| 検索ビュー | 全身性炎症反応症候群(SIRS) | 項目ビュー |
| I. | プロローグ |
外傷(→ 傷)、手術(→ 外科)、感染(→ 感染症)、急性膵炎などの侵襲によって、全身的に重篤(じゅうとく)な炎症反応をおこしている状態に対して提唱された概念。
| II. | 侵襲と生体反応 |
健康な体では、体内の環境は一定にたもたれているが、外部から刺激がくわわると体内環境に変化が生じる。外傷、熱傷(→ やけど)、手術、出血、感染、急性膵炎など、体内の環境を変化させる、のぞましくない刺激を侵襲という。生体は、侵襲をうけると、それをさけて元の一定の環境をとりもどそうと反応する。このとき、細胞はさまざまなサイトカインをつくり出す。
| III. | サイトカイン・好中球・多臓器不全 |
サイトカインの中には、炎症がおこっている場所に、白血球の一種である好中球(→ 食細胞:食作用)をあつめて、作用させるものもある。好中球は、本来、細菌などが体内に入ってくると、この外敵をやっつけるためにフリーラジカルをつくり出し、細菌を食べてしまう働きがある。しかし、大きな侵襲をうけてサイトカインが多量につくられると、好中球は炎症がおこっている場所だけでなく、重要な臓器にもおくりこまれる。重要な臓器にあつまった好中球は、その臓器を攻撃し、破壊しようとする。これが臓器不全であり、同時に複数の臓器が破壊されることを多臓器不全という。
このように、生体が侵襲をうけると、サイトカインが重要な働きをすることが明らかになり、1991年、アメリカ合衆国の胸部疾患学会と集中治療学会が共同で、全身性炎症反応症候群(SIRS)という概念を提唱した。これは、大きな侵襲をうけた重症患者に共通してみられる病態である。また、SIRSの中で、感染によっておこったものは敗血症(sepsis)とよばれる。
| IV. | SIRSの診断基準 |
以下の4つの徴候のうち、2つ以上あれば、SIRSと診断される。
(1)体温:38°C以上または36°C未満。(2)脈拍数:毎分90回以上。(3)呼吸数:毎分20回以上、またはPaCO2(動脈血炭酸ガス分圧):32トール未満。(4)白血球数:1万2000/mm³以上か4000/mm³未満、または未熟型白血球が10%以上ある。
| V. | 重篤な炎症反応のメカニズム |
診断基準の4つの徴候はすべて、サイトカインが大量に産生されたためにおこるが、だからといって、ただちに多臓器不全におちいるというわけではない。侵襲後に分泌されるサイトカインは、炎症性のものだけでなく、抗炎症性あるいは炎症性サイトカイン抑制物質も同時に分泌され、炎症性サイトカイン(→ ケモカイン)による多臓器不全をふせいでいるからである。
しかし、抗炎症性サイトカインが大量に分泌されつづけて過剰になると、今度は反対に、免疫機能が低下して、生体の抵抗力は弱くなり、感染をおこしやすくなる。このような状態を代償性抗炎症反応症候群(CARS:Compensatory Anti-inflammatory Response Syndrome)という。
以上のようなメカニズムから、SIRSによってCARSがおこり、感染によって、ふたたびSIRSにおちいるという悪循環が生じ、患者の状態はきわめて重篤になる。したがって、初期の段階で、SIRSをはやく食いとめることが重要である。集中治療室に搬送し、濃厚な治療をほどこすことが必要とされる。