環境ホルモン
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環境ホルモン
II. 内分泌系撹乱のメカニズム

ホルモンは、標的細胞にある受容体(レセプター)を認識して、その受容体と結合して信号をおくるが、このプロセスを撹乱し、内分泌系を撹乱するのが環境ホルモンである。環境ホルモンによる撹乱作用には、本来はホルモンと結合すべき受容体に環境ホルモンが結合してしまうことによってホルモンと類似の作用をもたらす場合と、本来のホルモン作用を阻害する場合とが知られている。

PCBやDDT、ノニルフェノール、ビスフェノールA(樹脂の原料)などの化学物質は、女性ホルモンであるエストロゲンに類似した作用をもつといわれている。これらの物質が、エストロゲン受容体に結合することによって、エストロゲンと同じような反応が細胞にもたらされる。

一方、DDE(DDTの代謝物)やビンクロゾリン(殺菌剤)などはアンドロゲン受容体と結合し、男性ホルモンであるアンドロゲンが受容体と結合するのを阻害する抗アンドロゲン作用が知られている。

環境ホルモンによる生殖異常の問題は、1980年後半から92年にかけて、アメリカ合衆国やデンマーク、イギリスなどで同時におこり、新たな環境問題としてクローズアップされた。アメリカ合衆国の五大湖やその他の多くの地域で、野生動物に性器異常や生殖異常がみられたが、これはDDTをはじめとする農薬やPCBなどのエストロゲン様作用をもつ化学物質が原因ではないかと考えられた。

イギリスでは、河川で雌雄同体のローチ(コイ科の魚)がみつかり、エストロゲン様の作用をもつ化学物質が河川にながれこんでいるのではないかと考えられた。調査の結果、河川からエストロゲンおよび経口避妊薬のエチニールエストラジオールが検出され、ついで羊毛加工工場の排水からエストロゲン様作用をもつノニルフェノールが検出された。デンマークでは、過去50年間でヒトの精子数が半減したことが1992年に報告された。

1. あいつぐ告発

1996年3月には、アメリカ人科学者のシーア・コルボーン(WWFの科学顧問)らの「奪われし未来」(原題はOur Stolen FutureAre We Threatening Our Fertility, Intelligence, and Suvrvival )が出版され、環境ホルモンに対する関心が急速に高まった。97年にはイギリスBBCのプロデューサーのデボラ・キャドバリーが、「メス化する自然―環境ホルモン汚染の恐怖」(原題はThe Feminization of Nature Our Future at Risk)をあらわした(もとになったレポートの発表は1993年)。これらの著書は、多くの野生動物はすでに環境ホルモンの影響をうけていること、これらの化学物質は人体にも蓄積されていることを明らかにし、世界に大きな衝撃をあたえた。