| 原子炉 | 項目ビュー | ||||
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| V. | 原子炉の種類 |
原子炉は、発電の原理と使用目的によって、いくつかに分類される。使用目的による分類では、研究炉や実験炉、材料試験炉、ラジオアイソトープ(放射性同位体)生産炉、プルトニウム生産炉、発電炉、推進用炉(舶用炉など)、二重目的炉(プルトニウム生産と発電)、多目的炉(暖房、海水脱塩、化学プロセス蒸気利用など)といった分類ができる。発電炉と推進用炉をあわせて動力炉ともよぶ。プルトニウム生産炉や原子力潜水艦・原子力空母(→ 航空母艦)など軍艦の推進用炉を軍用炉と分類することもできる。
開発段階による分類としては、実験炉、原型炉、実証炉、初期実用炉、実用炉(商用炉)といった区分がある。燃料の種類によってはウラン炉(天然ウラン炉、濃縮ウラン炉)、トリウム炉、プルトニウム炉といった分類が、核分裂に利用する中性子の速度(エネルギーの大きさ)によっては高速中性子炉、熱中性子炉といった分類ができる。
高速中性子から熱中性子に速度をおとす減速材や、炉の冷却と動力をえる目的で炉心から熱をうばう冷却材に何をもちいるかによって、ふつうの水(軽水)を利用する軽水減速軽水冷却炉(軽水炉)、重水(→ 重水素)を使用する重水減速重水冷却炉(重水炉)、黒鉛(→ 石墨)をつかう黒鉛減速炭酸ガス冷却炉(ガス冷却炉)など数多くのタイプがある。
核燃料と減速材が均質な混合物となっている原子炉を均質炉、混合せずに一定間隔をおいて配列した原子炉を非均質炉という。また、炉心で発生する中性子を利用し、もやした核燃料中の核分裂性物質の量をうわまわる核分裂性物質を生産できるようにした原子炉を増殖炉、使用量をうわまわらないまでもかなりの量の核分裂性物質を生産できるようにした原子炉を転換炉と名づけている。
| 1. | 軽水炉(LWR) |
軽水炉(LWR:Light Water Reactor)は、低濃縮ウランを燃料とし、軽水を減速材兼冷却材としてつかう原子炉で、もっとも多く普及している。軽水炉には、沸騰水型と加圧水型の2種類がある。
| 1.A. | 沸騰水型軽水炉(BWR) |
沸騰水型軽水炉(BWR:Boiling Water Reactor)は、冷却水を70気圧(=約7メガパスカル:Mpa)程度の比較的低圧力で使用し、炉心で沸騰するタイプの軽水炉である。原子炉の圧力容器でつくられた蒸気がそのまま発電用蒸気タービンにおくられる。蒸気は冷却して水にもどされ(復水)、ふたたび炉心におくられる。加圧水型軽水炉のような熱交換器がないので、簡単な構造になり、熱効率が高いが、タービンをまわす蒸気には放射能がふくまれる。アメリカのゼネラル・エレクトリック(GE)が開発した。日本では日立製作所と東芝が製造しており、東京電力をはじめ東北、中部、中国、北陸の各電力会社が採用している。
| 1.B. | 改良型沸騰水型軽水炉(ABWR) |
改良型沸騰水型軽水炉(ABWR:Advanced Boiling Water Reactor)は、1996年(平成8年)に東京電力柏崎刈羽原子力発電所(新潟県柏崎市、刈羽村)に採用され、以後の沸騰水型軽水炉の主流となっているもので、経済性優先の新型炉。日立製作所と東芝、ゼネラル・エレクトリックが共同で開発した。従来の沸騰水型軽水炉では、原子炉圧力容器の外側にとりつけていた再循環ポンプを改良型では容器内にうつしたことで、圧力容器をとりかこんでいたパイプがなくなり、パイプの破断事故の危険性が低下したなどとされる。しかし一方では、圧力容器に直接とりつけられることから、ポンプの事故が圧力容器の破壊につながりかねないとの指摘もある。
| 1.C. | 加圧水型軽水炉(PWR) |
加圧水型軽水炉(PWR:Pressurized Water Reactor)は、世界でもっとも多く利用されている原子炉である。炉心を冷却する1次冷却水を約150気圧(=約15MPa)に加圧して沸騰をおさえ、高温(約325°C)に加熱する。加熱された水は、蒸気発生器とよばれる熱交換器によって2次冷却水に熱をつたえ、2次冷却水を沸騰させて蒸気をつくりだす。蒸気は発電用タービンをまわしたのち、水にもどされ、ふたたび蒸気発生器におくられる。
タービンをまわす蒸気には放射能がふくまれないことになるが、蒸気発生器の細管(伝熱管)に大きな負担がかかる。アメリカのウェスチングハウス・エレクトリック(WH)が開発、世界初の原子力潜水艦ノーチラス(1954年完成)に採用された。日本では三菱重工業が製造しており、関西電力や四国、九州、北海道の各電力会社が採用している。
| 1.D. | 改良加圧水型軽水炉(APWR) |
改良加圧水型軽水炉(APWR:Advanced Pressurized Water Reactor)は、1981年(昭和56年)からウェスチングハウス・エレクトリック、三菱重工業と、加圧水型軽水炉を所有する日本の電力会社各社が開発している新型炉。いまだ実際に建設されたものはないが、日本原子力発電の敦賀原子力発電所(福井県敦賀市)で採用される予定である。
| 2. | 重水炉(HWR) |
重水炉(HWR:Heavy Water Reactor)は、重水(D2O)を減速材としてもちいる原子炉。冷却にも重水をもちいるカナダ型炉(CANDU:Canadian Deuterium Uranium Reactor)、炭酸ガス(二酸化炭素)冷却の重水減速ガス冷却炉(HWGCR:Heavy Water Gas-Cooled Reactor)、軽水冷却の蒸気発生重水炉(SGHWR:Steam-Generating Heavy Water Reactor)などがある。後出の新型転換炉も重水炉のひとつである。
重水は、重水素(ジウテリム)の酸化物で、通常の水の中にも約0.015%存在しているが、これを分離して純度の高い重水をつくる。重水を減速材にすると、減速能が軽水の約1/10しかなく、軽水ほどは中性子が吸収されない。だが、そのために低濃度の235U(ウラン235)でも核燃料として利用でき、消費量も少ないという利点がある。しかし、重水の精製に大規模な設備を要するために電力の価格が高くなり、重水は中性子を吸収すると管理がむずかしいトリチウム(三重水素)になってしまう。
| 3. | ガス冷却炉(GCR) |
ガス冷却炉(GCR:Gas-Cooled Reactor)は、炭酸ガスやヘリウムなどの気体を冷却材としてもちいる原子炉。上述の重水減速ガス冷却炉もそのひとつだが、代表的なものとしては、天然ウランを燃料とする炭酸ガス冷却、黒鉛減速のコールダーホール型炉(Calder Hall Type Power Reactor)がある。コールダーホールはイギリスの地名で、ここに建設された原子炉を原型とするので、この名がつけられた。1956年に、最初の実用炉(商用炉)として稼働を開始した原子炉でもあるが、もともとはプルトニウムの生産を主とし、発電を従とする二重目的炉である。
イギリスのほかにフランスやソビエト連邦(現、ロシア連邦)などでつくられ、日本ではすでに1963年に稼働を開始し、98年(平成10年)に廃炉となっている日本原子力発電・東海発電所(茨城県東海村)の日本初の商業用原子炉がコールダーホール型炉だった。より厳密には改良型コールダーホール型炉で、燃料棒の被覆にマグネシウム合金のマグノックスをもちいることから、マグノックス炉とよばれるものである。イギリスでは、濃縮ウランを燃料とする改良型ガス冷却炉(AGR:Advanced Gas-Cooled Reactor)もつくられている。
| 4. | 増殖炉と転換炉 |
増殖炉(Breeder)と転換炉(Converter)は他の原子炉と比較して多くの核分裂性物質が炉心で生産できるようにした原子炉。核分裂によって消費される核分裂性の原子核よりも、それにともなう中性子によって新しく生成される核分裂性の原子核が多くなるような核分裂反応を「増殖」といっている。増殖の効率は「増殖比」という数値でしめし、
| 4.A. | 増殖の仕組み |
増殖炉の多くは、ウランの放射性同位体である238U(ウラン238)を増殖物質としてつかっている。238Uが炉の中で中性子を吸収すると、ベータ崩壊(→ 放射性崩壊)によって新しい核分裂性物質239Pu(プルトニウム239)に変換される。この一連の原子核反応は

そして、この反応では、最終生成物の239Puが中性子を吸収すると原子核が分裂して、平均2.8個の中性子を放出する。増殖炉では、放出された中性子の1個は次の核分裂をおこし、連鎖反応が持続されるように制御されている。平均して約0.5個の中性子が増殖炉構造や冷却材に吸収されてうしなわれ、最終的にのこった1.3個の中性子が238Uに吸収されて反応が継続し、さらに239Puを生産することになる。
| 5. | 高速増殖炉(FBR) |
高速増殖炉(FBR:Fast Breeder Reactor)は高速の中性子を利用する増殖炉。プルトニウムの生産を最大にするためには、核分裂をひきおこす中性子の速度を減速せずにもちいるのがよい。そこで、高速の中性子をもちいる高速増殖炉が開発されてきた。
冷却材としてはナトリウムや鉛などの液体金属、ヘリウムなどがあるが、日本の高速増殖炉である「もんじゅ」は、金属の液体ナトリウムを冷却材としてもちいている。燃料としてはプルトニウムや濃縮ウランがつかわれ、酸化物や窒化物、金属などの形態がありうる。現存のものは、プルトニウム・ウラン混合酸化物燃料(MOX:Mixed Oxide)をもちいている。炉心部をとりかこんで天然ウランまたは減損ウラン(再処理で回収したウラン:→ 回収ウラン)、劣化ウラン(→ 濃縮ウラン)のブランケット燃料(実際には、燃料というよりプルトニウムへの転換用)が配置される。
高速増殖炉の開発は、アメリカでは1950年以前にはじまり、イギリスやフランス、ドイツ、旧ソ連(ソビエト連邦)などでも開発がおこなわれてきたが、多くは失敗したか、中断されている。世界の高速増殖炉のなかでも、もっとも開発がすすんでいたはずのフランスの実証炉スーパーフェニックス(SPX)は、86年から稼働を開始したが、たび重なる事故の後、89年に廃炉となった。日本でも動力炉・核燃料開発事業団(現、日本原子力研究開発機構)が福井県敦賀市に建設した高速増殖炉の原型炉「もんじゅ」は、95年の12月にナトリウム漏れ・火災事故をおこし、停止している。しかし2005年5月に最高裁判所が設置有効をみとめる判断をしめした。06年、アメリカは核燃料サイクルと高速増殖炉の技術開発を推進する国際原子力エネルギーパートナー・シップ(GNEP:Global Nuclear Energy Partnership)を開始した。
| 6. | 新型転換炉(ATR) |
新型転換炉(ATR:Advanced Thermal Reactor)は新型炉のひとつ。日本独自の技術で開発された核燃料サイクル開発機構(現、日本原子力研究開発機構)が福井県敦賀市に建設した新型転換炉「ふげん」(出力16万5000kW)は、冷却材に軽水をつかい、減速材には重水、燃料としてはプルトニウム・ウラン混合酸化物とウラン酸化物を使用していた。だが、1978年(昭和53年)の稼働開始以降も、重水漏れなど事故が多発し、2003年(平成15年)3月に廃炉となった。電源開発が青森県大間町に建設を計画していた実証炉は、発電コストが高いことを理由に1995年、電力業界が国などにもうしいれて、計画を白紙撤回させた。