| 検索ビュー | ガラス | 項目ビュー |
| I. | プロローグ |
ケイ酸塩類(→ ケイ酸塩鉱物)などを高温でとかしてかためた物質で、かたくてもろく、すきとおっている。おもにホウ砂などのホウ酸塩(→ ホウ酸)またはリン酸塩(→ リン酸)とともに高温で溶融された二酸化ケイ素(シリカ)からつくられる。ガラスは結晶した固体ではなく、非結晶質(→ アモルファス)の固体のひとつである。化学的には溶融状態にある液体を冷却するとき、結晶化しないままで凝固する状態のことをガラス状態という。ポリスチレンやポリエステルといった有機物質もガラス状態になることから、メタクリル酸メチル樹脂(→ アクリル樹脂)の注形板などを有機ガラスもいう。これに対し、無機質からなるものを無機ガラスともいう。ガラスは、火山岩の一種である黒曜石などのかたちで自然界でも発見される。
ガラスの分子構造は結晶のように規則ただしくないが、網状の高分子構造となっている。そのため分子間の結合力はじゅうぶんで、機械的な強さがある。冷却するとかたくなり、加熱すると変形できる。通常は透明だが、半透明や不透明にすることもできる。色も、成分によって変化させることができる。高温で溶融されたガラスは、さまざまな加工法で形をつくることができる。ガラスは、冷却してから、ダイヤモンドなど硬度の高い道具で彫刻することもできる。低温ではもろく、われた表面は貝殻状になる。黒曜石や隕石起源のテクタイトのような自然のガラスは、合成のガラスと同じ組成と性質をもっている。
なお、ガラスを素材とする芸術についてはガラス工芸を、機能材料としての特殊なガラスについては、ニューガラスを参照。
| II. | 拡張されたガラスの概念 |
高温で融解している固体を冷却していくと、温度の低下にともなって連続して体積が減少していく。固体が結晶構造をとるときは、温度が凝固点に達したところで、温度がほとんどさがらずに、体積だけが急激に減少する。しかし、固体がガラスになる場合は、明確な凝固点がなく、ある温度までさげたときに、温度の低下にともなう体積の減少の割合が緩やかな傾斜に変化する。この温度をガラス転移点またはガラス転移温度といい、その温度近くで高粘性液体から固体へと変化する。
せまい範囲のガラスは、ケイ酸、ホウ酸、リン酸などを結晶化させずに冷却固化させたものをさしている。しかし、せまい範囲のガラスと分子構造が同じで、ガラス転移点が確認できる物質は、無機、有機の化合物やある種の金属、合金の材料を一定の条件で処理したときにもできる。これらの全体を、ガラスあるいはガラス物質というようになっている。
ガラス性結晶とよばれる物質は、明確な凝固点があるにもかかわらず、結晶を形成しないで、分子が乱雑なまま固体になる物質のことで、この場合は、ガラスを広い意味でつかっている。また、結晶化ガラス(セラミックガラスともいう)という材料もある。これは、シリカにアルミナや酸化リチウムをくわえた原料に、金、白金、酸化金属などの結晶化を促進する成分をドープ(→ ドーピング)して、ガラス転移温度の近くで条件を制御しながら結晶をつくるものである。ガラスの定義からすると矛盾しているが、せまい意味でのガラスで、本来はガラスになる成分をつかって結晶にしていることを表現している。
年代が特定できる最古のガラスは、アッカド王朝(前2340~前2150:→ シュメール)の遺跡から発掘された棒だが、正確に人類がいつごろからガラスを利用したかははっきりしない。ガラスは器と装飾品をつくるためにつかわれた。また、建築材料や工業用材料にもつかわれる。
| III. | 材料と技術 |
ガラスを構成する物質は、砂、フリント(火打ち石)、石英などを原料とするシリカである。
| 1. | 組成と特性 |
シリカを高温でとかすと、溶解したシリカガラス(石英ガラス)をつくることができる。このガラスは高い融点をもち、温度変化によってあまり伸縮しないので、実験室の器具のような、熱の影響をさけたいものには有効である。また、シリカガラスは熱や電気の伝導率が低いので、電気や熱の絶縁体としてつかわれる。
ふつうのガラスの製造では、シリカ以外の原材料をさまざまな比率で混合する。炭酸ナトリウムや炭酸カリウムなどのアルカリ性の混合物は、シリカの融点と粘度をひきさげる。石灰石(石灰岩)や白雲石(炭酸カルシウムや炭酸マグネシウム)は、安定剤としての役割をはたす。鉛は、レンズなどを製造するためにガラスの光学特性を改善し、ホウ素は耐熱性を高くする。
| 1.A. | 鉛ガラス |
クリスタルガラスといわれる高級な装飾工芸用のガラスは、一酸化鉛(→ 酸化鉛)をふくむカリウム・ケイ酸塩のガラスでできている。
鉛ガラスは、比重が重く、光をよく透過し、屈折率が高いので、レンズやプリズムなど光学ガラスに利用される。光沢があるので、宝石の模造品にもつかわれている。鉛に放射能を吸収する性質があるので、原子力施設で作業員を保護するための放射線遮断(しゃだん)ガラスにもつかわれている。かつては高級ウィスキーの容器などにつかわれたが、鉛が溶出して人体に害があるといわれ、最近はつかわれなくなっている。
| 1.B. | ホウケイ酸ガラス |
ホウケイ酸ガラスは、シリカ、アルカリとともに、主要成分として5~25%の酸化ホウ素(→ ホウ酸)をふくんでいる。酸化ホウ素を添加することで、ガラス生成温度が低下するため、耐水性や耐酸性が良好で、また熱膨張率も低下するため硬質で耐熱性にすぐれたガラスとなる。調理器具や実験室のガラス器具、化学製品の製造工程などに広くつかわれている。
| 1.C. | 色 |
原材料にふくまれる不純物がガラスの色に影響する。ガラスメーカーは、緑色や褐色に発色する鉄分の影響をおさえるために、マンガンをくわえる。ガラスの着色には、金属性の酸化物や硫化物、セレン化合物などをとかしこむか、微小な顔料を分散させる。たとえば、酸化鉄によりガラスは青緑色となり、セレンをくわえると赤色となる。
| 1.D. | さまざまな成分 |
典型的なガラスの成分として、ガラスの破片(カレット)が利用される。この破片は、混合物の溶解と均質化を促進する。ヒ素やアンチモンのような補助薬剤が、溶解中に小さな泡をおいだすために添加されることもある。
| 1.E. | 物性 |
ガラスは、成分によって、500°Cで溶解するものもあれば、1650°Cではじめて溶解するものもある。抗張力(引張強度)は、通常は1cm²当たり280~560kgだが、熱処理などで、1cm²当たり7000kg以上にすることができる。比重は2~8で、アルミニウムより軽いものから鉄より重いものまでさまざまである。光学的特性や電気的特性もさまざまである。
| 2. | 混合と溶解 |
慎重な準備と計量ののち原材料が混合され、完全に溶解させる前に最初の溶解がおこなわれる。以前は、木または石炭をもやす窯で、粘土の容器の中で溶解された。耐火粘土でつくられた容器は、0.5~1.5tのガラスをとかす能力があるが、今でも、手工芸用に少量のガラスが必要なときにはつかわれている。
現代のガラス工場では、1872年にはじめて導入された大型の溶解窯でとかされる。この溶解窯は1000t以上のガラスをとかす能力があり、ガスや石油、電気などで加熱する。
ガラスのバッチ(1窯分の塊)は、タンクの一方の口にある開口部(ドッグハウス)から連続的に投入され、溶融し精製されたガラスが他方の出口からだされる。溶解したガラスは、長いフォアハース(前段にある窯床)またはホールディング・チャンバー(保持室)の中で、作業をするのに適切な温度に調整され、ある程度かたまってから成形機におくられる。
| 3. | 成形 |
やわらかくなったガラスを加工するには、5つの基本的な方法が採用されている。すなわち、(1)鋳込み成形(キャスティング)、(2)吹き込み成形(ブロー)、(3)プレス加工、(4)引抜き(ドローイング)、(5)ローラー法である。
| 3.A. | 鋳込み成形 |
この製法は古代からあり、とかしたガラスを鋳型にながしこみ、冷却してかたくする方法である。現在では、容器などの製造に遠心鋳造法が開発され、溶融したガラスは遠心力で高速で回転する鋳型の側面におしつけられる。遠心鋳造法は、精密で軽量の製品をつくりだせるので、テレビのブラウン管をつくるのにもつかわれる。
| 3.B. | 吹き込み成形 |
溶融したガラスに空気をふきこんで成形する方法が、前1世紀半ばにフェニキアで発明され、この方法によるガラス製品を吹きガラスという。製法が単純で、手作業にしては量産できるのですぐに広まり、19世紀までガラス容器の基本製法だった。
吹きガラスは、ギャザとよばれる溶融したガラスを、長さ1mほどの鉄のパイプの先端につけ、金属の板の上をころがして、少しさましながら外形をつくる。
次に、再加熱しながら、空気をふきこんで風船のようにふくらませる。ガッファーとよばれるガラス吹きの職人は、空気の吹き込みと外形加工で形と厚みを調整する。できあがった製品をバブルまたはパリソンという。
形をととのえるには、ハサミやヤットコ、へらなどの簡単な道具がつかわれ、職人は、吹きパイプをささえるアームのついた、「ガラス職人の椅子(いす)」という特製の椅子にすわって作業をする。空気をふきこまれたガラスは、型で成形することもできる。部分を形づくる型はギャザに模様をつけ、そのあとで好みの大きさにふくらませるが、全体を形づくる型では、大きさ、外形および装飾が同時にきまる。
容器の取手や柄、脚、そのほかの装飾などをつくるには、別のギャザが加工され、後から接着される。
形ができたバブルは、溶融した色ガラスにつけて、装飾することもある。ガラスの内にガラスをうめこむには、ギャザをことなった色がある数枚のガラスを重ねた上においてとかす。
仕上げ作業として光沢をもたせるため、ギャザをパイプの反対側にあるポンティルという鉄の竿(さお)にうつし、窯の入り口で火にかざして表面をとかす。
| 3.C. | プレス加工 |
古代の鋳造では、ガラスが型に密着するように、いくらか圧力がかけられた。イスラムの職人たちは、ガラスに重さと模様をつけるのに手で圧力をかけたが、ヨーロッパの製造者たちは、18世紀末にこの技法を再発見し、デカンターの栓やワイングラスのように、脚のついた食器の底部をつくるのにつかった。
1820年代に、アメリカで完全に機械化されたプレス加工の特許がとられた。この工程では、ガラスのギャザが1つの型にながされ、プランジャーという押し棒が、型の壁にとけているガラスをおしつけ、形をつくる。製作物に装飾的なデザインをほどこすために、型とプランジャーの両方に模様がほられている。
| 3.D. | 引抜き |
均一な断面をもたなければならないガラス製のチューブや板、繊維、棒などをつくるために、とかしたガラスを窯から直接ひきだす。ガラス管は、筒の中に半流動体のガラスの塊をいれ、ジェット気流を中心にふきこみながら、ひきだしてつくる。
| 3.E. | ローラー法 |
板ガラスなどは、元来、溶融したガラスを平らにながし、表面を研磨する前にローラーで平らにしていた。時代がすすむと、2つのローラーの間に、溶解しているガラスをおくりこんで、連続的につくられるようになった。
| 4. | ガスバーナー加工 |
ガスバーナー加工は、事前に成形され、ゆっくり冷却されたガラスをつくりなおすときにつかう技法である。一般に、科学の実験器具や装飾的なおもちゃ、置物などをつくる。棒や筒の形をしたガラスは、ガスの炎で再加熱し、手または機械で成形される。
| 5. | 徐冷 |
成形されたのち、冷却にともなう内部のひずみをのぞくため、ガラス製品は焼なましをする。つまり、再加熱炉の中で高温で熱し、新たなひずみが生じないように、ゆっくりと冷却する。ガラス製品に強度をあたえるために、ひずみを意図的にくわえることもある。
ガラスは、微小な表面の傷による内部応力が原因で破壊がすすむので、ガラスの表面を圧縮すると強度が増加する。ガラスがやわらかくなるまで熱し、空気をふきつけるか水槽につけて急冷すると、ガラスの表面は急速に硬化し、内部はゆっくりひえるので、表面が圧縮される。表面の圧縮応力は、厚いものでは、この方法によって1cm²当たり2460kgにすることもできる。
化学的強化法では、イオン交換でガラスの表面の組成または構造を変化させ、表面を圧縮する。化学的強化法によって、1cm²当たり7000kg以上の強度になる。
| 6. | 装飾加工 |
カットグラスをつくるためのカッティングでは、切子面や溝、くぼみなどが、回転砥石(といし)、研磨材を混合した水流などで、ガラスの表面にほられる。手順は、まず印をつけて粗削りをやり、滑らかにし、最後に磨きをかける。
模様は、ダイヤモンドの先か金属の針をつかい、ふつうは銅でできたろくろの上でほる。
エッチングは、フッ化水素などでガラスをとかす。その結果、あらい表面仕上げやつや消しができる。
サンドブラスティング(砂粒の吹付け)は、砂や細かなフリント、粉末にした鉄などを高速でガラスの表面にふきつけ、模様をつけたり、つや消しをほどこす。
コールド・ペインティングは、常温で漆や油性の塗料をガラスにぬる。
エナメル・ペインティングは、エナメルをぬり、低温の火にかけて塗料を焼きつける。
貴金属での装飾は、金や銀の箔(はく)や粉をふくむ塗料や、金属粉末そのものをガラスの容器に密着させる。しかし、耐久性をもたせるには、低温の焼入れをおこなってガラスと貴金属をしっかりと密着させる。
| IV. | 日本のガラス |
日本では、ガラスの使用は弥生時代(→ 弥生文化)にはじまると考えられている。
| 1. | 古代のガラス |
福岡県春日市須玖岡本(→ 須玖遺跡群)と飯塚市立岩の甕棺(かめかん)遺跡からは、中国の春秋戦国時代の璧(へき)などと同じ組成の鉛ガラスでできた、ガラス管玉が出土している。また春日市の遺跡からは、同じ鉛ガラスの勾玉と、それを鋳造した砂岩製の鋳型が発見されている。これは中国から伝来したガラスを素材として、勾玉を製造したことをしめしている。しかし管玉が中国からの輸入によるものか、国内で製造されたのかは明確でない。
古墳時代(→ 大和政権)の遺跡からは多彩なガラス玉が発掘され、4~5世紀には青緑色や紺色、6世紀には黄色や赤色のアルカリ石灰ガラスが、さらに7世紀には緑色をした鉛ガラスが出土しており、これはすべて大陸からの渡来品と考えられる。
| 2. | 仏具とガラス |
奈良時代には、仏教の普及とともに、仏像の装飾具、骨壺(こつつぼ)、舎利容器などにガラス製品がつかわれたが、それらが日本でつくられたという確証はない。また正倉院には、ガラス容器や玉石製品が多く所蔵されている。なかでも有名なカットグラス(白瑠璃碗(はくるりのわん)や白瑠璃瓶、紺瑠璃杯)は、少量の鉛ガラス製があるものの、そのほとんどがアルカリ石灰ガラス製であり、中東や中国からのものと考えられる。
| 3. | 国産ガラスの最初 |
正倉院宝物のガラスは、鉛の含有量が造仏所作物帳の処方で計算される値に近いことから、日本産の鉛からつくられたものだといわれている。大陸との交流が頻繁だった奈良時代には、輸入ガラスが日本にもはいり、国内産ガラスも多数つくられたが、平安時代に遣唐使が廃止されて、陶器、磁器の発展と対照的に衰退にむかう。
室町末期から安土桃山時代のヨーロッパとの交流によって、日本のガラス文化は再興の兆しをみせる。江戸時代には、オランダとの交易によってガラス製品が中国経由で長崎にもたらされ、ギヤマン、ビードロなどとよばれて珍重された。同時期に、ガラス技法も長崎を通じて伝播(でんぱ)し、大坂、江戸をはじめ各地で各種の器、装身具などが製造された。とくに薩摩(現、鹿児島県)では、ガラス製造を藩営事業として、薩摩切子など近代ガラスの先駆的な工芸品をのこしている。→ガラス工芸の「江戸時代」
明治維新後には、日常生活の欧風化とともにガラス製品が広く普及するようになり、ガラス工芸技術も発展した。1873年(明治6)、イギリス人技術者をまねいて東京の品川に設立されたガラス工場(のちの品川硝子(ガラス)製作所)は、77年に操業を開始した。その後、同工場で技術をまなんだ人々によって、日本の近代ガラス工業の基礎がきずかれたのである。
| 4. | 近代日本のガラス工業 |
1906年、ヨーロッパの資本と技術を導入して、東洋硝子製造株式会社が設立され、日本で最初の純西洋式のガラス工場が誕生し、機械で瓶の製造をこころみたものの失敗におわった。また07年に設立された旭硝子株式会社は、日本で最初の板ガラス製造に成功しているが、これは東洋硝子の外国人技術者や職工の協力によるところが大きい。
当時の板ガラスは、ガラスをパイプで円筒状にふきこみ、これを縦に切断して、加熱・展延する円筒法(バルブ法)によって製造していたが、1913年(大正2)に旭硝子は、アメリカから機械式のガラス円筒(バルブ)吹揚機を導入し、生産の効率化に成功した。16年には、ビール需要の増大にそなえるため、大日本麦酒株式会社がアメリカから全自動製瓶機を導入し、ビール瓶の大量生産にのりだす。それ以前、東京電気株式会社(東芝の前身)は06年に半自動式のガラス円バルブ吹揚機を、さらに29年(昭和4)には全自動ガラス円バルブ吹揚機を採用し、電球や真空管用のガラス製造を本格化した。ちなみに、33~34年ごろには、日本の板ガラス生産はベルギー、アメリカについで、世界第3位となった。
| 4.A. | 第2次世界大戦後のガラス工業 |
第2次世界大戦中はガラス生産は停滞し、終戦時までには生産設備の大半をうしなったが、戦後復興の中で、建設用ガラスを中心にその生産は増大し、1951年には戦前の最高生産量をこえた。55年以降の高度経済成長期には、建設業と自動車工業による安全ガラスの需要が増加し、板ガラスも急増した。それまでの板引法であるコルバーン法、フルコール法、ローラー法などにくわえ、加熱軟化状態で磨き板ガラスのように平滑な板ガラスができるフロート法がイギリスから導入され、65年に日本板硝子株式会社が、また翌年には旭硝子が生産を開始している。
一方、1950年代にプラスチック強化材料として用途が開かれたガラス繊維は、冷蔵庫の断熱材、空調用、建築用の保温材、吸音材として生産が増大し、建築では全需要の70%以上を占めたこともある。最近では、自動車用安全ガラスや照明用シールドビーム・ガラス、ブラウン管用ガラスなどのほか、さまざまな機能性特殊ガラスなど、その製品の種類はきわめて多岐にわたっている。またコンピューターなどのCRTでの需要が急増し、液晶や太陽電池などに利用される薄板や超薄板ガラスなどの技術的進展もいちじるしい。
| V. | ガラス製品の種類 |
材料を広範囲にわたってつかいこなすことによって、多くのことなった種類のガラスが発展してきた。
| 1. | 窓ガラス |
紀元1世紀以降つかわれている窓ガラスは、キャスティングか手吹き円筒法でつくられた。クラウン製法はのちの技術であるが、パイプに高温のガラスをつけてふき、ひらべったい円盤形のグローブ(ガラス球)またはクラウン(王冠)に成形した。ポンテ竿というものを吹き竿の反対側の平坦なほうにとりつけ、吹き竿をガラスからはずす。ポンテ竿の先で再加熱したクラウンをまわすと、吹き竿でのこされた穴が広がり、遠心力によって、平らで大きな円板に広がる。ポンテ竿をガラスの円板からはなすと、中央にポンテ竿の跡が「こぶ」のような形でのこり、これをブルズ・アイ(牛の目)ともよぶ。
今日では、ほとんどすべての窓ガラスは、溶解したガラスから垂直にガラスをひきあげてつくられる。フルコール法では、溶解したガラスの槽に耐熱性の細長い溝のあるブロックをしずめ、これをとおしてひきあげ、垂直な徐冷窯の中にひきこみ、そこからとりだした半製品を板ガラスに切断する。
| 2. | 板ガラス |
板ガラスは、製造工程の特質上、厚みが均一というわけにはいかない。厚みが均一でないガラスをとおすと、画像はゆがんでみえる。そのような欠陥を克服する伝統的な方法は、板ガラスの表と裏を研磨することであった。
板ガラスは、1668年にフランスのゴバインではじめて製造されたが、これはガラスを鉄板の上にそそぎ、ローラーで平らにのばす方法で、徐冷してから表と裏を研磨した。今日では、板ガラスは、フォアハース(前炉床)の出口にある2つ1組のローラーの間で、連続的に圧延してつくられる。ひずみのある板が徐冷されると、板の両面が連続的に仕上げ加工される。
今日では、フロート法が研磨法にかわろうとしている。このフロート法は、溶解したスズの上に連続的に板ガラスをながして、同時に両面を平滑にする。スズはガラスよりも比重が大きいので、ちょうど水と油のようにガラスとスズとが分離し、地球の重力でガラスとスズの境界が平面になる。ガラスがスズの槽にそって移動する間に温度がゆっくりさげられ、最後に長い徐冷窯の中を通過する。
研磨されていないガラスは、しばしば、ロールにきざまれたデザインによって表面に模様がつけられ、建築用につかわれる。ワイヤー・ガラスは、ガラスがローラーを通過する前に、溶解したガラスの中に網目のワイヤーをいれるが、ガラスが衝撃をうけた場合に破壊して飛散するのを防止する。自動車のフロント・ガラスにつかわれる安全ガラスは、透明な合成樹脂の板を、うすい板ガラスと板ガラスの間にはさんで成形する。プラスチックがガラスにしっかりと密着しているので、衝撃をうけてもこわれた破片はとびちらないで、そのままのこっている。
| 3. | 瓶や容器 |
飲料容器や化粧品の瓶、そのほかのガラス容器は、プレッシングとブローイングをあわせた自動工程でつくられる。プレッシングは、容器の開口部をつくるための工程で、ブローイングは、容器の本体を中空にするための工程である。典型的な自動ボトル・ブローイング機械は、溶解したガラスを上下が反対になった型の中にながしこみ、下から首の部分をとおして空気をふきあげて、部分的に瓶をつくる。パリソンとよばれる半分だけ成形された瓶は、首の部分をおさえて反転させ、2番目の仕上げ型におろされる。そこで、また空気をふきつけ、最終的な形にととのえられる。広口容器のためにつかう機械では、パリソンは、型の中で空気をふきこむ前に、プランジャーという棒で型の中におしこむだけである。化粧品につかわれる底の浅い瓶はプレスされるだけである。
| 4. | 光学ガラス |
メガネや顕微鏡、望遠鏡、カメラ、そのほかの光学機器につかわれるレンズは、そのほとんどが光学ガラスからつくられる(→ レンズ:光学)。光学ガラスは、光の屈折率と透過度が、ほかのガラスとはことなる。光学ガラスの製造は、慎重さと正確さを要する作業である。製造工程で欠陥が発生しないように、原材料は高品質でなければならず、作業はきわめて精密におこなう必要がある。小さな気泡や不純物がはいると、レンズの表面にひずみを生じる。ガラスの成分が不均一に分散しても、内部応力ができ大きなひずみを生じるし、不適切な徐冷によっておきるガラスの変形は、光学的な品質をさらにそこなう。
光学ガラスは、元来はポットの中で長時間とかされ、その間、耐火棒でたえずかきまわされた。長時間の徐冷のあと、わって断片にし、断片の中から良質のものを選択して再度加熱し、希望する形にプレス加工してから研磨した。最近では、プラチナを裏張りしたタンクの中で、連続的にガラスを生産する方法が採用されている。この製法によって、これまでのガラスよりもずっと安価で品質のすぐれた光学ガラスを大量に製造できるようになった。
簡単なレンズには、プラスチックがつかわれている。プラスチック・レンズは、ガラスほど耐久性はなく、傷がつきやすくて光学的な精度をだしにくいが、強くて軽く、着色も容易なので、サングラスなどには多くつかわれる。最近需要の多い使い捨てのカメラ(レンズつきフィルム)には、プレスによるプラスチック・レンズがつかわれている。
| 5. | 感光ガラス |
感光ガラスは、材料の中にある金または銀イオンが光に反応するもので、写真フィルムと似ている。このガラスは、印刷と複写の工程や集積回路の製造で、パターンを焼付けするときのマスクという原版にもつかわれる。露光した後、熱や化学薬品で処理すると、光の像が固定される。
| 6. | ガラス・セラミックス |
ある種の金属をふくんだガラスは、紫外線にさらされると部分的に結晶になる。このガラスは、高温で加熱すると、一般のガラスよりも機械的に強く、電気抵抗の高い、結晶構造のセラミックになる。そのようなセラミックは、現在、調理器やロケットのノーズコーン(円錐(えんすい)状の頭部)、スペースシャトルの耐熱タイルにつかわれている。純粋な合金をふくむメタル・ガラスは、磁化することもできるが、強くて柔軟性があり、高性能の変圧器にひじょうに有効である。
コンピューターの記憶装置では、サブストレートというきわめて平面度の高い硬質ガラスの上に磁性体を精密に蒸着したものもつかわれる。
| VI. | ガラス繊維 |
ケイ酸塩をおもな成分とするガラスを溶解して、細い糸にしたものをガラス繊維という。このガラス繊維は、製法と用途によって断熱用と織物用の2つに大別され、狭義には、ふつう短繊維でつくる断熱用をグラスウール、長繊維の織物用をグラスファイバーとよぶ。このほかにも、画像伝送用の光学繊維、通信用の光ファイバーなどがある。
工業的にガラスを繊維にすることは、第1次世界大戦中に、ドイツで天然石綿の代用品として高温断熱用の短繊維がつくられたのが最初である。一方、長繊維は1930年代に、光学用は60年代に、ともにアメリカで工業化された。現在のガラス繊維の一般的な製造方法は、次のようになる。
まず、ガラスを白金または耐熱性の再溶融炉(ポット)の中にいれて加熱する。このポットの底には多数のノズル(小穴)があり、溶解したガラスがノズルから糸になってでてくる。これをひっぱって高速回転のドラムにまきとり、直径4~80µm(マイクロメートル:100万分の1m)程度のガラス繊維にする。
| 1. | 短繊維 |
短繊維は製造も容易で、単糸の直径が平均4µm以下(ウール1号)、8µm以下(ウール2号)、20µm以下(ウール3号)のガラス繊維を、それぞれ有機質バインダーによってフェルト状、ボード状、パイプ状などに成形する。短繊維の特徴としては、断熱性が高く、吸音性、不燃性、耐腐食性にすぐれ、軽量かつ施工が容易で無毒という特質がある。一方、細かなガラス繊維を吸入すると肺に障害を生じることがあるので、とりあつかうときは防塵(ぼうじん)マスクをつかうことがのぞましい。省エネルギー、快適性、安全性などの面から、その用途は着実に広がっている。
おもな用途としては、断熱(保温、保冷)材や吸音材として、大量にもちいられるほか、空気や液体のフィルター、高温用ガスケット、電池の電極保持体(耐酸性のCガラス)、放射性物質の処理装置などにもつかわれる。
| 2. | 長繊維 |
長繊維は、そのほとんどがEガラスとよばれる無アルカリ・ガラスで、電気絶縁性と耐腐食性にすぐれ、高い引張強度(150~300kg/mm²)をもつ。耐腐食性、不燃性などの化学的特性があり、そろえて織物にし、生産量の80%以上が、熱硬化性または熱可塑性の合成樹脂とともに繊維強化プラスチック(FRP)として利用される。→ 複合材料
特殊紙やゴム(タイヤや自動車などのタイミングベルトなど)の補強材、絶縁材、プラスチック系砥石の補強材、プリント基板の補強としてもちいられ、また長繊維を織物にした布やテープは、防火カーテン、防火服、防火壁紙、防虫網、高温集塵用フィルターや濾紙(ろし)、電線の保護被膜などにもちいられる。また長繊維を利用したFRPは、軽くて高強度のため、自動車、航空機、船舶、各種パイプや容器、スキー、釣り竿にいたるまで、その用途はきわめて広い。最近では、繊維にメタルコーティングしたものが、電磁波遮蔽(しゃへい)用のシール材としてつかわれている。
| 3. | 光学繊維(光ファイバー) |
1950年代に光ファイバー(オプティカル・ファイバー)が開発されたが、これは科学、医学、産業に広い用途がある。屈折率の高いグラスファイバーをたがいに平行にならべ、屈折率の低いガラスのうすい層で分離すると、屈折率の高いグラスファイバーは光学的にレンズの役割をはたす。そのようなグラスファイバーの束をくみこんだファイバー・スコープは、どんなにまがっていても映像をおくることができるので、接近できない場所の検査もできるようになった。日本では内視鏡(→ 内視鏡診断)という名称でよばれ、医学の診断用として発達してきた。胃などの消化管や関節、気管支など、検査する部位にあわせたものが多数開発され、画期的な成果をあげてきた。
医学用のほかには、生き埋めになった場合の救助につかうものや、原子力発電所の検査用、特殊なものでは古代遺跡などの調査でつかうものまである。そのほか拡大鏡や縮小鏡、陰極線管のフェースプレートのような光ファイバーの付属品も、検査の向上に役だっている。レーザーとむすびつけて、電気通信システムの発達にも重要である。
| 4. | グラス・ブリック |
グラス・ブリックは、側面にかみ合わせをつけたり模様をつけたりした中空の建築用ブロックで、モルタルの中にくみこんだり、外壁や室内の間仕切りなどにつかわれる。
| 5. | 発泡ガラス |
発泡ガラスは、浮きや断熱材としてつかわれ、粉末状にしたガラスに発泡剤を添加し、加熱する際に発生するガスを、ガラスの中に無数の小さな気泡として閉じこめる。深海潜水艇で、浮力を調整するために大量に発泡ガラスがつかわれる。
| 6. | ダブル・グレージング・セル |
ダブル・グレージング・セルは、2枚の板ガラスを両端で密封して中間に空気の層をつくった製品である。窓ガラスとしてすぐれた断熱効果を発揮し、冬でも曇りがでない。