正義
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正義
I. プロローグ

人間は、他人とともにしか生きられない社会的動物である。だが、他人とまじわれば、かならずいさかいがおこる。そこで、これを公平にさばき、調停できるような規範や理念が必要となる。これが正義である。正義は法の基礎となり、正義にもとづかない法は強制力をもたない。

人間はまた良心をもつ動物でもある。みずからのおこなう行為がただしく、うつくしいかどうかがいつも気になる奇妙な生物である。行為それ自体のよしあしを判定する基準もまた正義とよばれ、この場合の正義は、道徳的な善と密接な関係にある。

では、正義を保証する根拠はどこにあるか。それを個人にもとめれば、「正義をきめるのは強者」ということになりかねない。一般に正義の根拠は、調和ある社会関係か、超自然的なものにもとめられる。ギリシャやローマの時代は前者、キリスト教的中世は後者の傾向が強く、近代の正義論はこの両傾向のせめぎあいとして特徴づけることができる。