叙事詩
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叙事詩
I. プロローグ

荘厳な主題と文体をもつ長編の物語詩。国や世界にとって重大な意義をもつ伝説上・歴史上の出来事があつかわれ、筋立てはスケールが大きく荘重である。ほとんどの叙事詩は特定の個人の冒険をえがき、それによって構成のまとまりをえている。

おもな特徴としては、以下のことがあげられる。超自然的な力がはいりこみ、その力が筋をつくりだすこと。戦闘など体と体がぶつかりあう形で対立がえがかれること。様式上の約束事、たとえば詩の女神ムーサに霊感をもとめる祈り、主題の形式的な叙述、主要な登場人物たちの長い来歴、高揚した言葉で表現される形式的な話しぶり、といったものがあげられる。日常生活の平凡なひとこまが出てくることもあるが、それも物語の背景としてあつかわれ、詩のほかの部分と同じ崇高な文体でえがかれる。

ギリシャ人は叙事詩と抒情詩を性格と発表方法の2つで区別した。抒情詩は個人的な感情を表現し、竪琴にあわせてうたわれたものだが、叙事詩は個人的な感情を抑制し、英雄的な説話をものがたっていくのである。

叙事詩は伝説上・歴史上の英雄をえがいた物語というだけではなく、重大で危機的な局面にあった民族全体の性格や理想を要約し、表現したものでもある。その例として、古代ギリシャの叙事詩であるホメロスの「イーリアス」と「オデュッセイア」があげられる。主人公である英雄の特性は、個人的というよりは民族的なものであり、英雄がその特性を発揮して功業をはたすときに、民族の誇りを感じるのである。

別の時代には、叙事詩によって宗教や文化の大運動の理想が総体的にあらわされた。ダンテの「神曲」(1307~21)は中世キリスト教の信仰を、スペンサーの「神仙女王」(1590~1609)はイギリスのルネサンス精神を、ミルトンの「失楽園」(1667)はキリスト教的人文主義の理想を表現している。