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| III. | 影響作用がうたがわれている化学物質 |
「奪われし未来」では、環境ホルモン作用があるとうたがわれている物質63種をリストアップしている。環境庁(現、環境省)の環境ホルモン問題に関する研究班の中間報告(1996年)では67種がリストアップされているが、これは、イボニシなど巻貝に生殖障害を生ずることが明らかにされたトリフェニルスズ(船底塗料や漁網の防腐剤)など3種をくわえたものである。環境省は2000年度(平成12)から、このうちの40種の物質についてリスク評価をはじめている。67種は、用途により以下の9つに分類できる。
1.工業活動の過程で非意図的に生産される化合物。農薬や有機塩素系化合物の製造過程やゴミの焼却、パルプの漂白などの過程で副産物として生成される。ダイオキシンやベンゾ(a)ピレンなどがその毒性や発癌性(はつがんせい)、難分解性のため、環境汚染物質として問題になっている。
2.工業的に過去に多用され、その後使用中止となったが、分解されにくいため現在でも環境中に残存しているもの。PCBなど。
3.プラスチックの材料や可塑剤として現在も使用されているもの。ビスフェノールAやノニルフェノール、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DEHP)など。ビスフェノールは、ヒドロキシル基(水酸基)-OHをつけたベンゼン環を1分子中に2個もつ化合物で、ポリカーボネートやエポキシ樹脂の原料として利用されている。しかし、アメリカ国立衛生研究所で、極低濃度でも生物に影響をあたえることがマウスをつかった実験から確認されている。また、DEHPなどのフタル酸エステル類は、それ自体は無害なポリ塩化ビニルの可塑剤としてつかわれている。
4.プラスチック関係以外の用途に工業的に利用されているもので、洗剤の界面活性剤や医薬品の原料、工業試薬(→ 試薬)、合金半導体の製造などに使用されているもの。PBBやアルキルフェノールなど。
5.農薬類。現在は使用禁止になっているが、難分解性のため、環境中に現在でも残存しているもの。DDTやHCB(ヘキサクロベンゼン:殺菌剤、有機合成原料)、ディルドリン(殺虫剤)、アルドリン(殺虫剤)など。
6.現在日本で使用されている農薬類。シマジン(除草剤)やケルセン(殺ダニ剤)、アトラジン(除草剤)など。
7.現在日本で使用されていないが、外国で使用されている農薬類。DDTやアルディカーブ(殺虫剤)など。
8.過去および現在、医薬品として使用されているもの。
9.船の防腐剤として海洋汚染の原因となっているもの。有機スズのトリブチルスズやトリフェニルスズなど。
上記の分類をみると、農薬(殺虫剤、殺ダニ剤、除草剤、殺菌剤)が、67物質の中で43種と全体の64%を占めている。また現在、環境ホルモンとして新たに注目されている物質の多くは、すでに急性毒性や発癌性、催奇形性、慢性毒性などがあることが明らかにされていたが、今回、新たにホルモン撹乱作用もあることが明らかにされたものである。
このことから予想されるのは、今まで、発癌や催奇形性、慢性毒性と別々にとりあつかわれていた現象には、じつはホルモン撹乱作用が共通に関与しているのではないかということである。解明がすすまなかったこれらの現象の発現のメカニズムを、今後ホルモン撹乱作用の面からみなおすことにもなろう。