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地球物理学
I. プロローグ

地球を物理学的方法によって研究する科学の分野。具体的には、地球磁場、熱流量、地震波の伝搬、重力といった物理学的現象と地球内部との関係、および地球に影響をおよぼす宇宙の諸現象、たとえば、太陽の活動による地球磁場への影響、宇宙からの放射線や太陽風といった現象も研究対象となる。

II. 研究分野

地球内部、気圏、水圏(海など)、電離圏などさまざまな分野をふくんでいる。

1. 固体地球物理

測地学、地震学、火山学など、地球の内部を研究するすべての地球物理学の分野である。地殻から地球内部の核(コア)まで、地球を構成する物質の挙動を研究し、とくに地球の大きさと形態、重力、電磁気、地震などの現象を研究する。

測地学の分野では、地球の大きさと形態の計測、地球表層での正確な位置決めをおこなう。また地球の重力場の測定や、地球回転、極の位値、潮汐の変化の観測もおこなっている。測地学の新しい2つの測定法である、超長基線電波干渉法(VLBI)と人工衛星レーザー測距法(SLR)は、1cmの何分の1以内の精度で、大陸間の距離の相対的な変化の割合を決定するためにつかわれている。

2. 地球磁場

地球電磁気学は、地球とその気圏で観察される電磁気的現象の研究をおこなう。地球磁場の発生は、核を形成する電気伝導性(電気伝導)をもつ物質の流体運動に関連していると考えられている。また、電気伝導性のある物質の運動と地球磁場の変動は、互いに関係しあっている。この種の研究は、磁気流体力学、または電磁流体力学として知られている。地球の歴史をとおして、地球磁場がどのようにかわってきたか研究する学問を、古地磁気学とよんでいる。古地磁気学は、プレートテクトニクス理論に初めてたしかな根拠をあたえた。磁極

3. 重力と潮汐

重力は、地球の質量によってつくられる引力である。重力は地表に直交した方向に徐々に変化してゆく。重力計は相対的な重力を測定するためにひじょうに感度がよい。測定点の地下の密度差によっておきる重力の標準値との差は、ブーゲー異常として知られる。

月や太陽の重力場の中で地球が回転すると、地球上では重力の周期性があらわれる。海洋の潮汐はもっとも明瞭にみられる現象である。海洋潮汐のほかに、固体地球も若干であるが周期的に伸縮している。これを地球潮汐という。

4. 地震学

プレートの運動によって、大きな地震がおきることが認識されるようになり、全地球的な地震活動を詳細に知ることが可能になった。さらに核から地表へつたわる地震波の伝播の仕方から、マントルや核のことについて、多くのことが推測できるようになってきた。この10年ほどで、リソスフェア(岩石圏)として知られる地殻と、上部マントルについての知識は飛躍的にました。これはもともと、石油や天然ガスを発見するために発展してきた、人工地震波探査の技術を駆使してなしとげられたものである。

5. 水文学

地下水や陸水、あるいは大気圏の水についての基礎的な分野である。陸と海から生物圏と大気圏を介在して蒸発や蒸発発散作用、つまり土壌からの蒸発、植物の発散によって水がなくなることや、降雨と表面流去などによって、水が定常的に循環(水循環)していることなどの研究をおこなう。

6. 火山学

火山ガスなどをふくむ、マグマの地表への噴火を研究する。また、火山の構造、火山性の堆積物、火山活動にともなってできた地形をあつかう学問である。

火山噴火がおきる決定的な前兆についてははっきりとわかっていないが、いくつかの地球物理学的現象は、噴火を前もって知る手がかりになる。たとえば、地磁気の強さや方向がかわったり、微動の群発地震がおきたり、ときには熱流量が増加したり、また航空写真による地形の変化などから、火山噴火を前もって知ることができる。また噴気孔からのガスの噴出量の増加、マグマドームの膨張も火山噴火の前兆と考えられる。

7. 地電流

静電気または地表をながれている交流の自然電流は、人工的な電流、電場あるいは磁場(磁界)によって励起されている。地球内部の電気抵抗は、マグネト・テルリック法で調査される。誘導電流や地磁気の変化から、一般的にマントル内では、深度がますほど伝導度が高くなると考えられている。地球の「地電流」

8. 大気現象

低層気圏の物理の研究は、気象学の範疇(はんちゅう)にはいる。低層気圏では空気は密度が高く、流体力学の法則にしたがってふるまう。最近ではリモートセンシングがこの分野で重要な役割をはたしており、嵐や雷などの一時的な大気現象を監視している。

高層気圏の現象は、成層圏と磁気圏物理の分野である。太陽風と干渉している地球磁場の断面は、刀のサヤのような形態をしており、磁気圏とよばれている。太陽から放出された高エネルギーの粒子がこの磁気圏をつきすすみ、バン・アレン帯にはいった時、オーロラがあらわれる。

III. 地球物理学的調査

地球物理探査は、一般的に応用地球物理または地球物理学的探鉱とよばれており、石油や天然ガス、地下水や鉱石など、経済的に価値のある資源の探査をおこなう。

1. 土木工学的調査

また、道路や鉄道、建築物、トンネルや原子力発電所(原子力発電)の基盤についての土木工学的なこともあつかう。調査は一般的に電気的、重力的、磁気的、地震学的、熱学的または放射線学的な測定などをおこなう。

2. 地下資源の調査

石油、天然ガス、地下資源の調査では、岩石の電気的または電磁気学的な伝導度、容量(電気)の変化をまず地図化する。石油、天然ガスの調査のためにほられた掘削孔に特殊な装置を設置し、伝導度の変化をはかる。これは堆積層に石油がどの程度はいっているかを判断する基準になる。地下探査では、直流あるいは交流の電流の測定がおこなわれる。また低周波無線は地下探査、空中電磁気調査でつかわれる。

3. 重力調査

重力調査では、地域的な岩体の密度分布を測定する。おもに石油調査では、重力計とよばれる機器をつかう。重力調査は陸上、海、掘削された孔内でおこなわれる。重力

4. 磁気測定

陸上磁気測定では、互いに近接するように設置された観測所で地球磁場の変動が測定される。空中磁気探査も、おもに石油の調査の際におこなわれる。磁力計とよばれる機器を飛行機で牽引(けんいん)したり、調査研究船の後方に設置し、磁気異常を調査する。地震波の伝搬速度の測定は、もっとも一般的な地球物理探査法のひとつである。古地磁気学

5. 地震探査

地震探査は反射法と屈折法にわけられる。これらは、地震波伝搬方向に対して波が水平か垂直かによってつかいわける。屈折波の調査は、土木の地球物理探査と石油探査、および地下水や堆積鉱床をふくんでいる地層を発見するためにつかわれている。いっぽう反射法では、ことなる種類の岩石の境界を推察することができる。こういった情報は地質構造図を作成するときに役立つ。

地震のエネルギーは、陸上では測定地点の変動に反応する速度型受信機(ジオホーン)とよばれる機器で計測される。水中ではピエゾメトリック(ハイドロホーン)をつかって、水圧の変化をはかり、地震のエネルギーを測定している。地震学

6. 地温調査

地温探査では、地球内部の温度分布、熱の発生、伝導と発散がしらべられる。地温探査は地熱の熱源がどこにあるか知るために重要であるが、火山学にとっても重要な情報となる。

7. 放射能探査

放射能探査では、地表や大気から伝導する地下からの自然放射能を測定する。ガイガー=ミュラー計数管あるいはシンチレーション計数管(粒子検出器)は、希土類元素、カリ鉱床(カリウム)とその他の放射能物質をさがしたり、ウランの鉱床を探査するのにつかわれる。

IV. 研究体制と計画

地球物理学の研究計画はさまざまな時間、スケールと場所からえたデータをあつめ、変換、分析し、そしてまとめるようにつくられる。たとえば1957~58年の国際地球観測年(IGY)では、太陽と地球惑星圏の諸観測を集中的におこなう国際計画が実施された。それは64~65年の国際静穏太陽年観測(IQSY)にひきつがれ、その年には太陽活動の時間の最大と最小を比較し、地球上への影響を比較した。

1983年におわった深海掘削計画(DSDP)やそれをひきついだ海洋掘削計画(ODP)など、地殻を掘削するための地質学的計画は地球物理学においても重要である(海洋と海洋学)。世界でもっとも深いロシア北部のコラ半島の掘削孔は、94年に作業が中止されたものの1万2000mの深さに達した。日本の海洋研究開発機構の探査船「ちきゅう」による海洋底掘削プロジェクトが2007年(平成19年)から進行中だが、このプロジェクトでは、海洋底地殻直下のアセノスフェアにふくまれるマントル物質を採取することも大きな目的のひとつとなっている。

アメリカのノバスターのGPS(全地球測位システム)の衛星から供給される地形データは、地震とプレートテクトニクスの動向を観測するのに役にたっている。