| ガラス | 項目ビュー | ||||
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| III. | 材料と技術 |
ガラスを構成する物質は、砂、フリント(火打ち石)、石英などを原料とするシリカである。
| 1. | 組成と特性 |
シリカを高温でとかすと、溶解したシリカガラス(石英ガラス)をつくることができる。このガラスは高い融点をもち、温度変化によってあまり伸縮しないので、実験室の器具のような、熱の影響をさけたいものには有効である。また、シリカガラスは熱や電気の伝導率が低いので、電気や熱の絶縁体としてつかわれる。
ふつうのガラスの製造では、シリカ以外の原材料をさまざまな比率で混合する。炭酸ナトリウムや炭酸カリウムなどのアルカリ性の混合物は、シリカの融点と粘度をひきさげる。石灰石(石灰岩)や白雲石(炭酸カルシウムや炭酸マグネシウム)は、安定剤としての役割をはたす。鉛は、レンズなどを製造するためにガラスの光学特性を改善し、ホウ素は耐熱性を高くする。
| 1.A. | 鉛ガラス |
クリスタルガラスといわれる高級な装飾工芸用のガラスは、一酸化鉛(→ 酸化鉛)をふくむカリウム・ケイ酸塩のガラスでできている。
鉛ガラスは、比重が重く、光をよく透過し、屈折率が高いので、レンズやプリズムなど光学ガラスに利用される。光沢があるので、宝石の模造品にもつかわれている。鉛に放射能を吸収する性質があるので、原子力施設で作業員を保護するための放射線遮断(しゃだん)ガラスにもつかわれている。かつては高級ウィスキーの容器などにつかわれたが、鉛が溶出して人体に害があるといわれ、最近はつかわれなくなっている。
| 1.B. | ホウケイ酸ガラス |
ホウケイ酸ガラスは、シリカ、アルカリとともに、主要成分として5~25%の酸化ホウ素(→ ホウ酸)をふくんでいる。酸化ホウ素を添加することで、ガラス生成温度が低下するため、耐水性や耐酸性が良好で、また熱膨張率も低下するため硬質で耐熱性にすぐれたガラスとなる。調理器具や実験室のガラス器具、化学製品の製造工程などに広くつかわれている。
| 1.C. | 色 |
原材料にふくまれる不純物がガラスの色に影響する。ガラスメーカーは、緑色や褐色に発色する鉄分の影響をおさえるために、マンガンをくわえる。ガラスの着色には、金属性の酸化物や硫化物、セレン化合物などをとかしこむか、微小な顔料を分散させる。たとえば、酸化鉄によりガラスは青緑色となり、セレンをくわえると赤色となる。
| 1.D. | さまざまな成分 |
典型的なガラスの成分として、ガラスの破片(カレット)が利用される。この破片は、混合物の溶解と均質化を促進する。ヒ素やアンチモンのような補助薬剤が、溶解中に小さな泡をおいだすために添加されることもある。
| 1.E. | 物性 |
ガラスは、成分によって、500°Cで溶解するものもあれば、1650°Cではじめて溶解するものもある。抗張力(引張強度)は、通常は1cm²当たり280~560kgだが、熱処理などで、1cm²当たり7000kg以上にすることができる。比重は2~8で、アルミニウムより軽いものから鉄より重いものまでさまざまである。光学的特性や電気的特性もさまざまである。
| 2. | 混合と溶解 |
慎重な準備と計量ののち原材料が混合され、完全に溶解させる前に最初の溶解がおこなわれる。以前は、木または石炭をもやす窯で、粘土の容器の中で溶解された。耐火粘土でつくられた容器は、0.5~1.5tのガラスをとかす能力があるが、今でも、手工芸用に少量のガラスが必要なときにはつかわれている。
現代のガラス工場では、1872年にはじめて導入された大型の溶解窯でとかされる。この溶解窯は1000t以上のガラスをとかす能力があり、ガスや石油、電気などで加熱する。
ガラスのバッチ(1窯分の塊)は、タンクの一方の口にある開口部(ドッグハウス)から連続的に投入され、溶融し精製されたガラスが他方の出口からだされる。溶解したガラスは、長いフォアハース(前段にある窯床)またはホールディング・チャンバー(保持室)の中で、作業をするのに適切な温度に調整され、ある程度かたまってから成形機におくられる。
| 3. | 成形 |
やわらかくなったガラスを加工するには、5つの基本的な方法が採用されている。すなわち、(1)鋳込み成形(キャスティング)、(2)吹き込み成形(ブロー)、(3)プレス加工、(4)引抜き(ドローイング)、(5)ローラー法である。
| 3.A. | 鋳込み成形 |
この製法は古代からあり、とかしたガラスを鋳型にながしこみ、冷却してかたくする方法である。現在では、容器などの製造に遠心鋳造法が開発され、溶融したガラスは遠心力で高速で回転する鋳型の側面におしつけられる。遠心鋳造法は、精密で軽量の製品をつくりだせるので、テレビのブラウン管をつくるのにもつかわれる。
| 3.B. | 吹き込み成形 |
溶融したガラスに空気をふきこんで成形する方法が、前1世紀半ばにフェニキアで発明され、この方法によるガラス製品を吹きガラスという。製法が単純で、手作業にしては量産できるのですぐに広まり、19世紀までガラス容器の基本製法だった。
吹きガラスは、ギャザとよばれる溶融したガラスを、長さ1mほどの鉄のパイプの先端につけ、金属の板の上をころがして、少しさましながら外形をつくる。
次に、再加熱しながら、空気をふきこんで風船のようにふくらませる。ガッファーとよばれるガラス吹きの職人は、空気の吹き込みと外形加工で形と厚みを調整する。できあがった製品をバブルまたはパリソンという。
形をととのえるには、ハサミやヤットコ、へらなどの簡単な道具がつかわれ、職人は、吹きパイプをささえるアームのついた、「ガラス職人の椅子(いす)」という特製の椅子にすわって作業をする。空気をふきこまれたガラスは、型で成形することもできる。部分を形づくる型はギャザに模様をつけ、そのあとで好みの大きさにふくらませるが、全体を形づくる型では、大きさ、外形および装飾が同時にきまる。
容器の取手や柄、脚、そのほかの装飾などをつくるには、別のギャザが加工され、後から接着される。
形ができたバブルは、溶融した色ガラスにつけて、装飾することもある。ガラスの内にガラスをうめこむには、ギャザをことなった色がある数枚のガラスを重ねた上においてとかす。
仕上げ作業として光沢をもたせるため、ギャザをパイプの反対側にあるポンティルという鉄の竿(さお)にうつし、窯の入り口で火にかざして表面をとかす。
| 3.C. | プレス加工 |
古代の鋳造では、ガラスが型に密着するように、いくらか圧力がかけられた。イスラムの職人たちは、ガラスに重さと模様をつけるのに手で圧力をかけたが、ヨーロッパの製造者たちは、18世紀末にこの技法を再発見し、デカンターの栓やワイングラスのように、脚のついた食器の底部をつくるのにつかった。
1820年代に、アメリカで完全に機械化されたプレス加工の特許がとられた。この工程では、ガラスのギャザが1つの型にながされ、プランジャーという押し棒が、型の壁にとけているガラスをおしつけ、形をつくる。製作物に装飾的なデザインをほどこすために、型とプランジャーの両方に模様がほられている。
| 3.D. | 引抜き |
均一な断面をもたなければならないガラス製のチューブや板、繊維、棒などをつくるために、とかしたガラスを窯から直接ひきだす。ガラス管は、筒の中に半流動体のガラスの塊をいれ、ジェット気流を中心にふきこみながら、ひきだしてつくる。
| 3.E. | ローラー法 |
板ガラスなどは、元来、溶融したガラスを平らにながし、表面を研磨する前にローラーで平らにしていた。時代がすすむと、2つのローラーの間に、溶解しているガラスをおくりこんで、連続的につくられるようになった。
| 4. | ガスバーナー加工 |
ガスバーナー加工は、事前に成形され、ゆっくり冷却されたガラスをつくりなおすときにつかう技法である。一般に、科学の実験器具や装飾的なおもちゃ、置物などをつくる。棒や筒の形をしたガラスは、ガスの炎で再加熱し、手または機械で成形される。
| 5. | 徐冷 |
成形されたのち、冷却にともなう内部のひずみをのぞくため、ガラス製品は焼なましをする。つまり、再加熱炉の中で高温で熱し、新たなひずみが生じないように、ゆっくりと冷却する。ガラス製品に強度をあたえるために、ひずみを意図的にくわえることもある。
ガラスは、微小な表面の傷による内部応力が原因で破壊がすすむので、ガラスの表面を圧縮すると強度が増加する。ガラスがやわらかくなるまで熱し、空気をふきつけるか水槽につけて急冷すると、ガラスの表面は急速に硬化し、内部はゆっくりひえるので、表面が圧縮される。表面の圧縮応力は、厚いものでは、この方法によって1cm²当たり2460kgにすることもできる。
化学的強化法では、イオン交換でガラスの表面の組成または構造を変化させ、表面を圧縮する。化学的強化法によって、1cm²当たり7000kg以上の強度になる。
| 6. | 装飾加工 |
カットグラスをつくるためのカッティングでは、切子面や溝、くぼみなどが、回転砥石(といし)、研磨材を混合した水流などで、ガラスの表面にほられる。手順は、まず印をつけて粗削りをやり、滑らかにし、最後に磨きをかける。
模様は、ダイヤモンドの先か金属の針をつかい、ふつうは銅でできたろくろの上でほる。
エッチングは、フッ化水素などでガラスをとかす。その結果、あらい表面仕上げやつや消しができる。
サンドブラスティング(砂粒の吹付け)は、砂や細かなフリント、粉末にした鉄などを高速でガラスの表面にふきつけ、模様をつけたり、つや消しをほどこす。
コールド・ペインティングは、常温で漆や油性の塗料をガラスにぬる。
エナメル・ペインティングは、エナメルをぬり、低温の火にかけて塗料を焼きつける。
貴金属での装飾は、金や銀の箔(はく)や粉をふくむ塗料や、金属粉末そのものをガラスの容器に密着させる。しかし、耐久性をもたせるには、低温の焼入れをおこなってガラスと貴金属をしっかりと密着させる。