| ダイオキシン汚染 | 項目ビュー | ||||
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| II. | 人体への影響 |
厚生労働省の調査によれば、ダイオキシン類のほとんどは食物からの摂取によるもので、そのほかは呼吸によって大気からすいこんだり、手についた土から人体に入っている。食物からの内訳は、魚介類が8割以上と多く、つづいて肉・卵が約1割、残りが乳製品、穀物、イモ、有色野菜そのほかとなっている。ふつうの食生活で1日に摂取するダイオキシン類の推定量は、平均すれば体重1kg当たり約1pg(ピコグラム:1兆分の1g)で減少傾向にあり、耐容1日摂取量(TDI)の4pgより少なく健康に影響はないとしている。くわしくは、後述の「日本におけるダイオキシンへの対策」以降を参照してほしい。ただし、環境省による個人単位の調査では、TDIをこえる量のダイオキシンを摂取している場合もあり、たくさんの種類の食品をバランスよく食べることをすすめている。
体内にとりこまれたダイオキシン類は、ヒトの場合はおもに肝臓と脂肪組織に蓄積される。またダイオキシン類は体内からの消失速度がおそく、消失半減期はおよそ7年といわれている。その結果、ヒトの体内でのダイオキシン類の濃度は年齢とともに増加する傾向がみられる(→ 生物濃縮)。近年、ダイオキシン類の微量曝露(ばくろ)による慢性毒性的(発癌性(はつがんせい)、生殖発生毒性、免疫毒性等)影響については動物実験などにより明らかになってきた。
ダイオキシン類の中で、もっとも毒性、発癌性、胎児に対する催奇形性が強いのは、2,3,7,8-テトラクロロ(四塩化)ジベンゾダイオキシン(TCDD)である。この化合物は猛毒で、高濃度での動物実験からその急性毒性はシアン化カリウム(青酸カリ)の1万倍以上ともいわれる。ちなみに致死量はヒトで、体重1kgに対して10µg(マイクログラム:100万分の1g)といわれている。発癌性もあり、免疫系や中枢神経にも重大な影響をもたらす可能性が指摘されている。
また、ダイオキシン類は人体内にとりこまれるとホルモンに似た作用をおこし、免疫系や肝臓、甲状腺機能の低下をまねき、女性・男性ホルモンと中枢神経系などに重大な障害をもたらすことも指摘されている。こうした「環境ホルモン」とよばれる化学物質には、DDT(ジクロロジフェニルトリクロロエタン:→ DDT汚染)やPCBなどが知られている。
とりわけ深刻なのは胎児や乳児への影響で、とくに乳児は母乳を通じて蓄積される。それは血液中のダイオキシン類が母乳中の脂肪にとけこみ濃縮されるためで、高齢出産の場合ほどダイオキシン濃度が高いといわれている。1999年8月、厚生省(現、厚生労働省)の研究班が98年度の全国21地域における「母乳中のダイオキシン類に関する調査」の結果を発表した。調査は出産後30日目の母乳にふくまれるダイオキシン類濃度に関するもので、母乳100g当たりの全国平均は86.3pgで、乳児の1日当たりの摂取量は体重1kg当たり103.65pgに達していた。この結果を厚生省では、母乳の摂取期間は長くないため「安全に問題はない」と結論づけ、母乳保育のさまざまな長所から母乳保育を推奨している。