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| I. | プロローグ |
屋根の端が、建物の壁や建具より外側にでた部分をいう。強い日差しをさけ、雨水が建物の柱や壁にかからないようにするため、屋根を外側にはりだしたもので、高温多湿の東アジアの木造建築でとくに発展した。
| II. | 屋根と垂木 |
軒は、屋根をささえる垂木(たるき)とよばれる部材を、柱や壁より外にのばしてもうける。しかし、垂木を外にのばしすぎると、屋根自身の重みで垂木がまがってしまう。雨水から建物をまもるためには、軒は外にはりだしているほうがよいが、構造的に問題が生じてくる。
| III. | 中国で考案された技術 |
伊勢神宮内宮正殿にみられるように、寺院建築の技術が伝来する以前には、垂木をいちばん外側で支持するのは、柱の上におかれた桁(けた)であった。伊勢神宮は草葺(くさぶ)きの軽い屋根であったため、それでもじゅうぶんな軒の出を確保することができた。しかし、瓦葺きの重い屋根の寺院や宮殿では、同じ方法で外にはりだした深い軒をつくるのは困難になる。
そこで、中国では柱の外側で軒を支持する技術が考案された。それは、肘木(ひじき)や尾垂木という部材を柱より外側にのばし、これを「てこ」につかって、その先端で垂木をささえる軒桁を支持する方法である。この方法によって、深い軒の出が可能になった。
| IV. | 東アジア木造建築美の中心 |
肘木や尾垂木に、荷重をつたえる役目をもつ斗(ます)などの部材群によって、深い軒先を支持する技術は、瓦葺きの技術とともに、6世紀末以降、朝鮮半島や中国から日本につたえられた。これらの仕掛けは組物(くみもの)とよばれ、東アジアの木造建築における構造美の中心となっている。
| V. | 建物の美しさの決定要素 |
日本建築では、軒桁から軒先まで1本の垂木でささえるものを一軒(ひとのき)、2段にしてささえるものを二軒(ふたのき)という。
また軒の先端は、一直線にすると左右の端部がたれさがってみえるため、軒先の両端は少し上にそらせてつくられる。日本では緩やかな曲線で上にそらせるが、中国では屋根の両端を強くそらせる。軒の出の割合や軒先の反らせ方は、建物全体のバランスや美しさを決定する大きな要素とされている。