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ヨウ素
I. プロローグ

化学的反応性の高い非金属元素。ヨードともいう。ハロゲンに属し、常温では黒紫色の固体となる。

1811年、フランスの化学者ベルナール・クルトワによって、海藻の灰の中から発見された。クルトワの研究は、フランスの化学者F.クレマンとデゾルムにひきつがれた。また、フランスの化学者ゲイ・リュサックも、独自にヨウ素の研究をおこない、新しい元素であることを確認した。元素名iodineは、ゲイ・リュサックが紫色をあらわすギリシャ語iodesにちなんで名づけたものである。

ヨウ素は生物にとって必要不可欠の微量元素で(栄養)、とくに脊椎動物の甲状腺においては重要である。甲状腺ホルモンの分子にはヨウ素がくみこまれている。

II. 性質と存在

固体のヨウ素は鱗片状の結晶で、金属光沢をもつ。揮発性があり、加熱すると昇華して、特異臭をもつ紫色の気体にかわる。また、ヨウ素の蒸気は光の照射によって蛍光をはなつ。

多くのハロゲンと同様、ヨウ素は化学的な反応性が高い。ヨウ化カリウム水溶液など、ヨウ素イオンI-をふくむ水溶液に容易にとけるほか、アルコール、クロロホルムなどの有機溶媒に溶解する。

ヨウ素はほとんどの金属と容易に化合物(ヨウ化物)をつくる。他のハロゲン元素とも反応し、五フッ化ヨウ素IF5、七フッ化ヨウ素IF7、一塩化ヨウ素ICl、三塩化ヨウ素ICl3など、さまざまなハロゲン間化合物をつくる。酸素、窒素、炭素とは反応しにくいが、オゾンO3と反応して、四酸化二ヨウ素I2O4、五酸化二ヨウ素I2O5など、さまざまな酸化物をつくる。またデンプンにヨウ素をくわえると、濃青色にかわる。このヨウ素デンプン反応は、微量のデンプンやヨウ素の検出にもちいられる。

ヨウ素は比較的希少な元素であるが、海水中ではほかの元素にくらべて存在比は高く、海藻や海生生物の体内では、さらに濃縮される。鉱物では、チリ硝石にヨウ素がふくまれる。また、石油や天然ガスとともに採取される地下の塩水中に、高濃度で存在することもある。天然に存在するヨウ素は質量数127のヨウ素127のみだが、質量数115から140の放射性同位体が、人工的に合成されている。

III. 用途

殺菌剤、防腐剤、および各種の医薬品に利用される。有名なものではヨウ素とヨウ化カリウムをエタノールにとかしたヨードチンキがある。そのほかヨウ素は写真感光剤、染料にもちいられる。ヨウ化銀は人工降雨に使用される物質で、雨粒の形成をうながすために雲の中に散布される。酸化力のつよいヨウ素酸HIO3や、ヨウ素酸カリウムKIO3は、化学実験で分析試薬として使用される。

元素記号I。原子番号53。原子量126.90447。周期表(周期律)17族に属する。融点113.6°C。沸点185.2°C。密度4.940g/cm³(20°C)。地殻中の存在量0.46ppm。