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| II. | 民族叙事詩 |
叙事詩は民族叙事詩と文芸叙事詩に大別できる。民族(国民)叙事詩は、部族の詩人などが生みだした民族詩が口伝えされて発展し、最終的に名の知れぬ詩人たちによって書きとられたものと考えられている。名高い民族詩としては、古英語の「ベーオウルフ」(8世紀)、ドイツの「ニーベルンゲンの歌」(13世紀)、古代インドの「マハーバーラタ」(現在の形になったのは4世紀)と「ラーマーヤナ」(同じく、3世紀)があげられる。
物語の題材は、はるか昔の伝説や出来事にもとづいていることが多く、登場人物やエピソードが、叙事詩がつくられる以前の民謡にえがかれている場合もある。題材をこのように統合する例は、武勲詩というフランスの民族叙事詩にみられる。英雄的偉業をうたう武勲詩は10世紀末~11世紀後期につくられたもので、もっとも名高い作品としては「ローランの歌」(1100頃)があげられる。
日本では、アイヌのユーカラをのぞいて叙事詩とよべる長編詩はつくられなかった。
文化によっては、民族叙事詩の題材が実際に叙事詩に統合されなかった場合もある。ケルト人はフィアナ物語群あるいはオシアン物語群やアーサー王物語群(→ アーサー王伝説)などの広範な物語群を生みだしたが、これらと同様の題材をつかってひとまとまりの偉大な詩へと発展させることはなかった。スペインの国民的英雄エル・シッドの場合も、「わがシッドの歌」(1200頃)を別にすれば、バラッドや詩が叙事詩の域にまで達したことはなかった。