| 写実主義 | 項目ビュー | ||||
| 印刷するには、[ファイル] メニューの [印刷] をクリックします。 | |||||
| III. | 文学 |
ヨーロッパとアメリカの写実主義文学は、1840年ごろにはじまり、90年代には自然主義へと展開した。まずフランスのフローベールの長編小説「ボバリー夫人」(1857)やモーパッサンの短編小説が写実主義文学の口火を切った。ロシアでは、チェーホフの戯曲や短編小説に代表される。イギリスに写実主義をもたらした小説家ジョージ・エリオットは、「ありきたりの事柄を忠実に描写すること」が目的だったと「アダム・ビード」(1859)で表明している。
アメリカではマーク・トウェーンとハウエルズが写実主義の先駆者である。写実主義の小説家として大成したヘンリー・ジェームズは、創作上のインスピレーションの多くを師であるジョージ・エリオットやハウエルズの作品からえている。ジェームズは登場人物の行動の動機づけに関心をもち、外面的な写実主義から少しかたちをかえて心理的な写実主義に転換して、心理小説の先駆者となった。
これら写実主義の作家の共通点は、美学・倫理上の理想という先入観にあう事実をえらんで書くのではなく、観察したことを偏見なく客観的に書きとめているということである。また、きまったかたちがあるわけではない人生を忠実にえがくことに気をとられるあまり、写実主義者は性格描写を偏重してプロットを軽視し、中産階級の暮らしや偏見をえがくのに夢中になって、スケールの大きな問題をさける傾向がある。