社会心理学
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社会心理学
IX. 社会心理学の方法

社会心理学の研究方法は調査法、観察法、実験法に大別され、さらに質問紙作成、インタビュー(聞き取り調査)、面接、データ分析、統計処理などの具体的な方法に細分化されるが、ここでは研究対象と方法の結びつきを念頭においた大まかな整理をしてみよう。

第1に「現地調査」研究がある。たとえば、阪神・淡路大地震時にボランティアとして被災者とともに生活しながら、そこにおける人々の動態を観察したり聞き取り調査をしたりするというように、特定の現地におもむき、そこに生きる住民に密着してその意識や態度や行動を調査・研究する場合である。「村おこし町おこし」運動や過疎地、農山村、漁村などの地域における住民の社会心理学的研究などもこれに属する。

さらにこの現地調査研究は、研究目的をしぼりこんで現地にでかけ、短期間に資料収集する場合と、研究者が現地にすみこんで、むしろ問題発見的に研究を展開する場合とにわけることができる。とくに後者は、地道ではあるが、心理学的リアリティをふまえた研究という観点からはもっとも社会心理学らしい研究といえる。これまで、変数の厳密な統制という見地から、社会心理学では抽象化されモデル化された実験室事態がとりあげられる傾向にあったが、近年、社会的要請ともあいまって、この現地調査研究がふえつつあるのはこのましい傾向である。

第2は意識調査研究で、投票行動の予測にもちいられる政治意識調査や、生活意識調査など、ひろい地域の住民(国民全体や県民全体など)の意識動向を調査する目的でおこなわれる。これには対象となる母集団全体を調査する悉皆(しっかい)調査と、母集団の動向を標本から推計する標本抽出調査の区別があり、後者の場合にはランダム・サンプリングと統計的推計にうったえる方法がとられるが、抽出された標本が母集団をどれぐらいよく代表しているかが問題になる(統計学の「統計の方法」)。また、調査用紙を郵送し記入してもらって回収する方法や、個別に聞き取り訪問調査をおこなう場合など、資料収集にもいろいろなやり方があり、対象の範囲と関連する資料収集のコストおよび回答の性質と確度の観点から、その方法がつかいわけられる。

第3は現場研究で、企業や学校など特定の社会的単位を対象とし、そこにおもむいて面接や質問紙調査をおこなう場合がこれにあたる。この場合も調査対象となる企業や学校など、その現場に固有の問題を調査する目的でのぞむ場合と、その単位をより一般的な母集団の標本としてあつかう場合とにわかれる。

第4は実験研究で、その多くは先のミルグラムの実験のように、実験室実験である。ここでは研究者があらかじめ人為的に設定した状況下で、研究者=実験者が意図的に実験変数を操作することによって、その影響がしらべられる。この場合、研究者の設定した状況が、その研究者が問題にしたい現実の社会心理的問題をどの程度よく反映しているか、その心理学的妥当性がじゅうぶんに吟味されなければならない。

そのほか、臨床社会心理学、発達社会心理学、教育社会心理学、応用社会心理学、あるいは社会心理学の比較文化的アプローチなど、近年、学際領域の研究や実践的な研究が盛んになるにしたがって、それぞれの領域の研究に固有の方法が考案され、洗練されるようになってきている。