サーンチー
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サーンチー
II. 第1ストゥーパ

遺跡群の中央にある第1ストゥーパは、アショーカ王時代に煉瓦(れんが)積みの原塔が創建され、シュンガ朝時代の前2世紀末ごろに石でおおわれて増広されたもの。基壇の直径は36.6m、高さは16.5mで、頂点にブッダを象徴する傘蓋(さんがい)がたてられ、欄楯(らんじゅん:手すり)でかこまれている。覆鉢の下部で地上3mほどの所に右繞(うにょう:右まわり)礼拝のための回廊がもうけられ、回廊の周縁とさらに外側の基壇の周縁に欄楯をめぐらせ、2重の歩廊を形成している。

東西南北にある入り口の外側には、サータバーハナ朝時代の1世紀初めに、ほぼ全面に浮彫や丸彫がほどこされた高さ約10mの塔門がたてられた。2本の角柱の上部に間隔をとって3本の梁(はり)を横にわたしたもので、元来は欄楯とともに木材に彫刻をほどこしていたものが、より恒久性のある石材にかえられたと考えられている。

塔門彫刻はインド古代美術の白眉(はくび)といっても過言ではない。ブッダの生涯をしめす仏伝図やその前世物語である本生(ほんじょう)図が中心で、同一面に時間的な推移をみせる絵巻物形式のものも多い。この当時、ブッダはまだ人間の姿ではあらわされず、法輪、ストゥーパ、柱、菩提樹(ぼだいじゅ)、仏足跡などで象徴的に表現されている。装飾モティーフとしては、蓮華(れんげ)、象、獅子、馬、孔雀(くじゃく)などがあり、葡萄唐草文(ぶどうからくさもん:唐草文様)、有翼獣、一角獣など西アジア・ヘレニズム美術の影響をうかがわせるものもある。

樹神ヤクシャ、樹女神ヤクシー、太鼓腹の財宝神クベーラなど民間信仰の神々も随所に配されている。とくに、マンゴーの樹に手をからませ、豊満な乳房もあらわに腰をひねったポーズのヤクシー像には、インドの豊饒(ほうじょう)な自然観や横溢(おういつ)する官能美が生き生きと表現されている。また、南塔門のそばには、アショーカ王が僧団の分裂をいましめた法勅をきざんだ石柱の基部がのこっている。