| ダイオキシン汚染 | 項目ビュー | ||||
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| IV. | ダイオキシンの関連事故と汚染 |
過去の大きなダイオキシン汚染は、この物質のもつ強い毒性をありありとしめしている。ベトナム戦争では1965~70年に、アメリカ軍が「枯れ葉作戦」をおこなって大量に除草剤を散布した。この除草剤には、ダイオキシンが不純物としてふくまれており、除草剤が散布されたベトナムやカンボジアの地域住民にその後、神経障害や流産、子供の先天性異常が多発した。この除草剤は総計で6700万リットルもまかれ、その中に2,4,5-トリクロロフェノキシ酢酸(2,4,5-T)と2,4-ジクロロフェノキシ酢酸(2,4-D)をくみあわせたオレンジ剤とよばれるものが4030万リットルふくまれていた。このオレンジ剤は、もっとも毒性の強い2,3,7,8-TCDDに換算して約170kgものダイオキシンをふくんでいた。
1976年には、イタリア北部のセベソの農薬工場で大爆発事故があり、ダイオキシンをふくむ有毒ガスが噴出し、その後、長期にわたって周辺住民の間で健康被害が多発した。そのため、イタリア政府は汚染された地域の居住を10年間にわたり禁止した。
1978年には、アメリカ合衆国ナイアガラフォールズ市ラブキャナル地区で、大手化学薬品会社が以前投棄した廃棄物を原因とする地下水・土壌汚染事件が明らかとなった。住宅街や学校の校庭がダイオキシン類やPCBなどによって汚染され、付近住民に死産や流産などの大規模な健康被害が生じた。学校は閉鎖され、多くの住民が強制的に退去させられた。
1982年には、アメリカ合衆国のミズーリ州で、ダイオキシン類をふくんだ土壌汚染が判明した。71年に農薬工場の廃棄物(TCDDが混入した廃油)を散布したことが原因で、ここでも連邦政府が町ぐるみ買収し、住民が移住する事態となった。
| 1. | 日本におけるダイオキシン汚染 |
1968年(昭和43年)に九州を中心に発生した「カネミ油症事件」は、当初はカネクロールというPCBが原因とみられていたが、その後の調査により本当の原因物質は、約8~9割がダイベゾフラン、残りがCo-PCBと、いずれもダイオキシン類によるものと判明した。この事件をおこしたカネミ倉庫会社は、米ぬか油(ライスオイル)の製造工程で、脱臭のためにPCBをながしたパイプを油の中にとおしていた。このパイプに穴が開き、PCBが混入したことが原因であった。この油を利用した人々には皮膚炎や発疹(ほっしん)、顔面や足に腫(は)れが生じた。また中毒患者の母親が黒ずんだ赤ちゃんを死産するといったことがおきた。
1997年(平成9年)には大阪府能勢町にあった「豊能郡美化センター」から国内では最悪の高濃度ダイオキシンが検出された。施設内の土壌には1g当たり5万2000ng(ナノグラム:10億分の1g)、焼却灰から13万ngという濃度は、セベソの爆発事故でイタリア政府が居住禁止をきめた量よりもはるかに高い数値であった。また同焼却場で従事していた作業員の血液中からも高濃度のダイオキシンが検出され、大きな問題となった。また香川県の豊島(てしま)など、各地で産業廃棄物や廃棄物焼却で発生したダイオキシンによる汚染の実態が明らかになった。
1999年に国連環境計画(UNEP)は、95年における世界各国の大気中へのポリ塩化ジベンゾ-パラ-ジオキシン(PCDD)とポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)の排出量を公表した。それによると日本は3981gTEQ/年(TEQ:Toxic Equivalent 2,3,7,8-TCDD毒性換算量)と、世界で最悪の数値であった。また同年に第一薬科大学のグループが日本沿岸や太平洋で捕獲されたクジラを調査したところ、クジラの脂身から高濃度のダイオキシン類が検出された。
2000年12月に、環境庁(現、環境省)が全国の河川および湖沼や海域の39カ所で調査したところ、川崎港(神奈川県川崎市)と水島沖(岡山県)、洞海湾(福岡県北九州市)の海底の泥の中から1g当たり1.2~2.3pg(ピコグラム:1兆分の1g)の臭素化ダイオキシンがはじめて検出された。臭素化ダイオキシンとは構造や毒性がダイオキシン類と似た性質をもつ化学物質で、家電製品や繊維製品などの難燃剤が発生源とみられている。
2001年1月から3月に実施された東京都の調査では大田区の駐車場や区道から1g当たり57万pg(当時の規制値は1000pg以内)という全国一高濃度のダイオキシンが検出された。同年5月に発表された農林水産省の調査結果(調査は2000年10月に実施)では、東京湾や大阪湾の魚類も高濃度のダイオキシンで汚染されていることがわかった。
2001年12月、環境省は「ダイオキシン類対策特別措置法」にもとづく初のダイオキシン類全国調査(平成12年度)結果を発表した。それによると大気では全国961地点(夏と冬の2回以上調査したのは920カ所)の調査地点中で10地点が環境基準をこえていた。また川や海、湖など公共用水域の水質でも全国2116の調査地点中83地点が水質基準をこえていたが、地下水質は全国1479地点すべての個所で水質基準をクリアした。公共用水域底質では全国1836地点すべてが環境基準をクリアしたが、1999年度の調査よりも平均値は上昇していた。土壌は3031地点中で1地点のみが環境基準をこえていた。