| 検索ビュー | オセアニア神話 | 項目ビュー |
| I. | プロローグ |
オセアニアは、オーストラリア、ポリネシア、ミクロネシア、メラネシアの4つの地域からなりたっている。オーストラリアは18世紀にヨーロッパ人が到着するまで、長く孤立した文化を保持しており、ポリネシアは人々の移動が比較的新しいうえに外部との接触が少なく、均質の文化をもっている。メラネシアのニューギニアの一部とミクロネシアの孤立した島々では、現在も神話が息づき、社会を形づくる重要な力となっている。
オセアニアの全域には、死体が人間に役だつ作物をもたらす物語が広がっている。美少女ハイヌウェレの遺体からたくさんの食用植物が生まれたという、東部インドネシアのセラム島にすむ民族ウェマーレの神話から名づけられた「ハイヌウェレ神話」のモチーフが各地にみられる。
なお、スサノオノミコトに殺され、その遺体の各部からカイコやイネ、アワ、アズキ、ムギ、ダイズなどの作物が生まれたオオゲツヒメノカミのほか、ウケモチノカミ(保食神)、ワクムスヒ(稚産霊)など、同じ太平洋に面した日本の神話にも体内に作物をやどしている神がいる。
| II. | オーストラリアの神話 |
とべない鳥や有袋類、卵からかえる哺乳類など、他地域とはちがう特有の動物たちが生息する世界最小の大陸オーストラリア。この大陸で農耕や冶金(やきん)や土器や文字などと無関係にくらしてきた先住民族アボリジニにも、特有の神話が伝承されてきた。
| 1. | 夢の時代 |
アボリジニの伝承には、「夢の時代」を意味するアルケラとよばれる原初の時代が設定されているが、これはたんに神話としてのみならず、現実生活の指標にもなっている。この「夢の時代」に、大地でねむっている祖先の霊たちがたちあがって、景観や人間をつくり、生存のための術(すべ)を伝授した。そして、仕事がおわると霊たちは、また眠りについていったのだった。
| 2. | 死の起源 |
口承伝承のほか、岩面や樹皮などにえがかれてもいる無文字文明のアボリジニの神話は、オーストラリア生まれのK.ラングロ・パーカーが収集し、1896年にロンドンで出版された「オーストラリアの伝説」などに紹介されている。これらの神話の中では、超然とした万物の父バイアーメをはじめ、翼のない鳥エミューや有袋類などの動物たちが活躍している。
その中のひとつに、死の起源をつたえる神話がある。大地をあるいていたバイアーメは、赤い地面から2人の男と1人の女をつくり、生きるために食べるべき草木をおしえた。やがて干ばつがくると、男のひとりはカンガルーネズミを殺して、その肉を女と食べた。もうひとりの男は、うえていたのに肉を食べず、太陽のしずむ方向へむかってあるきだした。食事をおえた男女が彼の後をおったが、男は白いユーカリの木の下で息たえていた。
すると、男の横にもえるような大きな目をもった黒い像があらわれ、木をもちあげると、そこに開いた穴に男をおとした。つづいて、おそろしい雷鳴がとどろき、ユーカリの木は南の空にむかって叫び声をあげながらとんでいった。木は銀河の付近までとんで根をおろすと、きえていった。そしてそのあとには、死の精霊ヨーウィーと死ぬべき最初の人間の目がひかっていた。
万物は、この世に死がやってきたことを、そのとき知った。以来、南十字星は白いユーカリの木のある所であるとされ、人々はこの星座をあおぐたびに死の起源を思いだすのだった。
| III. | ポリネシアの神話 |
ポリネシアは、ニュージーランドからハワイとイースター島にむかって三角形に広がる広大な文化領域である。このような広い地域において時間や距離のうえで島々が孤立していても、ポリネシア神話には類似したテーマが多いのが特徴といえる。
| 1. | タンガロアの天地創造 |
中部および西部ポリネシアにつたえられる神話の天地開闢(かいびゃく)は、創造神タンガロアによる。空も土もない、ただの空間を行き来していたタンガロアがたった所に、突然、岩が生えてきた。彼が破裂しろと命令すると、中から神々が生まれてきた。さらに大地と海が生まれ、真水ができた。岩にかたりかけると天が生まれ、話しかけると、男の子と女の子、そして精神や情緒、意志が生まれた。岩に命じて人間の中に精神や情緒などをいれ、天地を分離させてたくさんの島をつくった。
タンガロアは、サモア諸島ではタンガロとよばれている。天空から海上にうかぶ石をみつけたタガロアは、それを天上にひきあげ、人間の形にして生命をふきこみ、妻をめとらせた。やがて、彼らから1羽の鳥が生まれ、下界にはなされた。鳥が下界には日陰がないといったので、神はつる草をなげおろしてやった。草は日陰をつくったが、その後、神がおこってウジ虫をなげおろしたため、草は虫に食べつくされ、やがて、虫から人間が生まれた。
| 2. | 文化英雄マウイ |
ポリネシアの文化英雄(人間に文明をもたらす超人的存在)マウイは、オセアニア全域にわたって物語にあらわれ、どこの特定の島にも所属せずに、呪術をつかって神々を翻弄(ほんろう)するトリックスターでもある。
| 3. | ニュージーランドの先住民族 |
マオリの神話では、マウイは釣り針で海の底から島をひきあげてポリネシアの島々をつくった。このほか、人々が食料を生で食べていたので、料理の時間をつくるために太陽を罠(わな)でとらえて運行をおそくしたり、もっと畑仕事に時間がさけるようにと太陽をつりあげたりした。また、人間のために地下の国の火の番人から火をうばいとった。
つづいて、人間に不死をもたらそうと、夜の女神のところにでむき、ねむっているおそろしい女神の体の中にはいって口からでてこようとした。ところが、同行した森の小鳥たちが、女神の体にはいりこもうとするマウイのこっけいな姿をみて思わずふきだしてしまったため、女神は目をさまし、マウイはおしつぶされて死んでしまう。以来、人間はみな死ぬことになったという。→ ポリネシア人
| IV. | ミクロネシアの神話 |
北西太平洋に散在する小さな島々からなる、オセアニア北部の文化領域ミクロネシアの神話は、ポリネシアとメラネシアとの両方の影響がみられる。
ミクロネシア東方のキリバスの伝説の創造神は、年老いたクモで、シャコ貝から天と地をつくったとされる。また、メラネシアに広く分布する「兄弟争い」の話はカロリン諸島で人気があり、メラネシアでは鳥を主人公にした「羽衣伝説」のモチーフも、魚やイルカを主人公にして広く知れわたっている。
| 1. | 羽衣伝説 |
人間界にあそびにきた天女が水浴をしていると、人間の男が衣をかくしてしまい、そのために天界にかえれなくなった天女は人間と結婚する。こうしたいわゆる「羽衣伝説」は、世界に広く分布し、インドの「リグ・ベーダ」(→ ベーダ)や中国の「捜神記(そうじんき)」、アラビア文学の「アラビアン・ナイト」などにも散見する。
ミクロネシアのウリティ島の神話では、天女は海からきたネズミイルカの少女2人になる。2人は人間の男たちの踊りをみるために夜ごとに尾びれをぬぎすてて岸辺にやってくるが、4日目の夜、1人の少女はある男に尾びれをぬすまれてしまう。海にもどれなくなった少女は尾びれをかくした男と結婚し、2人の子供をもうけた。ところがある日、包みをみつけ、そこに自分の尾びれを発見する。地上にのこす子供たちに、絶対にネズミイルカの肉を食べないようにつげて、女は海にもどっていく。→ ミクロネシア人
| V. | メラネシアの神話 |
オーストラリア、ポリネシア、ミクロネシアの3つの地域にかこまれている文化領域のメラネシアは、700をこえる言語のあるパプア系諸語を話す人々とオーストロネシア語族の言語を話す人々にわかれる。ポリネシアやミクロネシアは天地開闢の神話が発達しているが、メラネシアでは、宇宙の存在を前提とし、のちの展開をかたる場合が多く、とくにパプア系諸族には宇宙創世の神話はみられない。また、太陽などの宇宙的存在は人格化されている。
ニューギニアなどには、人間の起源として土中の穴から出現したという神話も広く分布している。そして、ヘビが重要な役割を占め、人間もかつてはヘビのように脱皮して、若返りをつづけて死ぬことがなかったとされた。また、女を妊娠させたヘビをその息子が毒殺したところ、目からココヤシが生えてきて、作物の起源をなしたという物語もあるように、ヘビは神や親族としてしたしまれている。
| 1. | 兄弟争い |
メラネシア神話の中心的な特徴は、仲のわるい兄弟の神話が広く分布していることである。兄弟のうちのどちらかが力や知恵にたけていて、この能力の差が物語を生んでいく。
ニューギニアの民族メケオの神話では、一方が果物、他方が肉だけを主食にしていた兄弟が登場する。あるとき、果物を主食にしていたほうは、もうひとりが丘にかくされた入り口からはいって有袋類のワラビー(→ カンガルー)とニワトリをもってきたのをのぞき見する。そこで自分もまねしてみるが、不器用なために動物をみなにがしてしまう。そこで兄弟はけんかをはじめるが、妻たちが仲介し、鬼退治におくりだすという話になる。
また、オーストロネシア語を話す人々の神話では、一方が他方の妻と姦通(かんつう)したり、陰部に入れ墨をしたりすることから、殺しあうといったような事態におちいり、別離する展開がよくみられる。
こうした兄弟争いの神話も、日本神話の海幸彦と山幸彦と共通性がある。→ メラネシア人
→ オセアニア美術