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| II. | 古代の音楽 |
紀元前2000年ごろのヒッタイト音楽については楔形文字(くさびがたもじ)による記録を解読する努力がつづけられているが、現在のところ、知られている最古のヨーロッパ音楽は、前500年ごろ~後300年ごろの古代ギリシャと古代ローマの音楽である。現存するギリシャ音楽は10曲ほどで、アルファベットの文字譜で記録されているが、確かな解読法は確立されていない。しかし、古代ギリシャとローマの音楽観および音楽理論は、アリストテレス、ボエティウス、プラトン、ピタゴラスといった哲学者の著作を通じて詳細につたえられている。それによれば、音楽とはアポロン、神話の中の楽師オルフェウス、そのほかの神々が創造したものであり、宇宙を支配する調和の法則を圧縮したミクロコスモス(小宇宙)と信じられていた。さらに音楽は、人間の思考と行動に影響をおよぼすものと考えられた。古代ギリシャ音楽は、一度に1つの旋律だけを演奏するモノフォニーが基本である。ただし、もとの旋律が演奏されている間に、一部の楽師が多少変形した旋律を同時に演奏することがあり、その場合にヘテロフォニーとよばれるやや複雑な構造がつくりだされた。
ギリシャ音楽のリズムは、言葉と密接に関連している。歌では、歌詞の韻律がそのまま音楽のリズムになった。器楽でも、詩のさまざまな韻律パターンにしたがってリズムがきざまれた。ギリシャ音楽の構造は数種類の旋法を基盤にしており、それぞれの旋法には固有の旋律型とリズム・パターンがあった。このような音楽体系は、今日のアラブ音楽、インド音楽にも見いだされる。ギリシャの各旋法は、固有の旋律的・リズム的な特色をもっていたので容易に識別することができた。古代ギリシャの哲学者は、各旋法には独自の感情があり、人は音楽を聴くことによってその旋法がもつ感情を体験できた、と書きのこしている。ただし、ギリシャ音楽の残存例はあまりに少なく、この考え方が実体験にもとづくものなのか、あるいは仮説にすぎないのか定かではない。
古代ギリシャの楽器では、アポロンの楽器とされた竪琴型(たてごとがた)のキタラと、ディオニュソスの縦笛アウロスがよく知られている。キタラには聴く者の気分をおちつかせたり、ふるいたたせたりする効果があり、アウロスは興奮を伝達したとされる。これらの楽器は宗教儀式のほか、劇場でも古代ギリシャ演劇の伴奏にもちいられた。器楽は前300年ごろに最盛期をむかえ、たくさんの奏者が参加してコンクールが盛んに開かれた。
古代ローマ人はギリシャの音楽伝統をそのままうけついで、独自の貢献はほとんどしていないようである。ただし、何種類かの金管楽器を発達させ、戦場や軍隊の行進で活用した。また、水圧を利用して空気をパイプにおくりこむヒュドラウリス(水圧オルガン)を発明した。
→ ギリシャ音楽