| 検索ビュー | プラスチック | 項目ビュー |
| I. | プロローグ |
合成樹脂ともいう。工業的に合成される高分子化合物をさす。
本来は、外から力をくわえることで変形する性質、つまり可塑性をあらわすギリシャ語のPlastosに由来する言葉だったが、19世紀後期から高分子物質の工業生産が盛んになるにつれ、合成された高分子物質をプラスチックとよぶようになった。プラスチックという名称は、日本では適度の硬さをもつ繊維以外の合成高分子化合物に対してのみ使用され、ナイロンなどの合成繊維(→ 繊維)や、弾力のある合成ゴム(→ ゴム)は、プラスチックとしてあつかわない。しかし欧米では、合成繊維、合成ゴムをはじめ、植物繊維のセルロース、ワックス、天然ゴム、樹脂など天然の高分子物質も、プラスチックにふくまれる。
プラスチックの最大の特徴は、可塑性にすぐれているため、成形加工が容易におこなえることである。製品となる前のプラスチックはチップ(細片)・粉末・液体などの形で、これを押出成形、金型をもちいる成形、注入成形によって、思いどおりの形状の製品をつくることができる。合成繊維の紡糸も基本的には同じで、未加工の合成樹脂を小さなノズルからおしだして繊維にする。木材・石材・金属と比較すると、成形加工にかかる手間は格段に少ない。そのほかの特徴としては、軽量なわりに強度が高いこと、熱と電気を伝導しにくいこと、酸・アルカリ・有機溶媒に対して耐性があり、化学変化をうけにくいことがあげられる。これらの利点によって、19世紀に登場した新材料のプラスチックは、短期間のうちに世界的規模で普及することになった。
| II. | 歴史 |
人類が開発した最初のプラスチックはセルロイドである。
| 1. | セルロイド |
1863年、象牙をつかってビリヤードの球を製造していたアメリカの会社が、象牙にかわる人造の代替品の開発に対して1万ドルの懸賞金をかけた。これに挑戦したアメリカの発明家ジョン・ハイアットは、窒素含有量の少ないニトロセルロース(別名パイロキシリン)をショウノウと少量のアルコールで可塑化した化合物とその加圧成形法を開発することに成功した。ジョンの兄イサイアがこれをセルロイドと名づけた。セルロイドという商標で特許がとられ、兄弟は72年にセルロイド・マニュファクチャリング社を設立、生産が開始された。
セルロイドは発火しやすく、光にあたると劣化しやすいという難点もあったが、玩具(がんぐ)、文房具、写真フィルム、入れ歯、ワイシャツのカラー(襟)など、さまざまな製品がつくられるようになり、商業的には大きな成功をおさめた。セルロイドは第2次世界大戦後、より安価ですぐれたプラスチックが開発されるまで、大量に利用されつづけた。
| 2. | 人造繊維 |
セルロイドの発明の後には、同様に天然のセルロースを原料にもちいた半合成繊維レーヨンが発明された。レーヨンは天然セルロースを分解したのち、人工的に重合させた繊維で、現在でも大規模に生産されている(→ ポリマー)。
| 3. | ベークライト |
1906年にはベルギー系アメリカ人の化学者レオ・ベークランドが、フェノール樹脂を開発し、のちに「ベークライト」の商標名で商品化した。フェノール樹脂はフェノール(石炭酸)とホルムアルデヒドを原料とするプラスチックで、人造の化学物質から合成された最初の完全な合成プラスチックとなった。
| 4. | 高分子化学の進歩 |
プラスチックの開発がはじまった当時、プラスチックの分子構造は、じゅうぶんに解明されておらず、もっぱら「多数の分子が分子間力によってひきあい、緩やかな集合体を形成している」とする会合体説が有力だった。しかし1920年になって、ドイツの化学者ヘルマン・シュタウディンガーが、「プラスチックは多数の分子が化学結合によってつながり、鎖状の巨大分子を形成している」とする高分子説を発表した。高分子説は学界に論争をまきおこしたが、30年代にその正しさがみとめられ、「高分子化学」という新しい科学の分野が成立することになった。
プラスチック開発もこれに刺激され、新しいプラスチックが次々と生みだされていった。1920~30年代にかけて開発されたプラスチックには、成形品と繊維にもちいられた酢酸セルロース、プラスチックパイプやコーティング、電線被覆にもちいられるポリ塩化ビニル、食器類や電気部品に使用される尿素樹脂、ラミネートガラスのバインダー用に開発されたアクリル樹脂などがある。
この時期に開発されたなじみ深いものとして透明なアクリル樹脂の一種であるメタクリル酸メチル樹脂がある。1937年に登場し、ルーサイト、プレキシグラスという商品名で市場にでた。これは非常にすぐれた光学的性質をもつ材料で、第2次世界大戦中は軍用機の風防ガラスとして利用された。現在でも航空機や車両の窓につかわれるほか、眼鏡やカメラのレンズに好適であり、さらにハイウェーの照明、広告のイルミネーションなどにすばらしい効果を発揮した。
同じ年に商品化されたポリスチレンは、電化製品、台所用品、自動車部品などにひろく利用されている。ポリスチレンは、高い耐薬品性、低温でのすぐれた機械的性質、非常に低い水分吸収率などの特徴をもっているため、高周波電磁波の絶縁体や、冷蔵庫の部品、高空を飛行する飛行機部品のように低温で使用されるものにとくに適した材料になった。
1938年に発見され、戦中耐熱性、耐薬品性にすぐれたポリテトラフルオロエチレン(四フッ化樹脂)が開発されたが、このフッ素樹脂が「テフロン」の商標名で生産されるようになったのは、50年になってからである(→フッ素の「用途」)。また30年代には、最初の合成繊維であるナイロンが開発された。
| 5. | 第2次世界大戦 |
第2次世界大戦(1939~45年)が勃発(ぼっぱつ)すると、枢軸諸国(日本・ドイツ・イタリアなど)、連合諸国(アメリカ・イギリス・ソ連・フランスなど)ともに天然原料の深刻な欠乏になやまされ、その解決のためにプラスチック工業が大きく発展することになった。
たとえばドイツは、はやくから天然ラテックスの輸入をたたれたので、その代替品となる合成ゴムの開発を強力におしすすめた。同様にアメリカでも、日本の参戦によって、天然ゴム(→ ゴム)や絹、多くの金属などの天然資源を極東地域から輸入することが不可能になった。そのためアメリカはプラスチックによる代替品の開発と量産化をおしすすめた。その結果、ナイロン製の繊維製品が大量にでまわり、ポリエステルが装甲用途そのほかの軍需用途にもちいられた。また合成ゴムの生産量も、大戦の間に飛躍的に増大した。
| 6. | 戦後の発展 |
第2次世界大戦で加速されたプラスチック産業の研究・開発は戦後もつづいた。とくに戦後、急速に発達した石油化学工業によって大量の原料が供給されたため、量産された安価なプラスチック製品が産業、家庭の各方面にひろまった。
研究面でプラスチック工業の発達に大きく貢献したのは、1952年、ドイツの化学者カール・チーグラーによるチーグラー触媒(トリエチルアルミニウム・四塩化チタン系の触媒)の発見である。それまで高温高圧下で低密度ポリエチレン(LDPE)が生産されていたが、チーグラー触媒をもちいて常温常圧でも合成が可能な高密度ポリエチレン(HDPE)がつくられるようになり、ポリエチレンの生産量は飛躍的に増加した。さらに、イタリアの化学者G.ナッタはチーグラーの研究を発展させ、54年にポリプロピレンの合成に成功した。この業績によってチーグラーとナッタは、63年にノーベル化学賞をともに受賞した。ポリエチレンとポリプロピレンは、現在でも大量に生産されている。→ポリエチレンの「合成法の歴史」
エンジニアリングプラスチック(略してエンプラとよばれることが多い)の発達は、戦後のプラスチックの発達の中でもとくに重要である。ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリアミドなど、強靭(きょうじん)で、耐熱性・耐薬品性にすぐれたエンジニアリングプラスチックの登場によって、プラスチックの利用は機械部品や耐熱部品にまでひろがった。また、プラスチック製の安全ヘルメットや電子機器部品なども、さらに強度が高く性能のすぐれたものが製造可能となった。
新しいプラスチックの開発はさらにつづいたが、なかでも繊維強化プラスチック(FRP)は注目すべきものである。FRPはガラス繊維(→ ガラス)や炭素繊維などの強化材をプラスチックにくみこんだもので、軽量だが強度は鉄やアルミニウムに匹敵する。近年では航空機、自動車、スポーツ用品など、多くの分野でFRPが使用されている。
| III. | プラスチックの分類 |
プラスチックを分類する場合、生成するときの重合反応の違いから分類する方法、熱に対する性質の違い、つまり加工性から分類する方法、化学結合(→ 化学反応)の特徴から分類する方法の3通りがある。
| 1. | 重合反応 |
プラスチックの巨大な分子は、モノマー(単量体)とよばれる小さな分子が多数結合してポリマー(重合体)となることで形成される。モノマーが次々と結合していく反応を重合とよぶが、重合には大きくわけて付加重合と縮合重合(重縮合)の2種類がある。
付加重合をおこすモノマーはエチレン、プロピレン、スチレンなど、炭素の二重結合をもっていて、それぞれのモノマーにおける二重結合の部分がたがいに結合して、大きく長い分子をつくる。付加重合をおこすには反応性の高い重合開始剤が必要だが、ひとたび重合開始剤が添加されるとモノマーは連鎖的に反応していく。付加重合では、水分子などの副生成物が生じることはない。また、付加重合によって生成したポリマーの分子は一定の長さとなる。ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレンなどが、付加重合によって合成されるプラスチックの代表である。一般に、付加重合で生成するポリマーの分子量は、次にあげる縮合重合で生成するものよりもずっと大きくなる。
縮合重合をおこすモノマーは、アミノ基–NH2、カルボキシル基–COOH、ヒドロキシル基(水酸基)–OHなどの官能基を2個以上、同一の分子内にもっているもので、それぞれのモノマーの官能基が反応して結合が生じ、ポリマーがつくられていく。結合が生じる際には官能基の一部の原子がとりさられるため、縮合重合では水、アンモニア、エチレングリコールなどの小さな分子が副生成物として生じる。縮合重合は加熱によってゆっくり進行し、生成するポリマーの分子は、さまざまな長さとなる。縮合重合によって合成されるのはポリウレタン、ポリエステルや、合成繊維のナイロンなどである。
これら2つは重合の典型的なものである。そのほか重合にはいくつかの種類があり、付加反応による重合でありながら縮合重合のように反応がゆっくりと進行する重付加、環状化合物の分子の環がひらくことで結合が生じる開環重合、付加反応と縮合反応がともに進行する付加縮合がある。
| 2. | 加工性(熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂) |
プラスチック合成の最初の段階では、比較的分子量の小さなポリマーが生成する。このポリマーを材料として、押出成形または金型成形することでプラスチック製品が成形される。その際、加熱によって軟化し、冷却によって硬化するプラスチックを熱可塑性樹脂とよぶ。熱可塑性樹脂のポリマーは直線状で、1つのポリマーは2個の反応点をもつ。加熱するとそれぞれの反応点が結合し、さらに大きな直線状のポリマーを形成するが、分子の熱運動もはげしくなり自由にうごけるようになるので、全体としてはやわらかくなる。直線状のポリマーは溶媒にとけるため、熱可塑性樹脂の場合は溶液の状態から成形することも可能である。
熱可塑性樹脂とは逆に、加熱によって硬化するプラスチックを熱硬化性樹脂とよぶ。熱硬化性樹脂のポリマーは1分子当たり3個以上の反応点をもち、加熱すると3次元の網目構造を形成し、巨大なポリマーとなる。この網目構造のために分子の自由な運動ができなくなるので、ひとたび加熱すると二度と軟化せず、溶媒にもとけなくなる。
熱可塑性樹脂は冷却によって容易に硬化し、加熱と冷却の繰り返しで何度でも成形できるので、大量生産に適している。これに対して熱硬化性樹脂は、硬化が完了するまで時間がかかり、しかも加工できる回数が1回だけであるため、量産には適さない。その反面、耐熱性・耐薬品性の点で、熱可塑性樹脂よりもすぐれている。
おもな熱可塑性樹脂はポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂、塩化ビニル樹脂、メタクリル酸メチル樹脂、フッ素樹脂、ポリエステル、ポリカーボネートなどで、ナイロンもこれにふくまれる。また、熱硬化性樹脂のおもなものは、フェノール樹脂(→ フェノール)、ユリア(尿素)樹脂、メラミン樹脂(→ メラミン)、不飽和ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ケイ素樹脂などである。
| 3. | 化学結合の特徴 |
炭素の二重結合をもつモノマーは、付加重合によって、炭素原子が鎖状に結合した長いポリマーを形成する。モノマーがエチレンCH2=CH2、プロピレンCH3CH=CH2など、二重結合1個をもつオレフィン(鎖式炭化水素)の場合には、生成するポリマーはポリオレフィンとして分類される。ポリオレフィンのおもなものはポリエチレン、ポリプロピレンなどである。そのほかにも炭素の二重結合をもつモノマーはメタクリル酸メチルCH2=C(CH3)COOCH3、スチレンC6H5CH=CH2、塩化ビニルH2C=CHClなど数多い。これらのモノマーの重合によって、それぞれポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルが生成する。
縮合重合ではモノマーの官能基同士が反応し、さまざまな形態の結合が生じる。たとえばモノマーのアミノ基–NH2がべつのモノマーのカルボキシル基–COOHと反応した場合には、モノマーはアミド結合–CO–NH–によってむすばれ、生成したポリマーはポリアミドとよばれる。ポリアミドの例としてはナイロンがあげられる。またカルボキシル基–COOHをもつモノマーとヒドロキシル基(水酸基)–OHをもつモノマーの反応ではエステル結合–CO–O–が生じ、生成したポリマーはポリアミドとよばれる。同様にエーテル結合–O–をもつポリマーはポリエーテル、ウレタン結合–OCONH–をもつポリマーはポリウレタンとよばれる。
| IV. | 生産 |
プラスチックの生産では、まず原料から基本となるポリマーが合成される。ポリマーはプラスチックの用途にあわせて調製され、最後にさまざまな加工方法で最終的な製品にしあげられる。
| 1. | 原料 |
初期のプラスチックの多くは、植物性の物質を原料としてつくられた。たとえば綿のセルロースをはじめ、種子の油、エンバク(燕麦)の穀皮からとったフルフラール、デンプンなどが原料としてつかわれた。動物性の物質では、牛乳にふくまれるタンパク質のカゼインが原料となった。20世紀になってプラスチックの研究がすすむと、石炭からえられるコールタールなどが原料として注目されるようになった。ナイロンの原料も最初のうちは石炭、空気、水であり、ナイロン11(いちいち)は今でもヒマシ油を原料にしている。
第2次世界大戦後は安価な石油が利用できるようになったため、今日ではプラスチックのほとんどが、石油を原料とした化学物質から生産されている。しかし現在では省資源の立場から、石油、石炭など化石燃料以外の原料からプラスチックを生産する研究がすすめられている。なかでも一酸化炭素やメタノール(メチルアルコール)など、単純な炭化水素から高分子を合成するC1化学が注目されている。
| 2. | ポリマーの合成 |
プラスチックを製造する最初の段階はモノマーの重合である。すでに説明したように、2つの基本的な重合方法、縮合反応と付加反応がある。これらの重合はさまざまな方法でおこなわれる。工業的にもっとも利用されるのは懸濁重合法で、大量の水にモノマーを分散させて重合をおこなう。懸濁重合法により生成するポリマーは小粒状となる。乳化剤でモノマーを乳化し、乳濁液(エマルション)として重合をおこなう乳化重合法も、しばしばおこなわれる。乳化重合法では粉末状のポリマーがえられる。水によって重合がさまたげられる場合には、モノマーを有機溶媒にとかして重合させる溶液重合法がもちいられる。
2種類のモノマーを反応させる縮合重合の場合、モノマーの反応性が高い場合は、界面重縮合をおこなうことができる。界面重合法では水と有機溶媒のそれぞれに、ことなる官能基をもつモノマーをとかして重合させる。水と有機溶媒は混合することがないので、重合反応は、水と有機溶媒が接する界面でおこなわれ、膜状のポリマーが生成する。生成と同時にポリマーを界面から除去していけば、連続的に重合をおこなうことができる。
モノマーを液体に分散せずに重合させる方法としては、塊状重合法があげられる。塊状重合ではモノマーに重合開始剤をくわえ、加熱して重合をおこす。メタクリル樹脂はこの方法で生産される。また、ポリエチレン製造の一部は、気体のモノマーを重合させる気相重合法でおこなわれる。
| 3. | 添加剤 |
プラスチック製品に必要な特性をあたえるために、ポリマーにはさまざまな添加剤がくわえられる。酸素やオゾンによる酸化によってポリマーが劣化するのをふせぐための酸化防止剤や、ポリマーを柔軟にする可塑剤、摩擦をへらす潤滑剤が添加される。ポリマーの多くは無色なので、製品に着色するために顔料が添加され、さらに屋外で使用される製品には、紫外線による劣化をふせぐために紫外線安定剤が添加される。断熱材や梱包材につかわれる発泡スチロールは、ポリスチレンに発泡剤をまぜて製造される。そのほか難燃化剤や静電気防止剤など、製品の用途にしたがってさまざまな添加剤がくわえられる。
多くのプラスチックはコンポジット(複合材料)として製造される。それにはガラス繊維、炭素繊維などの強化材を樹脂マトリックスにくわえる。複合材料は金属に匹敵する強度と安定性をそなえ、金属より軽量である。
| 4. | 成形と仕上げ |
プラスチックの成形を能率よくおこなうためには、一定時間に処理できるポリマーの量を多くし、加熱や冷却を手際よくおこない、製品1個当たりの製造に要する時間を少なくしなければならない。その必要性からプラスチックの成形を連続的におこなうための成形法が、数多く開発されてきた。
| 4.A. | 押出成形 |
押出成形は熱可塑性樹脂の成形に広く利用されている方法で、プラスチックを一定の形をしたダイ(金口)や型をとおしておしだし、必要な断面をもつ製品に加工する。たとえばプラスチックパイプはこの方法で製造され、円形のダイを使用すれば、円形の断面をもつパイプができる。押出成形機は円筒形のシリンダーをそなえ、プラスチックはシリンダー内におくられると融解され、ピストンまたはらせん状のスクリューによってダイや型からおしだされる。冷却による固化はその直後におこなわれる。この押出成形機は次にのべる吹込成形や射出成形でも、プラスチックを鋳型におしだす役目をはたす。
| 4.B. | 吹込成形 |
吹込成形は、別名ブロー成形ともいい、びん型容器を製造する方法で、最初に押出成形機で管状の成形品(パリソン)をつくる。次に溶融したままのパリソンをびん状の金型にいれ、さらに圧縮空気をパリソンの一端から内部におくる。パリソンは風船のようにふくらみ金型の壁に密着するので、冷却して固化した後にとりだせば、びん状の製品がえられる。
| 4.C. | 射出成形 |
射出成形では押出成形機をつかって、溶融したプラスチックを金型におしこむ。金型は上下にわかれており、上の金型と下の金型の間に、ちょうど製品の形をした隙間(すきま)がつくられている。隙間にプラスチックをおしこみ、冷却したあと金型をはずせば、所定の形の製品がえられる。
| 4.D. | 射出吹込成形 |
射出成形と吹込成形をくみあわせた射出吹込成形も、効率の高い成形法として利用されている。射出吹込成形機には射出成形と吹込成形の2つの機構がくみこまれていて、射出成形でパリソンをつくったあと、ただちに吹込成形に移行して製品をしあげる。
| 4.E. | 圧縮成形 |
圧縮成形はおもに熱硬化性樹脂の成形に利用される方法で、上下にわかれた金型をつかう。粉末のポリマーを金型の隙間にいれて上下の金型をあわせ、加熱しながら金型に圧力をくわえると、溶融したポリマーは隙間の隅々をみたして硬化し、金型の隙間の形状にそった形の製品となる。
| 4.F. | トランスファー成形 |
トランスファー成形は圧縮成形に射出成形の機構をくわえたもので、あらかじめポリマーを加熱室で加熱して流動性をもたせたあと、圧縮成形の金型に注入して硬化させる。
| 4.G. | 膜の成形 |
プラスチックのシートやフィルムを製造する場合には、カレンダー法がもちいられる。カレンダー法では、回転する幅のひろいロールをいくつも使用して、溶融したプラスチックをひきのばす。そのほか吹込成形と同じ要領で、環状のダイからおしだした管状の成形品に空気をおくり、膨張させて薄膜をつくるインフレーション法や、横長のダイからとけたプラスチックをおしだして急冷固化させるTダイ法なども、広くつかわれている。
| 4.H. | 特殊な成形 |
プラスチックの種類によっては、特殊な製法を必要とするものもある。たとえば耐熱性の高いテフロン(ポリテトラフルオロエチレン)は、溶融状態で高い粘性をもち、あつかいにくくなるため、融点以下で加熱して硬化させる焼結法で成形される。ポリアミドの中にも、類似した方法で成形されるものがある。
| V. | 用途 |
プラスチックは工業用、家庭用の両面で広くもちいられており、その用途は日に日に拡大している。
| 1. | 包装 |
柔軟性、断熱性、防水性にすぐれたプラスチックは、包装材料として適しており、多量につかわれている。低密度ポリエチレン(LDPE)は包装用のシートとして大量に消費される。LDPEよりも強靭な高密度ポリエチレン(HDPE)も、ゴミ袋など厚手のシートとしてつかわれている。そのほか包装用に利用されるプラスチックには、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンがある。ポリ塩化ビニリデンとポリプロピレンは気密性が高く、前者は酸素に対し、後者は水蒸気に対して気密性が高いため、食品の包装に適している。ポリプロピレンはまた、家庭用のカーペット、ロープ用の繊維としてもちいられている。
| 2. | 建築材料 |
包装に利用されるプラスチックの多くは、建築材料としても利用される。屋根材、羽目板、床タイルをはじめ、水道管のパイプ、雨どい、窓枠など、家屋の多くの部分に、ポリ塩化ビニルなどさまざまなプラスチックが利用されている。発泡スチロール(→ スチレン)など断熱性にすぐれたプラスチックは、壁、屋根などのような外気でひやされる部分に断熱材として使用される。ポリスチレンは、電線の絶縁材としてもちいられている。
| 3. | 自動車材料 |
自動車産業でもプラスチックの需要は大きい。車内のシートやフロントパネルはもとより、燃料管、燃料ポンプなどの動力系統や各種の電子装置にも、強靭で耐熱性の高いエンジニアリングプラスチックがつかわれている。近年では車体にも、ガラス繊維をくみこんだ繊維強化プラスチック(FRP)が使用されている。こうした利用は、高性能のプラスチックが開発されてきたことと、燃費の改善のため、車体を軽量化する必要がでてきたことによる。
このほかにも、人工衛星、航空機などの航空宇宙機器のような高度な技術を必要とする分野から、家電製品、事務用品、スポーツ用品、玩具など日用品にいたるまで、プラスチックの利用は大きくひろがっている。
| VI. | 健康と環境に対する影響 |
プラスチックは化学的には不活性な物質なので、プラスチック製品をごくふつうにつかっているかぎりは、使用者に害をおよぼすことはない。しかしプラスチックの製造過程では、毒性の強い化学物質が使用される。たとえばベンゼンは、モノマーの原料や溶媒として大量につかわれるが、危険な発癌物質である。同様に、モノマーの中にも癌をひきおこすと考えられている物質が存在する。また、プラスチックの材料や可塑剤として使用されているビスフェノールAやノニルフェノール、フタル酸ジ-2-エチルヘチレンなどは環境ホルモンとしてうたがわれている。プラスチックの製造工程では、これらの化学物質が環境中に放出されないよう、入念な注意をはらわなければならない。このことはプラスチックの製造にかぎらず、化学工業全般に共通する問題点である。
| 1. | プラスチック廃棄物 |
プラスチックは本来、天然には存在しない物質であり、自然環境の中に放置されても微生物の作用で分解されることはない。この点でプラスチックは、天然の高分子物質である木材や紙などとは大きくことなる。化学工業の急速な発展とともに、年間約900万tといわれるプラスチック廃棄物のもたらす環境問題も深刻となり、省資源の立場からもプラスチック製品のリサイクルが検討されるようになった。
リサイクルは1980年代あたりから徐々に実行されてきたが、日本では1997年(平成9)4月に施行された「容器包装リサイクル法」や、2001年4月施行の「家電リサイクル法」によって、食品容器や清涼飲料用のポリエチレンテレフタレート(PET)ボトル、家電製品などについて再生利用がおこなわれている。ただし自動車部品や、各種の材料がくみあわさった廃棄物については、リサイクルが確立されておらず、解決法が模索されている。→ ゴミ処理
| 2. | 分解性プラスチック |
プラスチック廃棄物の処理が大きな環境問題となる中で、その対策として分解性プラスチックが注目をあつめている。分解性プラスチックには、光(おもに紫外線)により分解する光分解性プラスチックと、微生物によって分解される生分解性プラスチックの2種類がある。また生分解性プラスチックは、微生物によりつくられるものやデンプンやセルロースといった天然素材を利用したもの、化学合成によるプラスチックに分解性を付加したものなどがある。とくに微生物によって分解可能なものは、愛称がグリーンプラとつけられ、2001年6月から認証マークが表示されており、年間120品目が認定されている。