| 検索ビュー | 周期律 | 項目ビュー |
| I. | プロローグ |
元素の物理的な性質や化学的性質の多くは、原子番号が大きくなるとともに規則正しく変化するという化学の法則。もっとも軽い元素からもっとも重い元素へと移行するにつれて、これらの元素の性質が変化していくが、2、8、18、あるいは32番目ごとにたがいによく似た性質が規則ただしくあらわれる。たとえば、2番目(原子番号2)の元素(ヘリウム)の化学的な性質は、10番目(ネオン)、18番目(アルゴン)、36番目(クリプトン)、54番目(キセノン)、86番目(ラドン)の元素の性質とよく似ている。原子番号9(フッ素)、17(塩素)、35(臭素)、53(ヨウ素)、85(アスタチン)の元素で構成されるハロゲンとよばれる仲間(元素の「族」という)は、ひじょうに反応性が高い元素の仲間である。
| II. | 歴史的発展 |
19世紀の最初の四半世紀に、原子論を確立するもととなるさまざまな発見がおこなわれた結果、科学者たちは当時すでに知られていた元素について、その原子の相対的な重さを決定することができるようになった。この時代に、イギリスの化学者デービーとファラデーによってもたらされた電気化学の発展によって、さらに多くの元素が発見された。1829年までにはかなりの数の元素が発見され、ドイツの化学者デーベライナーは、ひじょうによく似た性質をもった元素が、たとえば「塩素、臭素、ヨウ素」、「カルシウム、ストロンチウム、バリウム」、「硫黄、セレン、テルル」、「鉄、コバルト、ニッケル」といったように、3つずつ組になってあらわれることを発見した。しかし、この時代に知られていた元素の数がかぎられていたことと、原子量と分子量の区別についての混乱があったために、化学者たちはデーベライナーの「三つ組元素」の重要性を理解できなかった。
1859年にドイツの化学者ブンゼンと物理学者キルヒホフが、分光光学の化学分野への応用を確立すると、さらに多くの元素が発見されるようになった(→ スペクトル)。60年に化学国際会議がはじめて開催されたとき、イタリアの化学者カニッツァーロは、元素のうちのあるもの、たとえば酸素は2原子からなる分子をもつ、という事実を明らかにした。これによって、化学者たちは整然とした元素の一覧表をつくることができるようになった。
このような発展の結果、さまざまな元素の性質の相関性をみいだそうとする新たな試みが盛んになった。1864年、イギリスの化学者ニューランズは、原子量の小さいものから順に元素をならべていくと、一連の性質が8つ目ごとに繰り返しあらわれることに注目した。彼はこの周期的なくりかえしを、音階になぞらえてオクターブの法則と名づけた。しかしニューランズの発見は、当時の化学者たちの関心をよばなかった。これはおそらく、観測された周期性が当時知られていたほんのわずかな元素にかぎられていたためであろう。
| III. | メンデレーエフとマイヤー |
すべての元素の性質には原子量によってきまる周期性があるという化学の法則は、1869年に2人の化学者、すなわちロシアの化学者メンデレーエフとドイツの化学者マイヤーによって、それぞれ独自に発見された。多くの元素が未発見だったため先人たちの試みは失敗におわったが、メンデレーエフらの成功の鍵(かぎ)は、元素を分類するとき未発見の元素のため空欄を用意しておくべきである、ということを認識したことにある。
当時知られていた元素の中には、カルシウムの原子量とチタンの原子量との中間の原子量をもつものは存在しなかったが、メンデレーエフは未発見の元素があると考え、彼の表の中にその元素のための空欄をのこしておいた。この欄にはいるべき元素は1879年に発見され、スカンジウムと名づけられた。この元素の性質は、まさに周期表のその空欄に正確にあてはまるものであった。スカンジウムの発見が、周期律にもとづく予測の正当性を裏づける劇的な証拠のひとつとなり、それがきっかけとなって、無機化学が急速に発展した。
周期律については、メンデレーエフとマイヤーによって最初に体系化されたのち、2度重要な発展があった。最初の画期的な発展は、19世紀末まではその存在がまったく予想もされなかった新しい元素の仲間が発見され、それもすべてふくむようにこの法則が拡張されたことである。この仲間は、イギリスの物理学者ストラット(レーリー卿)と化学者ラムゼーによって、1894年から98年の間に大気中に発見された、希ガスまたは不活性ガスとよばれる元素のうちの3つ、ヘリウム、ネオン、アルゴンである。周期律における第2番目の画期的な発展は、1913年に提出された原子の電子構造に関するボーアの理論によって、元素の周期性が説明されたことである。
| IV. | 短周期型周期表 |
周期律は、化学の世界では一般に周期表(周期律表ともいう)のかたちで表現される。いわゆる短周期型周期表は、メンデレーエフの表に修正と追加をおこなってつくられたもので、現在でも利用されている。この周期表では、元素は横7行(「周期」という)に原子量の小さいものから順に配列され、縦は18列(「族」という)ある。水素とヘリウムの2つの元素をおさめる第1周期と、その次のそれぞれ8つの元素をおさめる第2周期、第3周期の2つの周期は短周期とよばれる。残りの周期は長周期とよばれ、第4および第5周期には18個の元素、第6周期にはランタノイドをふくめ32個の元素がおさめられる。長周期の第7周期にはアクチノイドがふくまれ、この周期は人工的につくられた放射性元素によって、103番元素のローレンシウムまでの欄がうめられている。これよりも重い超ウラン元素も、人工的につくりだされている。
周期表の縦の列である族には、伝統的に左から順にローマ数字がふられ、さらにそれぞれの族はa、bの記号によって亜族にわけられている。亜族の分け方はさまざまだが、ここでは遷移元素をbとしている。また、亜族の記号にA、Bをもちいた表もある。国際純正・応用化学連合(IUPAC)が採用している周期表の形式も、普及しつつある。この新しい形式の周期表では、族には単純に1から18までの数字が順にふられている。
1つの族に属するすべての元素は、たがいによく似た性質をもっており、一般的に他の族の元素とはひじょうにことなっている。たとえば、第1番目の族(Ⅰa族)の元素は、水素をのぞいてプラス1の原子価をもった金属で、第17番目の族(Ⅶa族)の元素は、アスタチンをのぞいて一般にマイナス1の原子価でさまざまな化合物をつくる非金属元素である。
| V. | 電子殻理論 |
ほとんど反応性をもたない原子価ゼロの希ガスは、周期表では、プラス1の原子価で化合物をつくる反応性が高い金属元素(→ 金属)と、マイナス1の原子価で化合物をつくる反応性が高い非金属元素の間におかれている。このことから、元素の性質にみられる周期性が、原子核の周りをまわる電子の殻状の配列によるものであるという理論がみちびきだされた。この理論によると、希ガスはその電子殻が完全に電子でみたされているため不活性となり、そのほかの元素では部分的にのみ電子がはいった電子殻が存在し、この不完全な電子殻の電子によって反応がおこるのである。
周期表で希ガスの1つ前の位置にある元素はすべて、電子殻を完全にみたすのに必要な数より1つ少ない数の電子をもっており、マイナス1の原子価をしめし、化学反応をおこすときに1個の電子を獲得する。周期表で希ガスの次にくる族の元素は、完全にみたされた電子殻構造の場合よりも1個余分な電子をもっており、プラス1の原子価をしめし、化学反応をおこすときにこの電子をうしなう。
この理論にもとづいて周期表を分析することによって、最初の電子殻には最大2個の電子が収納され、2番目の電子殻には最大8個まで、3番目の電子殻には18個までというように電子が収納されることがわかった。どの周期の場合でも、1つの周期に属する元素の合計数は、安定な配置、つまり電子殻が電子でみたされた状態を達成するために必要な電子の数と一致している。ある1つの族の中のa亜族とb亜族の違いは、この電子殻の理論で説明される。どちらの亜族もまったく同一の不完全な最外殻構造をもっているが、その内側の殻の構造がたがいにちがっているのである。この原子模型によって、化学結合もうまく説明できる。
| VI. | 量子論 |
デンマークの物理学者ボーアやその他の科学者たちによって量子論が展開され、これが原子構造の理論に応用されるようになると、周期表の詳細な特徴の多くが容易に説明できるようになった。すべての電子の軌道運動は、4つの量子数によってきまる。これらの量子数を支配する選択則と、同一原子の2つの電子はまったく同一の4つの量子数をとることはできないというパウリの排他律(パウリの排他原理とも)を利用して、それぞれの殻を完成させるのに必要な電子の最大数を、理論的に決定することができ、これによって周期表から推測された結論が確認される。
量子論がさらに発展すると、ある元素は不完全な殻(最外殻、原子価殻)をただ1つだけもち、またある元素には内側の殻にも不完全な殻があるのはなぜかということが明らかになった。後者に該当するのは希土類元素として知られる元素で、これらの元素はあまりにも性質がよく似ているため、メンデレーエフは当時わかっていた14個の元素を、周期表の1つの場所にあてはめなければならなかったものである。希土類元素の族にはランタノイドに属する元素がふくまれる。
| VII. | 長周期型周期表 |
原子構造に関する量子論を周期律に応用することによって、元素の電子的な解釈に力点をおいた、いわゆる長周期型周期表がつくりだされた。長周期型周期表における各周期は、新しい電子殻の構築に対応している。たがいに直接対応する関係にある元素は、完全に類似の電子構造をもつ。長周期の初めの部分と終わりの部分では電子が最外殻にくわえられ、中央の部分では内側の殻の電子数が増加する。
周期律は、融点、沸点、密度、結晶構造、硬度、電気伝導率、熱容量、熱伝導率などといった物理的性質や、反応性、酸性度、塩基性度、原子価、極性、溶解度といった化学的性質をはじめとする、元素がもつさまざまな性質をたがいに関係づけるためにみいだされたものである。
→ 同位体