。濃茶の場は主客とも、あらたまった心持ちでのぞむ。

3.C. 拝見

濃茶でもちいた茶入や茶杓(ちゃしゃく)、茶入の袋などを拝見する。その後、釜の煮えも弱くなるので、2度目の炭点前をして炉の火をなおす。後炭(ごずみ)という。

3.D. 薄茶

釜の煮えをまちつつ、亭主は煙草盆、干菓子(和菓子)など客にすすめ、薄茶がはじめられる。薄茶をいただいた後、道具拝見につづき、当日の道具の箱書付なども拝見する。この薄茶の部分は、四季を通じてどの茶事においても最後の段階におこなわれ、主客の間のしたしみあるくつろいだ雰囲気のひと時をすごして茶事はおわる。

3.E. 亭主見送り、退出

正客は頃を見はからって亭主に茶事の礼をのべ、茶席を退出する。亭主はくぐりの戸をあけて、見送りをする。客もくぐりの近くにまっていて、亭主の見送りに礼をかえし、露地をもどって帰途につく。