| 検索ビュー | SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル) | 項目ビュー |
| I. | プロローグ |
潜水艦発射弾道ミサイルのことで、戦略爆撃機、ICBM(大陸間弾道弾)とならぶ戦略核兵器の三本柱のひとつ。このうち爆撃機は対空兵器の発達により、撃墜(げきつい)されやすくなり、ICBMも発射基地の所在地が把握されてしまっている。これに対して潜水艦は海中を行動するために探知されにくく、SLBMは戦略核兵器の中でもっとも重要なものといえる。
なお、SLBMを搭載した原子力潜水艦は弾道ミサイル原子力潜水艦または戦略原子力潜水艦(戦略原潜)とよばれる。
| II. | SLBMの構造 |
SLBMは原子力潜水艦の船体内に垂直に装備されたミサイル発射筒から発射される。せまい船体内でとりあつかうことからおもに固体燃料ロケット(→ ロケット)がつかわれているが、ソ連では液体燃料ロケットも使用されていた。潜水艦につみこむために、ミサイル本体はICBMなどにくらべて、太く短いズングリした形状をしている。ロケットは1段式で頭部に核弾頭を搭載している。
SLBMの発射は、ごく初期のソ連潜水艦では浮上してから発射する水上発射方式がとられたが、一般的に、水中発射方式が採用されている。発射筒からうちだされたSLBMは、水上でロケットに点火して飛行する。SLBMの射程は初期のポラリスでは2200kmだったが、現在使用されているトライデントでは1万1000kmと大きく延長されている。初期のSLBMはミサイル1基につき1個の単弾頭であったが、現在では複数個の弾頭を搭載する個別誘導複数弾頭(→ ICBMの「MIRV」)が実用化されている。
| III. | SLBMの歴史 |
潜水艦から弾道弾を発射することは、第2次世界大戦中のドイツで最初にこころみられた。これは世界最初の実用弾道弾V-2号をコンテナにつみこんで、Uボートでアメリカ沿岸まで曳航(えいこう)し、ニューヨークなどの大都市を攻撃しようというものであった。しかし、実験はされたものの実用化する前に終戦となった。
| 1. | 弾道ミサイル原子力潜水艦の登場 |
アメリカ最初の弾道ミサイル原子力潜水艦ジョージ・ワシントンは1959年に完成した。この潜水艦は、57年のソ連の人工衛星の成功に刺激されていそいで建造されたもので、建造中の攻撃型原子力潜水艦の船体を切断してミサイル区画をはさみこんだものであった。搭載されたミサイルはポラリスA-1型で800ktの核弾頭1個を装備し、2200kmの射程をもっていた。
これに対してソ連は1956~59年に就役したズールーV型潜水艦に射程約1200kmのSS-N-4を搭載していたが、アメリカのSLBMに対抗することはできなかった。ソ連の本格的なSLBMは70年代に実用化され、ヤンキー級に搭載されたSS-N-6からで、SS-N-6は1メガトンの核弾頭1個を装備し2400kmの射程をもっていた。
| 2. | SLBMの発達 |
その後、米ソ両国は冷戦の中、SLBMと搭載潜水艦の発展強化をおこなっていった。アメリカはポラリスの改良型からポセイドン、トライデントへとすすみ、潜水艦もラファイエット級、オハイオ級へと大型化していった。現在オハイオ級には最新型のトライデントミサイル24発が搭載されている。
一方ソ連はSS-N-8、17、18、20と発展進化し、現在、世界最大の弾道ミサイル原子力潜水艦タイフーン級は、射程8300kmのSS-N-20を20発搭載している。また、イギリスはアメリカの技術供与をうけてSLBMを導入し、フランスと中国は独自の開発によってSLBMを実用化している。
SLBMは位置が移動する潜水艦から発射するため、命中精度の点でICBMにおとっていた。しかし最近では、天体観測や人工衛星を利用したりして、命中精度の向上がはかられている。