油脂
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油脂
II. 油脂の性質と用途

動植物の組織に存在する油脂の成分でもっとも多いのは、脂肪酸の炭素数が17個のステアリン(C17H35COO)3C3H5(ステアリン酸CH3(CH2)16COOHのエステル)とパルミチン(C15H31COO)3C3H5(パルミチン酸CH3(CH2)14COOHのエステル)という飽和脂肪酸が大部分で、不飽和酸のオレイン(C17H33COO)3C3H5(オレイン酸CH3(CH2)7CH=CH(CH2)7COOHのエステル)などがこれにつぎ、これらの成分は、ほとんどすべての油脂に共通してふくまれる。それ以外の成分は、油脂の種類によってさまざまである。炭素数12以下の脂肪酸をふくむエステルは、バター、ヤシ油にふくまれ、反対にナタネ油、落花生油には、炭素数20以上の脂肪酸をふくむエステルがふくまれる。脂肪酸の分子量が大きくなるほど、油脂の融点は高くなる。

1. 油脂の性質

脂肪酸にふくまれる炭素の結合状態によっても、油脂の性質に違いがあらわれる。脂肪酸の炭素がすべて単結合でむすびついた飽和脂肪酸は、化学的に安定で融点が高い。このため炭素数11以上の飽和脂肪酸をふくむ油脂は、常温で固体の脂肪となる。これに対して、一部の炭素が二重結合でむすびついた不飽和脂肪酸は融点が低くなり、不飽和脂肪酸をふくむ油脂は、常温で液体の脂肪油となる。また、不飽和脂肪酸をふくむ油脂は化学的に不安定で、空気中では酸化によって変質しやすい。ただし不飽和脂肪酸の二重結合に水素を反応させて単結合に変化させれば、融点が高く化学的に安定な、飽和脂肪酸をふくむ油脂にかえることが可能である。

2. 採取法

油脂の採取法には、融出法、圧搾法、抽出法の3種類がある。融出法は煮沸または蒸気による熱を利用する方法で、動物の脂肪組織から油脂をとりだすのに適している。細胞中の油脂は熱でとかされ、脂肪組織の外にとけだして水の表面にうかぶので、簡単に分離できる。牛油、魚油、鯨油はこの方法で採取される。

圧搾法は圧搾機で圧力をかけて油脂をとりだす方法で、油脂を多くふくむ植物の種子から油脂をとりだすのに適している。ゴマ油などがこの方法で製造される。種子にふくまれる油脂の量が少ない場合には、抽出法が利用される。

抽出法では種子を溶媒にひたし、ふくまれる油脂を溶媒中にとかしてとりだす。溶媒には石油ベンジン、ヘキサンなどが使用される。大豆油などがこの方法で製造される。

3. 用途

油脂は食品のかたちで、もっとも大量に消費される。バターやラード(豚脂)など飽和性の脂肪は天然の状態のままで利用されるが、魚油のような不飽和性の脂肪油は酸化によって変質しやすいので、水素添加によって飽和脂肪にかえてから、ショートニングオイル、マーガリンなどに利用することもある。牛脂、豚脂、羊脂などの動物性油脂は、食品のほか、ロウソクの原料としても利用される。

不飽和性の天然油脂は空気によって酸化され、乾燥した半透明の被膜をつくる。この性質は塗料に適しており、亜麻仁油(アマ)などの乾性油から油性ペイント(ペイント)、ワニスなどがつくられる。脂肪酸とグリセリンのエステルである脂肪は、アルカリ水溶液とともに加熱すると、加水分解してグリセリンと脂肪酸アルカリ(石鹸)にかわる。そのため脂肪は石鹸の重要な原料でもある。