| 検索ビュー | 合成ゴム | 項目ビュー |
| I. | プロローグ |
ゴムノキから採取されるラテックスからつくられる天然ゴム(→ ゴム)に対して、石油からえられる各種の不飽和炭化水素を原料として合成された物質のこと。合成ゴムの物理的性質や化学的性質は、天然ゴム(生ゴム)のように弾性をもち、加硫によって強度が高まる。また、合成ゴムは原料物質の種類によってさまざまなものがつくられており、耐熱性、耐薬品性などの点では天然ゴムよりすぐれたものが多い。
天然ゴムはイソプレンが重合したものだが、合成ゴムの製造では種類に応じてイソプレン以外にもブタジエンやスチレン、プロピレン、エチレンなど、さまざまな物質を重合させている。重合反応にあずかるこれらの原料物質をモノマー(単量体)といい、重合反応がおこるとそれぞれのモノマーが化学結合でむすばれ、ポリマー(高分子化合物)とよばれる巨大な分子を形成する。
| II. | 合成ゴムの開発の歴史 |
1826年にイギリスの化学者ファラデーは天然ゴムを分析、主成分が炭化水素で、分子式はC5H8であることをつきとめた。そして、60年、イギリスの化学者C.G.ウィリアムスは、天然ゴムを乾留してイソプレンを分離し、天然ゴムがイソプレンCH2=C(CH3)CH=CH2の重合体であることを明らかにした。79年にはフランスのG.ブーシャルダが、逆にイソプレンを加熱重合してゴム状の物質をつくりだすことに成功。天然ゴムの構造が解明されてゆくにつれ、合成ゴムの研究も本格的にはじまった。
イソプレン以外の物質をつかった研究も次々におこなわれ、1900年代初期にはロシアのL.コンダコーフやS.V.レーベデフが、それぞれがジメチルブタジエンCH2=C(CH3)C(CH3)=CH2やブタジエンからゴム状物質を合成することに成功している。
| 1. | 代用品としてのメチルゴム |
やがて第1次世界大戦中のドイツにおいて、連合軍による海上封鎖で補給がたたれた天然ゴムにかわるものとして、1914年にジメチルブタジエンを原料としたメチルゴムがつくられた。メチルゴムの品質は天然ゴムにくらべて粗末なものだったが、大戦末期には月150tが生産されるまでになった。これが最初の工業化された合成ゴムであるが、品質がおとることから戦後は生産が中止された。
1920年、ドイツの化学者シュタウディンガーによって高分子説が発表され、高分子化学という新しい分野が出現した。高分子化学は、ゴムやプラスチックなどの物質が、多数のモノマーが結合してできた巨大分子からなることを明らかにし、それ以後、合成ゴムの研究はめざましく進歩した。
| 2. | 本格的な合成ゴムの製造開始 |
1930年にはアメリカのデュポン社につとめていたカロザースが、クロロプレンCH2=CClCH=CH2を重合することでクロロプレンゴムを発明。翌31年から「ネオプレン」の商品名で製造が開始されている。同じころドイツでは、ブタジエンを金属ナトリウムで付加重合してブナゴムといわれるポリブタジエンゴムが開発された。その後も、さまざまな合成ゴムがつくられ、54年には天然ゴムとほとんど同じ構造をしたイソプレンゴムが開発されている。
| III. | 合成ゴムの分類と種類 |
合成ゴムは、大きくわけて、天然ゴムの代替品としてつかうことを目的につくられたものと、天然ゴムの欠点である摩耗しやすく油に弱いという性質を改善するためにつくりだされたものとがある。
分類としては、化学的構造により、単位分子中の主鎖に二重結合を2つもつジエン系と、二重結合をもたない非ジエン系とに大きくわけられる。
ジエン系ゴム
天然ゴム(NR、JISによる略号、以下同)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)
非ジエン系ゴム
ブチルゴム(IIR)、エチレン・プロピレンゴム(EPM、EPDM)、ウレタンゴム(U)、シリコーンゴム(Q)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、塩素化ポリエチレン(CM)、アクリルゴム(ACM)、エピクロロヒドリンゴム(CO、ECO)、フッ素ゴム(FKM)
さらに、原料に1種類のモノマーをつかって付加重合によりつくられるものと、原料に2種類以上のモノマーをつかって共重合反応を利用してつくられるものがある。
そのため、JIS K6397 原料ゴム及びラテックスの略号(以下JIS)では化学構造をもとに合成ゴムの分類をさだめ、グループによる分類をおこなっている。
Mグループ: ポリメチレン型の飽和主鎖をもつゴム重合体
Oグループ: 主鎖(鎖式化合物の幹となる炭素骨格のこと)に炭素と酸素をもつゴム
Rグループ: 主鎖に不飽和炭素結合(→ 飽和化合物)をもつゴム
Qグループ: 主鎖にケイ素と酸素をもつゴム
Uグループ: 主鎖に炭素と酸素および窒素をもつゴム
Tグループ: 主鎖に硫黄と酸素および炭素をもつゴム
Zグループ: 主鎖にリンと窒素をもつゴム
| 1. | イソプレンゴム(IR) |
イソプレンCH2=C(CH3)CH=CH2の付加重合でつくられたゴムで、天然ゴムとほぼ同じ構造をもち、よく似た性質をしめす。そのため、合成天然ゴムともよばれている。純粋なイソプレンからできているために、天然ゴムにくらべて品質が均一であること、異物の混入がないこと、吸水性が少なく臭気もほとんどないことなどの特長がある。機械的強度としては、弾性や耐摩耗性などは大きいが、引張強さは天然ゴムにややおとる。
天然ゴムの構成要素である重合体のポリイソプレンはシス–1,4結合が100%であるのに対し、イソプレンゴムでは95%程度であった。しかし最近では、新触媒の開発がすすみ、シス–1,4結合が100%のものもできるようになってきている。
用途としては、天然ゴムとともに、タイヤや靴底、ベルト、ホース、医療用製品など、幅広く利用されている。しかしながら、天然ゴムと同様に耐熱性や耐油性におとるため、機械内部から液体や気体がもれないようにするためのシールパッキンなどにはもちいられていない。
| 2. | ブタジエンゴム(BR) |
ブタジエンCH2=CHCH=CH2の付加重合でつくられ、シス型(シス–1,4結合)を90%以上ふくむものがゴムとして使用されるが、トランス型(トランス–1,4結合)やビニル型(1,2結合)の割合が高いものはプラスチックとして利用される。→ 幾何異性体
高い反発弾性(反発する力)をもち、耐寒性や耐老化性にすぐれているが、とくに耐摩耗性がすぐれ、低温時においても良好な特性をしめす。単独で使用されることは少なく、天然ゴムや、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)などとまぜてタイヤにもちいられることが多い。
| 3. | スチレン・ブタジエンゴム(SBR) |
天然ゴムの代用品として1933年にドイツで開発された合成ゴム。スチレンC6H5CH=CH2とブタジエンCH2=CHCH=CH2の共重合からつくられるが、ナトリウム触媒で重合させたことから、それぞれの頭文字をとりブナSとよばれていた。乳化剤でモノマーを乳化し、乳濁液(エマルション)として重合をおこなう乳化重合法あるいは、モノマーを有機溶媒にとかして重合させる溶液重合法でつくられる。
天然ゴムに似た性質をもつが、天然ゴムにくらべると弾性が低い。老化しにくく、鉱油に対する耐性はないが、植物油に対しては耐性がある。弾性や強度特性、耐摩耗性などのバランスがよく、加工も容易であることから汎用(はんよう)ゴムとして、合成ゴムの中ではもっとも多く生産されている。
用途としては、自動車用タイヤに多くがつかわれている。そのほか、天然ゴムとまぜあわせて防振ゴムやホース、ベルト、履物など、一般工業用品材料として多量に生産・消費されている。
| 4. | クロロプレンゴム(CR) |
デュポンの商品名であるネオプレンという名称でも知られている合成ゴムで、1930年にアメリカの化学者カロザースにより開発された。天然ゴムの構成要素であるイソプレン(2–メチル–1,3–ブタジエン)C5H8のメチル基のかわりに、塩素が入ったクロロプレン(2–クロロ–1,3–ブタジエン)CH2=C(Cl)CH=CH2の付加重合でつくられている。
分子構造中に塩素をふくむため難燃性であり、耐油性や耐熱性にもすぐれ、耐候性や耐オゾン性も良好である。接着剤やゴムベルト、ホース、電線などの一般工業用ゴム製品に広くもちいられている。
| 5. | アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR) |
ニトリルゴム(NBR)ともよばれる1934年にドイツで開発された合成ゴム。アクリロニトリルCH2=CHCNとブタジエンCH2=CHCH=CH2の共重合からつくられるが、ナトリウム触媒で重合させたことから、それぞれの頭文字をとりブナNとよばれていた。
アクリロニトリル(→ ポリアクリロニトリル)の含有量(15~45%)により細かく分類されるが、アクリロニトリルを多くふくむものほど耐油性、耐熱性が高くなる反面、弾性や耐寒性がおとる。耐油性があることから自動車用部品やオイルシール、ホースなどにもちいられる。
| 6. | ブチルゴム(IIR) |
1940年にアメリカで開発されたイソブテン(イソブチレン)(CH3)2C=CH2とイソプレンCH2=C(CH3)CH=CH2の共重合からできるゴムで、イソブチレンを多くふくむ。気体をとおしにくいという特長があり、気体透過性は天然ゴムの7分の1程度である。この性質を生かしてタイヤのインナーチューブにつかわれているが、近年では耐候性、耐オゾン性、耐化学薬品性、耐熱性にすぐれることから電線被覆をはじめとして屋根防水シート、パッキン、タンクの内張り、ホースなど広く一般用ゴムとしてつかわれている。しかし、不飽和度が低いために加硫速度がおそく、また加工性や接着性におとるという欠点がある。
| 7. | エチレン・プロピレンゴム(EPM、EPDM) |
エチレンCH2=CH2とプロピレンCH2=CH–CH3の共重合またはエチレン、プロピレンと非共役ジエンの共重合でできる。前者をEPM、後者をEPDMまたはEPTとよび、両者をふくめてEPRということがある。
EPMは天然ゴムやほかの合成ゴムよりもいちじるしく耐老化性にすぐれている。しかし、ゴム分子内に不飽和結合をふくまないので硫黄による加硫はおこなえず、過酸化物によって加硫をする。用途としては、電線被覆材やゴムタイヤ、ホースなどふつうのゴム製品とほぼ同じ分野で利用されている。
EPDMは軽量で、耐オゾン性、耐化学薬品性、耐熱性にすぐれており、自動車用、一般工業用や電気絶縁用にもちいられる。耐水性にすぐれているため、ダイヤフラム、水道用にもつかわれている。しかし、加硫速度がおそいことや耐油性が弱い欠点がある。
| 8. | ウレタンゴム(U) |
ポリエステルやポリエーテル(エーテル結合–O–をもつポリマー)とイソシアネートR–N=C=Oの反応からつくられるウレタン結合–NHCOO–をもつゴムで、多くの種類がある。ほかのゴムにくらべて強度は大きく、耐摩耗性や耐油性、耐オゾン性にもすぐれている。その反面、耐熱性におとり、ポリエステルタイプは酸や塩基(アルカリ)、熱水などによる加水分解作用をうけやすい。低速運搬用タイヤや耐摩耗性ゴム製品にもちいられる。
| 9. | シリコーンゴム(Q) |
ケイ素と酸素とが、たがいに結合してポリマーを形成するシロキサン結合Si–Oを基本骨格とするゴムで、ケイ素ゴムともよばれる。天然ゴムは使用する環境の温度が100°Cくらい、合成ゴムでも150°Cをこえると劣化してしまうが、シリコーンゴムは、200°C以上の高温下でもたえる強い耐熱性をもっている。また、耐寒性にもすぐれており、-70°Cくらいまでは劣化しない。シリコーンゴムは、イソプレンゴムやブタジエンゴムなどのようなジエン系の合成ゴムにくらべて耐候性にもすぐれており、酸素やオゾン、紫外線に対してきわめて安定である。そのため屋外使用にもっとも適しているが、反面、物理的強度が弱い欠点がある。
産業用としては、シール(密閉)を目的としてつかわれているOリングなどのパッキンや、耐熱パッキン、さらには耐薬品性にもすぐれることから、薬品搬送用のホースなどにももちいられている。身近なところでは、炊飯器や弁当箱、ポット、圧力鍋(なべ)などの各種パッキン類につかわれている。
| 10. | クロロスルホン化ポリエチレン(CSM) |
ポリエチレンを原料に、塩素と二酸化硫黄を反応させてクロロスルホニル基–SO2Clを導入(クロロスルホン化)した合成ゴムで、塩素含有量は30%くらいである。デュポンの商標であるハイパロンが有名。金属酸化物による架橋(橋架け)のため、不飽和結合部がないことから耐候性や耐オゾン性、耐熱性、耐化学薬品性にすぐれ、電気絶縁性(→ 絶縁体)も高いために、広くつかわれている。
自動車用部品としてタイミングベルトやガスケット、パワーステアリング、点火プラグカバーなどにつかわれるほか、ホースや電線などの工業用ゴム製品にももちいられている。
| 11. | アクリルゴム(ACM) |
アクリル酸エステルとアクリロニトリルCH2=CHCNの共重合化合物からできており、高温での耐油性にすぐれているため、高温で使用される耐油用のパッキンなどにもちいられる。しかし、耐水性におとり、強塩基(アルカリ)や強酸にも弱い。
| 12. | エピクロロヒドリンゴム(CO、ECO) |
プロピレンCH2=CHCH3と塩素ClからつくられるエピクロロヒドリンC3H5ClOの付加重合したホモポリマーであるエピクロロヒドリンゴム(CO)と、エピクロロヒドリンとエチレンオキサイドとの共重合によりえられるコポリマー(ECO)がある。耐油性、耐熱性等にすぐれており、自動車部品に多くつかわれている。
| 13. | フッ素ゴム(FKM) |
フッ化ビニリデンCH2=CF2と6フッ化プロピレン(ヘキサフルオロプロペン)CF3CF=CF2の共重合でつくられ、耐熱性や耐油性、耐化学薬品性にすぐれている。
とくに耐熱性は200°Cまであり、高温での耐油性や耐薬品性にすぐれるという特長がある。濃硫酸や硝酸などの酸化力のある強酸や炭化水素にもたえる。
反面、ケトン類や高濃度の水酸化ナトリウムなどの塩基(アルカリ)性溶液には弱い。また値段も高価である。パッキンとしてOリング(密閉リング)や各種ガスケット、ダイヤフラムなどにもちいられている。